どうして砂糖は歯に悪いの? 砂糖さえとらなければ虫歯にならない?

公開日:2020/09/20  更新日:2020/09/23

弊害との因果関係がはっきりしているとしたら、その根本原因を絶てばいいのでは。かつて、「元から絶たなきゃダメ」というキャッチコピーを見かけましたが、虫歯と砂糖についてはどうなのでしょう。こうした因果論の是非を、「いちデンタルクリニック」の一戸先生に伺ってみました。

一戸江梨

監修医師
一戸江梨(いちデンタルクリニック 院長)

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神奈川歯科大学卒業。一般歯科勤務を通じて、保険診療から自由診療までオールラウンドな治療経験を積む。2018年、東京都世田谷区に、歯科技工所を併設した「いちデンタルクリニック」開院。女性歯科医師を中心に、スタッフ一丸となって治療にあたっている。顎咬合学会認定医。

砂糖の摂取は、原因の一角に過ぎない

砂糖の摂取は、原因の一角に過ぎない

編集部編集部

砂糖が「歯に良くない」といわれるのは、どうしてなんでしょう?

一戸江梨一戸先生

虫歯の主な原因菌であるミュータンス菌は、砂糖から酸を生みだします。そして、その酸が歯を溶かしてしまうからです。一方、キシリトールなどの人工甘味料をミュータンス菌が食べても、酸は作られません。人工甘味料が「歯にいい」とされる理由です。

編集部編集部

そうなると、砂糖を取らなければ虫歯を避けられますよね?

一戸先生一戸先生

あまり現実的な方法とは言えないでしょう。それに、虫歯の原因は砂糖の摂取以外にもあります。米国のカイス博士が唱えた「カイスの輪」説によると、虫歯は①「歯、唾液」、②「食べ物」、③「細菌」の3つが重なって発症するとされています。このうちの①「歯、唾液」には、唾液の性質や歯の質などが含まれます。また、④「時間」を加えた4要因を唱えるドクターもいらっしゃいます。

編集部編集部

④の「時間」要因について詳しく教えてください?

一戸先生一戸先生

わかりやすく言うと「だらだら食べ」です。もともと口の中のphはほぼ中性を保っていますが糖を含むものを飲食すると口の中は酸性に傾き、虫歯になりやすい時間が長くなります。間食がダメとは言いませんので、何かを食べたら歯をみがくこと。そして、次の食事まで、その状態を維持することが大切です。飲み物にしても、砂糖の入ったジュースなどを歯磨き後に飲んでしまったら、意味がありません。喉が渇いたら、お水やお茶などにしましょう。

編集部編集部

砂糖断ちより、取り方やお手入れの仕方に気をつけるほうが現実的だと?

一戸先生一戸先生

そういうことです。ミュータンス菌は、ご飯などの炭水化物に含まれる糖分からも酸を生みだします。したがって、②「食べ物」要因だけで虫歯をコントロールすることには、限界があるでしょう。自分で気づかずに取っていることもありますしね。

編集部編集部

たしかに炭水化物は盲点でした。ほかには?

一戸先生一戸先生

意外と、飲み物を外して考える方が多いようです。ジュース炭酸飲料は気づきやすいですが、スポーツ飲料にも多量の糖分が含まれています。甘い飲料の場合、重量の約1割は砂糖と考えていただいて結構です。また、虫歯ではないですが、「お酢」などの酸が含まれる食品も歯を溶かす要因です。

「悪者」のレッテル貼りをする前にやるベキこと

「悪者」のレッテル貼りをする前にやるベキこと

編集部編集部

なんだか、虫歯の予防はできないように思えてきました。

一戸先生一戸先生

そんなことはありません。砂糖を入り口にするから、難しく感じるのでしょう。実際は、日頃のお手入れによって、十分に虫歯を予防できます。つまり、入り口を「生活習慣」にしましょうということです。

編集部編集部

ダメな生活習慣とは?

一戸先生一戸先生

食事の後に歯をみがかないことと、「だらだら食べ」を繰り返すこと、何かを飲んだり食べたりしたまま寝てしまうことなどですかね。間食やジュース類そのものは否定しません。大切なのは、その後の行動です。口をゆすいでいただくだけで、かなり違ってきます。

編集部編集部

睡眠時間やストレスなども関係してきますか?

一戸先生一戸先生

「歯、唾液」要因に含まれるでしょう。ストレスがあると唾液量が少なくなり唾液の持つ様々な作用が低下し虫歯リスクが高まります。
またストレスにより歯ぎしりも多く強くなり歯が欠けたりヒビなどが入りやすくなります。

「カイスの輪」は数値による評価が可能

「カイスの輪」は数値による評価が可能

編集部編集部

「カイスの輪」について、歯科医院では何をしてくれるのでしょう?

一戸先生一戸先生

①「歯、唾液」要因については、唾液の分泌量唾液の抵抗力・免疫力などをお調べすることが可能です。②「食べ物」に関しては、いままでお話してきたようなアドバイスですね。最後の③「細菌」についても、虫歯菌の数プラークの付着量の検査ができます。

編集部編集部

ほか、虫歯予防に効果的な措置や施術についても教えてください?

一戸先生一戸先生

代表的なものとしては、歯の溝を樹脂で埋める「シーラント」や、歯の再石灰化を促す「フッ素塗布」などがあります。また、歯科衛生士が中心になった清掃メインテナンスも効果的です。ぜひ、定期的な受診を心がけてください。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

一戸先生一戸先生

虫歯のメカニズムを知ることは重要ですが、あまり極論に走らず、できるところから始めていきましょう。そのヒントは、歯科医院で得られます。各種検査に限らず、わからないことがあったら、お気軽にご相談ください。

編集部まとめ

たしかに虫歯は、ミュータンス菌が砂糖を酸に変えることによって生じます。しかし、砂糖は、生活を豊かにしてくれる食品の一つでもあります。無理に砂糖断ちするより、上手な付き合い方をしたほうが、精神的にも楽でしょう。問題は、取り方と取った後のお手入れです。また、虫歯のなりやすさによって、必要なお手入れの中身は変わってきます。その目安となるのが「カイスの輪」説といえそうです。迷うようなことがあったら、歯科医院で教えてもらってください。

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いちデンタルクリニック

いちデンタルクリニック
所在地 〒154-0002 東京都世田谷区下馬3-33-10
アクセス 三軒茶屋駅から徒歩12分
診療科目 歯科