ノンメタルクラスプデンチャーのメリット・デメリットを教えて! 従来の入れ歯と比べてどうなの?
歯が欠損した場合、治療選択肢の1つが入れ歯です。しかし、「口を開けると金具が目立つ」といった審美面での理由から、入れ歯を作ることに消極的な人もいるのではないでしょうか。もし、見た目が気にならない入れ歯があるのなら、検討の余地はあるはずです。「北谷デンタルクリニック」の北谷先生に詳しい話を聞いてきました。
監修医師:
北谷 修一(北谷デンタルクリニック 院長)
日本歯科大学生命歯学部卒業。日本歯科大学附属病院歯周病学講座を経た1998年、埼玉県志木市に「北谷デンタルクリニック」を開院。「気軽にかかれる身近な歯医者」をコンセプトに治療を提供している。少数のスタッフで構成されるアットホームな歯科医院を目指している。
「ノンメタルクラスプデンチャー」とは?
編集部
入れ歯を検討していますが、金具が目立ちそうで踏みとどまっています。
北谷先生
そんな人におすすめしたいのが、「ノンメタルクラスプデンチャー(ノンクラスプデンチャー)」です。ノンメタルクラスプデンチャーとは、簡単にいえば部分入れ歯の1つです。通常の入れ歯は、自分の歯の代わりとなる人工歯と歯ぐきに似た色の床、これらを残っている歯に固定するためのクラスプと呼ばれる留め具で構成されています。
編集部
クラスプがないのに、どうやって口の中で固定されるのですか?
北谷先生
クラスプの代わりに、歯ぐきの色に似た樹脂を使って、外れないようにしています。具体的にいうと、義歯床の範囲を広げて、歯ぐきを覆って歯を押さえることで、維持させるのです。そのため、クラスプを使用する入れ歯に比べて、入れ歯が外れたり、ズレたりすることが少なくなるという特徴があります。
編集部
ノンメタルクラスプデンチャーは、どのような人に適しているのでしょうか?
北谷先生
特におすすめしたいのが、初めて入れ歯を作ろうとしている人です。従来の入れ歯だと金属のクラスプがついているため、装着感やフィット感が今ひとつという欠点がありました。その点、ノンメタルクラスプデンチャーならフィットするので、従来の入れ歯より慣れやすくなっています。
編集部
ほかにもありますか?
北谷先生
「笑ったり口を開けたりしたときに金属の金具が見えて気になる」いう人にもノンメタルクラスプデンチャーは適しています。
編集部
実際、ノンメタルクラスプデンチャーを選ぶ人は増えているのですか?
北谷先生
当院では、年々増えています。通常、歯を欠損した場合の治療選択肢として、「インプラント・ブリッジ・入れ歯」 があります。しかし、インプラントだと比較的大がかりな手術が必要になりますし、費用も高額になってしまいます。また、ブリッジの場合、健康な歯を削らなければならないというデメリットがあります。その点、入れ歯ならそうした心配が不要です。そのため、欠損した歯の治療法で入れ歯を選択する人も多く、なかでもフィット感や審美面を考慮して、ノンメタルクラスプデンチャーを選ぶ人が増えているように思います。
快適なフィット感は、入れ歯をつけていることを忘れるほど
編集部
やはり、審美面が主なメリットになるのでしょうか?
北谷先生
自然な美しさに加えて、快適なつけ心地が叶うという点もメリットです。ノンメタルクラスプデンチャーは、弾性の高い樹脂を使用しており、一般的な部分入れ歯よりも薄くて軽い仕上がりなのが特徴です。そのため、従来の入れ歯に比べて、つけ心地の違和感が軽減され、フィット感や装着感が向上します。
編集部
ほかにもメリットはありますか?
