ピロリ菌を減らすヨーグルトって本当に効き目があるの?
胃がんの原因としても知られるピロリ菌ですが、毎日の食生活から改善していきたいところです。その中で、「ピロリ菌に効く」といった謳い文句のヨーグルトを最近よく目にしますが、実際に効果があるのでしょうか。ヨーグルトを食べるだけで胃内のピロリ菌がいなくなることは本当にあり得るのでしょうか。「亀戸内視鏡・胃腸内科クリニック」の丸岡先生に、ピロリ菌とヨーグルトの関係について聞いてきました。
監修医師:
丸岡 大介(亀戸内視鏡・胃腸内科クリニック 院長)
山口大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院、鹿島労災病院、千葉市立海浜病院にて内科医として勤務。その後、千葉大学医学部附属病院にて、内視鏡センター、消化器内科などで経験を積み、2020年、東京都江東区に「亀戸内視鏡・胃腸内科クリニック」を開院。内視鏡検査や治療を中心とした診療に従事してきた経験を活かし、安定した、質の高い診療をおこなう。医学博士。千葉大学医学部附属病院非常勤講師。日本内科学会認定内科医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化管学会胃腸科専門医。
ピロリ菌に効果的なのは乳酸菌OLL2716株入りのヨーグルト
編集部
ピロリ菌に効くと言われているヨーグルトがありますが、実際に効果はあるのでしょうか?
丸岡先生
結論から言うと、ヨーグルトの定期的な摂取で、胃内のピロリ菌を減らすことは可能です。ただ、間違ってはいけないのは、すべての菌を除菌することができるというわけではない点です。あくまで減らすことができるだけで、ヨーグルトはサポート的な役割を担っています。また、すべてのヨーグルトに効き目があるわけではなく、ある菌が含まれているヨーグルトを摂取した場合に効果があります。
編集部
どのような菌が効果的なのでしょう?
丸岡先生
「乳酸菌OLL2716株」という菌です。この菌は、胃酸のある胃の中でも、ほかの菌に比べて増殖能が優れていると言われています。そして、ピロリ菌に対して殺菌作用を発揮したり、ピロリ菌が胃粘膜細胞に接着するのを阻害したりします。ピロリ菌は胃粘膜細胞に接着すると増えるのですが、乳酸菌OLL2716株がそれを防いでくれます。
編集部
なるほど。摂取期間や量の目安はありますか?
丸岡先生
1日2カップ「乳酸菌OLL2716株」を含んだヨーグルトを摂取する生活を8週間続けた結果、ピロリ菌の活動が抑制されたという研究結果があります。そのため、「1日2カップを8週間以上」がひとつの目安になるのではないでしょうか。なお、胃内にピロリ菌がいない人が摂っても大丈夫です。アレルギーがないのであれば、1歳から摂取しても問題ないですよ。
ピロリ菌の放置は胃がんの原因に
編集部
そもそも、ピロリ菌とはどういうものですか?
丸岡先生
ピロリ菌は、「ヘリコバクター・ピロリ」という、胃酸のある胃の中でも生息する細菌です。主に免疫力が低く、胃酸の分泌量が少ない幼少期に感染するもので、ピロリ菌を保有している親の咀嚼した食べ物や糞便を介して移るケースが多いようです。
編集部
ピロリ菌を放置しておくと、体にどのような影響がありますか?
丸岡先生
ピロリ菌の攻撃によって胃粘膜表面の細胞が損傷してしまい、慢性胃炎や胃潰瘍、胃がんなどの原因になります。特に胃がんの95%以上はピロリ菌が関与していると言われているため、ピロリ菌がいる場合は除去すべきです。大慌てで除菌する必要はないですが、都合のいい範囲で早めに除去をおこないましょう。
編集部
胃内にピロリ菌がいるかどうかは、どうやって調べられますか?
丸岡先生
胃カメラをおこなった際に、胃粘膜の組織を採取し、ピロリ菌がいるかどうかを判定することもできますが、胃カメラ以外の方法だと、呼気で調べる「尿素呼気試験」、ピロリ抗体の有無を血液や尿から調べる「血中・尿中抗体測定法」、便からピロリ菌の有無を調べる「便中抗原測定法」があります。当クリニックでは、正確かつ迅速に調べられる尿中抗体測定法か便中抗原測定法をおすすめしています。
ピロリ菌とLG21ヨーグルト「完全に除菌できるわけではない」
編集部
ヨーグルトに話を戻します。結局のところ、「乳酸菌OLL2716株」が含まれたものを摂取すれば、ピロリ菌に効果的ということですよね?
丸岡先生
その通りです。乳酸菌OLL2716株は、通称「LG21」とも呼ばれており、この菌はヨーグルト以外から摂取することはできません。ただ、1回食べただけでは効果は薄く、継続的に食べることが重要です。加えて、ピロリ菌を完全に除菌できるわけではないことを、頭に入れておいてください。
編集部
除菌はできないということでしたが、どのような人が食べるのがおすすめでしょうか?
丸岡先生
ピロリ菌がいる人にとっては、ピロリ菌の数を減らして、胃の炎症を抑えてくれる可能性があります。ただ、短期間で食べるのをやめてしまうと、再びピロリ菌が増えることも考えられます。いずれにせよ、ピロリ菌感染の一番の悪影響は胃がんの発生率が増えることですが、これが減るということが立証されている訳ではないので、それを理解した上で食べるのがいいと思います。
編集部
つまり、ヨーグルトを食べるだけでなく、ピロリ菌がいる場合は、きちんと除菌治療をした方がいいのですね?
丸岡先生
ヨーグルトだけでは完全にピロリ菌を除菌することができません。あくまで、サポート的な役割であると認識するといいと思います。ただ、少し前の除菌レジメン(治療計画)での併用ではありますが、除菌治療の3週間前からヨーグルトを食べることで、除菌成功率が69.3%から82.6%に上がるという報告もあります。今後、除菌治療の予定がある人は、3週間前から摂取してみるのはいいかもしれません。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあれば。
丸岡先生
ピロリ菌に感染している人は、していない人と比べて、胃がんの発生頻度が100倍以上とされています。除菌後も未感染の人と比べて数十倍、胃がんになりやすいので、除菌後も定期的な内視鏡検査を受けることを推奨します。
編集部まとめ
ピロリ菌を減らすことのできる、乳酸菌OLL2716株が含まれたヨーグルトを一定期間食べると、胃の炎症を抑えてくれる可能性があるようです。ただ、除菌をすることはできないので、ヨーグルトだけを食べ続けてもピロリ菌の根本治療は難しいようです。定期検査で原因からしっかりと対処する必要がありそうです。
医院情報
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診療科目 | 内視鏡内科、胃腸内科、消化器内科、内科 |