夜になかなか眠れず寝坊してしまう…これってなんで?


中村 真樹(青山・表参道睡眠ストレスクリニック 院長)
起きられるけどダルいタイプか、寝過ごしてしまうタイプか
編集部

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生活や睡眠のリズムが通常とズレている状態のことです。たとえば、朝の4時ごろにやっと眠くなり、目が覚めたらお昼前後だったということはありませんか。下記3つの要件を満たすのであれば、睡眠リズム障害である可能性が高くなります。
①普通の人が寝るような時間(例えば夜12時前後)に布団・ベッドに入っても目が冴えて眠れない |
①普通の人が寝るような時間(例えば夜12時前後)に布団・ベッドに入っても目が冴えて眠れない |
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ストレスなどで寝付けない不眠タイプは、寝付けないだけでなく、途中で何度も目が覚める、いつもよりも早く目が覚めて眠れないといった「③たいてい6時間以上、連続して眠れる」の要件を満たさないので、異なる病態といえるでしょう。寝付きが遅く、途中目覚めることなく寝坊してしまうのであれば、やはり、睡眠リズム障害だと考えられます。
編集部

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そういうことです。夜間にスマホやテレビなどからの強い光を浴びてしまうとメラトニンの分泌が止まってしまうのです。眠気をもたらすホルモンがでなくなっているので、布団・ベッドに入ってもなかなか寝付けなくなってしまいます。なお、こうした変調は、週末の数日、夜ふかししただけでも起こりえます。「寝だめ」などといって昼過ぎまで寝ていることも、睡眠リズム障害のきっかけになるでしょう。
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たしかにそうなのですが、睡眠リズム障害は、スマホの登場以前からありました。つまり、ブルーライトに限らず、夜間に“何かに熱中していること”も、大きく関係していると考えられています。
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難しいですが、メリハリですよね。夜更かししたために日中の時間をロスするくらいだったら、昼間に楽しみましょう。日中の楽しみを取り戻そうと夜に頑張るのは、本末転倒な気がします。
睡眠時間は足し算できない
編集部

サプリメントの主成分は動物実験などで効果が確認されたものが多いですが、人に効果が出る十分な量が含まれているかは疑問です。もし、医薬品同等の効果があるとするのなら、薬事法という法律に従い、医薬品の審査に準じたテスト・評価を受けてその効果が実証される必要があります。
編集部

寝付きはいいかもしれませんが、本来の自然な眠りと違うので眠りの質を下げます。アルコールを分解するため、肝臓に負担をかけるので、朝起きても体の疲れが抜けないということも十分にありえるでしょう。また、アルコール依存症に至る恐れも考えられます。
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個人差はありますが、日中に十分なパフォーマンスを得られる睡眠時間は、20〜60歳では「7時間」前後とされています。なお、「都市部に住む日本人の平均的な睡眠時間は6時間弱」という報告がありますが、これは通勤時間や残業のために睡眠時間を削った結果であり、医学的に十分ということではありません。
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通勤中の居眠りなどの睡眠時間などを足してもいいのかということですよね。答えは「ダメ」です。ヒトは睡眠に入ると、最も重要なところからメインテナンスしていき、トータルして7時間前後かけて順次メインテナンスをするとされています。通勤中の居眠りや分割した睡眠では、続きからメインテナンスをするのではなく再び最初の重要な部分からメインテナンスが始まってしまうので、メインテナンスできないところが残り続けます。布団やベッドで寝ている連続した睡眠時間が5時間だとしたら、その5時間分しかメインテナンスされず、残りの部分はそのままになってしまいます。
睡眠障害のタイプによって治療方法も異なる
編集部

睡眠リズム障害であれば、メラトニンと同じような効果のある「ロゼレム(ラメルテオン)」というお薬を処方します。医師から指示された時間に服用し、1カ月ほどかけて、正しいリズムをつくっていきます。なお、睡眠リズム障害の方には、一般的な睡眠薬(ベンゾジアゼピン系睡眠薬)では効果が期待できません。
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例えるなら、毎日夜11時に寝ている方へ、「今日は睡眠薬をのんで夜7時に寝てください」と言っているようなものだからです。体が眠る準備ができていない状態では通常の睡眠薬では十分な効果がでないと言われています。それよりも、自然に眠くなるような体内時計のリズムをつくることが肝要です。通常の睡眠薬の連続服用をしても、多くの場合、睡眠リズムは取り戻せません。
編集部

そのとおりです。内臓機能も体内時計にあわせて活動しているので、睡眠薬で“頭”を寝かせても、体のリズムは狂ったままなのです。脳が目覚めても体が眠っている状態だと、食欲が出ない、吐き気やめまい、頭痛といった、いわゆる“時差ボケ”のときの体調不良と同じ症状がでます。また、朝の低血圧を訴える方がいらっしゃいますが、体が寝ているときは血圧は低めですので、血圧が低いから起きられないのではなく、体が起きていないから血圧が低いことが多いのです。
編集部

ストレス性の不眠の場合は、いかに眠る前にリラックス状態をつくるかが重要です。ヨガや軽運動などでリラックスできればいいですが、それが無理なら、リラックス効果のある睡眠薬を用いることが多いですね。ただし、不眠の原因はストレス以外にもいろいろあり、一概に言えません。ストレス以外の原因に、睡眠時無呼吸症候群や、あるいは他の隠れた原因があるのか。我々が言うところの「5P」に沿って、診断を付けていきます。
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下記の表にまとめました。ご確認ください。
①ストレスなどの心理学的原因(Psychological) |
①ストレスなどの心理学的原因(Psychological) |
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まずはこの5Pに照らし合わせて、入眠を妨げている原因の改善が先決です。いずれにせよ、眠れないことの不安が、更に不眠を悪化させる原因になるので、必要に応じて睡眠薬を処方します。
編集部

安心してください。たしかにベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系といわれる睡眠薬は、依存など、副作用のリスクはあります。しかし、減薬の方法が確立されていますので、医師の指示・注意を守るようにしてください。また、寝付きにいいのか、眠りを深めるのかによって、処方するお薬も違ってきます。いずれにしても、用法・用量を守りましょう。効き目が足りないからといって自己判断で「増やす」ことが依存や副作用のリスクを高めるのでやってはいけないことです。
編集部

一言で言うとしたら「眠ろうと頑張ることをやめてください」でしょうか。寝付けないときに頑張って眠ろうとすること自体が不眠の原因になります。不眠の症状・原因に合わせたお薬による治療や生活習慣の改善により、自然に眠れる習慣を身につけていきましょう。
編集部まとめ
医院情報

所在地 | 〒107-0062 東京都港区南青山5‐1‐22 青山ライズスクエア3階 |
アクセス | 東京メトロ表参道駅B3出口直結ビル内 徒歩1分 |
診療科目 | 睡眠外来・ 睡眠時無呼吸症候群・ 心療内科 |