歯周病患者は新型コロナの重症化リスクが高い!? 歯周病専門医がデータを解説

公開日:2021/07/18  更新日:2021/07/16

日本歯科医師会は公式サイトの中で、「歯周病の人はインフルエンザにかかりやすくなる」という啓発をおこなっています。そうであるならば、新型コロナウイルスについても、同じ事がいえるのではないでしょうか。真偽を確かめるために、「歯周病治療専門クリニックSPIDO」の辻先生に聞いてみました。

辻 翔太先生

監修歯科医師
辻 翔太(歯周病治療専門クリニックSPIDO 院長)

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大阪大学歯学部卒業。同大学附属病院で臨床経験を積んだ後に渡米し、歯周病、インプンラントの専門的な治療に従事。帰国後の2019年、大阪府大阪市に「歯周病治療専門クリニックSPIDO」開院。アメリカ歯周病学会認定歯周病専門医、アメリカ歯周病学会ボード認定歯周病専門医。歯周病に関する著書・寄稿多数。

世界初! タイムリーな研究報告

世界初! タイムリーな研究報告

編集部編集部

新型コロナウイルス感染症と口の病気って、なにか関係しているのでしょうか?

辻先生辻先生

ちょうど今年の2月1日に、ヨーロッパ歯周病学会から、カタールでおこなわれた統計調査に関する報告がなされました。新型コロナウイルスに感染した患者さん568人を、歯周病になっている方となっていない方に分けて、追跡調査したものです。両者を結びつけた研究としては、「世界初」といっていいのではないでしょうか。

編集部編集部

ドンピシャですね。有意な差はみられましたか?

辻先生辻先生

同調査によると、歯周病にかかっている方はかかっていない方に比べ、新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが「8.81倍」集中治療室を要するケースが「3.54倍」人工呼吸器などの補助を必要とするケースが「4.57倍」でした。これらの数字は、新型コロナウイルス感染症以外の要因、例えば喫煙習慣やがんなどの要因を除いて解析された結果です。

編集部編集部

粘膜からの感染なので、むし歯ではなく歯周病が関係しているということですか?

辻先生辻先生

そこまでは判明していません。あくまでも統計学的に、有意な差がみられたということです。機序や仕組みが解明されていくのは、これからの話になると思われます。それに、むし歯や歯周病は「菌」ですよね。対する新型コロナは「ウイルス」です。両者がどう結びついているのか、さらなる研究を待ちたいと思います。もしかしたら、歯周病に至った生活習慣などが関係しているのかもしれません。

ワクチンよりも安全な重篤化対策

ワクチンよりも安全な重篤化対策

編集部編集部

重篤化って、ウイルス量の増加と考えていいでしょうか?

辻先生辻先生

ウイルス量の増加に加え、「サイトカインストーム」の可能性も考えられます。「サイトカインストーム」とは、本来は免疫細胞のはたらきを調整するサイトカインが“やっきになって”体に侵入したウイルスを攻撃しようとするあまり暴走して、自分の正常な細胞まで傷つけてしまうことです。

編集部編集部

自分の歯周病に気付いていないと、打てる対策も打てないですよね?

辻先生辻先生

この機会に、ぜひ歯科医院で歯周病の発見に努めてください。報道で院内感染が取り上げられているものの、院外でもらった感染のクラスター化を除いた「院内-院内の感染事例」は、まだ、どの歯科医院でも起きていないはずです。

編集部編集部

まだ新型コロナウイルスに感染していない段階から、予防的な歯科健診が必要だと思いますか?

辻先生辻先生

将来の重篤化を防ぐ意味でも「必要だ」ということが、今回の統計調査によって示されたのではないでしょうか。もちろん、新型コロナウイルス感染症を切り離して考えたとしても、歯周病の定期的なチェックは必要です。

編集部編集部

歯周病に限らず、口内炎や水ぶくれでも感染しますよね?

辻先生辻先生

今回の研究発表に関して言えば、まだ関係性は不明です。歯ぐきの粘膜から感染が広がったのかどうかも、解明されていません。ただ、結果として「歯周病患者と健常者を比べてみたら有意な差が見られました」ということです。また、「新型コロナウイルスに感染しやすいか」を示したデータでもありません。あくまで重篤化リスクの調査報告ですので、誤解しないようにしてください。

歯周病は、基礎疾患リスクのインジケーターでもある

歯周病は、基礎疾患リスクのインジケーターでもある

編集部編集部

とはいえ、やはり受診先での感染が怖いです……。

辻先生辻先生

例えば当院では、「待合室にいらっしゃる患者さんを、常にお1人」にしています。ドクターが1人しかいないこともありますが、予約時間を調整して物理的な接触を防いでいます。ただし、どの医院でも同じ対応をしているとは限らないでしょう。

編集部編集部

そのほかにも、感染しないために自分でできることがあったら教えてください。

辻先生辻先生

今、マウスウォッシュによる感染拡大予防の研究が進められています。2021年3月、試験管の中に新型コロナウイルスとマウスウォッシュを試験管に入れ、効果があるのかどうかを実験したところ、イソジンなどのポビドンヨードを含むものと、過酸化水素が含まれるマウスウォッシュ、リステリンなどのエッセンシャルオイルを含むものは新型コロナウイルス対策に効果的という結果が出ております。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

辻先生辻先生

今回の統計調査報告は、非常にタイムリーでした。568人という被験者数は、十分とまではいえないものの、意味のある規模だと思われます。歯周病は生活習慣病とも関わっていますので、健康のバロメーターとして注目してみてください。

編集部まとめ

非常にタイムリーだったヨーロッパ歯周病学会の報告。辻先生へ取材のオファーをした段階では、まだ世の中に発表されていなかったそうです。また、取材時でも、日本語には訳されていませんでした。そのため、今回は貴重なインタビューになりました。死亡リスクが9倍弱と聞くと、たかが歯周病と言っていられないのではないでしょうか。

医院情報

歯周病治療専門クリニックSPIDO

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診療科目 歯周病・インプラント治療