「胃がん検診」では何をする? 胃カメラとバリウム検査どっちがいい? 医師が解説!

胃がん検診には、胃カメラやバリウム検査などの方法がありますが、初めて受ける人はどれを選択したらいいのか迷うかもしれません。胃がん検診では一体何をするのか、どのように項目を選択すればいいのか、費用の目安などについて「渕上医院」の渕上先生に解説していただきました。

監修医師:
渕上 彰(渕上医院)
胃がん検診にはどんな項目がある?

編集部
胃がん検診には、どのような項目があるのですか?
渕上先生
代表的なものに、「胃カメラ(胃内視鏡検査)」と「バリウム検査(胃X線検査)」があります。国の指針によると、胃がん検診の内容は問診、バリウム検査または胃カメラ検査が推奨されています。
編集部
胃がん検診は何歳から受けるのでしょうか?
渕上先生
推奨されているのは50歳以上ですが、一般的にはバリウム検査は40歳以上も対象とされています。ただし、自治体によって差があります。
編集部
がん検診では、バリウム検査と胃カメラ検査どちらかを受ければいいのですか?
渕上先生
自費で受ける場合と違い、がん検診としては片方しか受けることができないので、どちらか一方を受診します。「異常あり」と診断された場合には、精密検査をおこないます。
編集部
どれくらいの頻度で受けるのでしょうか?
渕上先生
自治体が実施しているがん検診は、胃カメラ検査は2年に一度と制限を設けられている場合が多いですね。一方、バリウム検査は年1回実施している自治体もあります。ただし、胃炎や胃潰瘍を発症したことがあったり、ピロリ菌を除菌したことがあったりする場合には、ほかの人と比べて胃がんを発症するリスクが高くなるため、1年に1回は胃カメラ検査を受けるのが好ましいです。
胃カメラとバリウム検査の違い

編集部
胃カメラとバリウム検査は、どちらを受けるのがおすすめですか?
渕上先生
それぞれにメリットとデメリットがあるので、考慮して選択することが必要ですが、一般的には胃カメラの方が早期がんの発見に優れているため、推奨されています。胃カメラでは先端に小型カメラのついたチューブを口または鼻から挿入し、リアルタイムで消化管の内部を直接観察します。わずかな色の変化や隆起、小さな病変などを見つけることができ、がんの早期発見につなげやすくなるというメリットがあります。
編集部
細部まで細かく観察できるのがメリットなのですね。
渕上先生
反対に胃カメラのデメリットは、口や鼻からカメラを挿入する際に苦痛を覚えることが挙げられます。口ではなく鼻から挿入する方が、喉の反射が少なく苦しさが軽減するとも言われていますが、苦しさを感じる程度には個人差がありますし、どちらが良いとは一概に言えません。医療機関によっては鎮静剤を注射してから検査を受けることができるので、検査の苦しさが気になる場合にはそうした医療機関で検査を受けるといいかもしれません。
編集部
胃カメラによるリスクはありますか?
渕上先生
鼻や喉の麻酔薬によるアレルギー症状や誤嚥による肺炎、場合によってはカメラを挿入する際に粘膜を損傷したり出血したり、胃に穴が開いたりすることもあります。ただ、胃カメラによる偶発症、合併症の発生率は0.1%以下と報告されています。そのため、過度に心配する必要はないと思います。
編集部
バリウム検査についてはいかがでしょうか?
渕上先生
バリウム検査は、X線を通しにくい性質を持つバリウムと発泡剤を飲んでからおこなう検査です。検査台の上に横たわり、色々な体勢を取ることでバリウムを胃の内部へ満遍なく薄く広げ、胃の形や表面の凹凸などをレントゲンで撮影します。
編集部
バリウム検査には、どのようなメリットがあるのですか?
渕上先生
胃カメラと比べて苦痛が少なく、一般的に費用が安いというメリットもあります。しかしその反面、胃カメラよりも得られる情報量が少なく、特に早期がんにおいては見逃すリスクがあるというデメリットがあります。また、検査後にバリウムが排便できずに腸閉塞になるというリスクもあります。
胃がん検診を受ける際の注意点

編集部
結局、胃がん検診では胃カメラとバリウム検査、どちらを受ければいいのでしょうか?
渕上先生
現在では、胃カメラの方が検査の精度が高いため推奨されています。また、バリウム検査で異常を指摘された場合には、改めて胃カメラをする必要があるので、「それなら最初から胃カメラを受けた方がいいのではないか」と考えられています。
編集部
胃カメラを受ければ、必ずがんを見つけることができるのですか?
渕上先生
胃がんには様々な形があり、なかには小さくて平らなタイプもあり、そのような場合には胃カメラでも発見が難しいことがあります。また、検査後、急速に成長するがんもあり、そのような場合にはどうしても見逃してしまうリスクがあります。そのため、定期的にがん検診を受けて漏れのないようにすることが必要です。
編集部
胃がん検診の費用はどれくらいでしょうか?
渕上先生
胃がん検診は市区町村による住民健診、職場での検診などによって受けることができ、どこで受けるかによって金額に差はあります。およその目安は、胃カメラが1500円、バリウム検査が1000円程度です。保険診療で受ける場合、胃カメラは4000円程度になるので、がん検診で受ける方が安価で済みます。ぜひ、定期的に胃カメラを受け、がんの早期発見に努めてほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
渕上先生
胃カメラを受けたことがない人は、どうしても恐怖心を覚えてしまうかもしれません。しかし、検査は5分程度、長くても10分程度で終了します。ぜひ一度、ご自分の胃がどのような状態か確認するために、胃がんの検診を受けていただきたいと思います。特に「胃潰瘍の既往がある」「日常的に胃薬を飲んでいる」「血縁関連で胃がんを発症した人がいる」という場合には、年1回胃がん検診を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
現在ではがん治療も進化しており、早期発見した場合の5年生存率は90%以上と、非常に高いことがわかっています。胃がんの早期発見には、胃カメラが最適とのことでした。「苦しそう」「つらそう」と二の足を踏んでしまう場合は、鎮静剤などを使って検査してくれる医療機関を受診し、定期的に検査を受けましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、小児科 |