北谷先生
従来の入れ歯だと、金属の金具で固定できるのは1カ所だけです。他方、ノンメタルクラスプデンチャーなら、歯ぐきを広範囲に覆って歯を押さえることが可能です。そのため、外れにくく、安定しているのもメリットと言えるでしょう。
編集部
奥歯や前歯など、どの歯にも使用できるのですか?
北谷先生
奥歯でも前歯でも、1本単位で対応可能です。なお、ほとんどの症例に対応が可能ですが、残っている歯が少ない場合や噛み合わせの問題で難しい場合など、適応外となるケースもあります。治療を考える場合は、事前に歯科医師と相談しましょう。
編集部
反対に、デメリットはありますか?
北谷先生
素材自体の寿命が短いため、ずっと使い続けていると色が褪せてきてしまいます。そのため、一般的には4~5年程度で作り直す必要があります。さらに、樹脂の部分が磨り減ることで、だんだん入れ歯が緩くなってくることもデメリットと言えるでしょう。ただし、どちらかというと機能面よりも審美面の劣化で作り変える人が多い傾向にあります。
ノンメタルクラスプデンチャーの注意点
編集部
ノンメタルクラスプデンチャーは、どのような流れで製作されるのでしょうか?
北谷先生
まずは、ご本人にぴったり合った入れ歯を作るために、専用トレーで「型取り」をおこないます。その後、素材を選択します。ノンメタルクラスプデンチャーの素材には様々な種類があるため、それぞれの特徴や費用をご説明して、納得していただいたうえで作りはじめます。
編集部
製作には、どれくらいの期間を要するのでしょうか?
北谷先生
当院の場合、治療を始めてから終わるまで、余裕をもたせて10日〜2カ月、治療回数は2〜6回程度です。
編集部
保険は適用になるのですか?
北谷先生
残念ながら、ノンメタルクラスプデンチャーに保険は適用されません。そのため、従来の入れ歯よりも高額になってしまいます。参考までに当院の場合は、16万5000~27万5000円ほど費用がかかります。ただし、歯の状況や入れ歯の大きさによって金額が変わります。
編集部
メインテナンスは必要ですか?
北谷先生
もちろんです。義歯は天然歯に比べて汚れやすく、掃除しないと食べカスがたまり、細菌が繁殖しやすくなります。また、誤嚥性肺炎のリスクも高まると考えられています。長持ちさせるためにも、日々のメインテナンスが重要です。
編集部
具体的には、どのようにメインテナンスすればいいのでしょうか?
北谷先生
まずは軽く水洗いをして、専用のブラシを使用して義歯全体をブラッシングしましょう。その後、洗浄液に浸します。また、良好な状態で使用していても、月日が経つとどうしても劣化が進みます。不具合を早期発見するためにも、定期的な検診を受けることを推奨します。
編集部
就寝中は取り外した方がいいですか?
北谷先生
そうですね。入れ歯は構造上、どうしても汚れがたまりやすいため、装着したまま就寝すると細菌が増殖しやすくなり、歯ぐきが腫れる原因になってしまいます。就寝中は基本的に入れ歯を外して洗浄し、変形しないように水中で保管するようにしましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
北谷先生
ノンメタルクラスプデンチャーを使用している患者さんの多くが、「気兼ねなく笑えるのが嬉しい」とおっしゃっています。従来の入れ歯だと、どうしても金具が見えるのが気になって口を隠すようにして話したり、笑ったりしていた人も少なくありません。また、落としても壊れにくい素材ですから、入れ歯が初めてでも取り扱いが比較的簡単です。入れ歯を作る際、選択肢の1つに入れてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
ノンメタルクラスプデンチャーには、「色が自然」、「外れにくくフィット感がある」、「歯を削らなくて済む」といったメリットがあるとのことでした。また、「金具が見えないので、気兼ねなく笑える」というのは、QOLの観点から考えても、非常に重要なことです。入れ歯は毎日装着するので、できるだけストレスの少ないものを選びたいですね。
医院情報
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診療科目 | 歯科 |