【漫画付き】「前立腺がん」の患者が急増中! 予防する方法はあるの? 2020/05/14

【漫画付き】「前立腺がん」の患者が急増中! 予防する方法はあるの?

前立腺は膀胱のすぐ下にある男性特有の臓器です。そこに発生する「前立腺がん」が近年増加中で、近い将来、男性の部位別がん罹患率で1位になるといわれています。なぜ、前立腺がんが急激に増えているのか、前立腺がんを発見するために行われるPSA検査とは何か、果たして予防法はあるのか……。患者さん目線でわかりやすく病気について説明してくださる、土橋正人先生に解説していただきました。

監修医師
土橋 正人(どばし泌尿器科クリニック)

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北里大学医学部卒業。国際医療福祉大学熱海病院泌尿器科、国際医療福祉大学病医院講師などを経て、2019年9月に泌尿器科とペインクリニック内科を専門とした「どばし泌尿器科クリニック」を開業。日本泌尿器科学会認定指導医・泌尿器科専門医、日本がん治療認定医機構がん治療認定医。

編集部編集部

「前立腺がん」の患者が急増中と聞いたのですが、本当なんでしょうか?

土橋 先生

本当です。2012年の部位別がんの罹患率をみますと、1位は胃がん、2位が大腸がん、3位が肺がん、4位が前立腺がんですが、実際、この前立腺がんの罹患率は急激に増えています。2020年から2024年ぐらいの間には、男性のがんの部位別1位になると予測されているほどです。予防のためには、食生活の改善と適度な運動が推奨されています。

編集部編集部

急激に増えてきている原因は何でしょう?

土橋 先生

まず、「PSA検査」の普及によって、早期の前立腺がんが発見できるようになってきたということが、背景にあります。それから、「食生活の欧米化」と「高齢化」によって、罹患率そのものも増加してきています。

編集部編集部

「PSA検査の普及」から、詳しく教えてください。

土橋 先生

PSAというのは、「前立腺特異抗原」という前立腺から分泌されるタンパク質分解酵素の一つで、1979年に発見されました。PSAは、前立腺がんになると、血液中に多く出現します。そのため、血液検査でPSA値を測定する検査が行われるようになり、早期の前立腺がんの発見に役立っています。

編集部編集部

「食生活の欧米化」についてはどうでしょう。

土橋 先生

食生活も少なからず関係していると考えられています。日本人は元々、前立腺がんにかかる人が少ない人種でした。ところが戦後、食生活の欧米化が進み、肉や乳製品など動物性タンパク質や高脂肪の食品の摂取が多くなるにつれて罹患率が増えていきました。

編集部編集部

「高齢化」についても教えてください。

土橋 先生

前立腺がんの発症は大体60歳ぐらいから増えてきて、ピークは75歳から79歳ですから、高齢者のがんといえます。そこから考えると、高齢化が進んだことも、患者数が増えた原因の一つといえますね。

編集部編集部

他のがんと同じように、遺伝要因もあるのでしょうか?

土橋 先生

家族性の遺伝も関係しているといわれています。ですから家族歴を確認して、近親者に前立腺がんになったことがある方がいる場合は、40歳になったら一度、PSA検査を受けることをおすすめします。40歳代で発症する人はほとんどいらっしゃいませんが、PSAの上昇速度など、経過観察が大切です。

PSA値は、前立腺肥大症と前立腺がんのいずれでも高値に

編集部編集部

PSA検査はどんな検査なのでしょう?

土橋 先生

前立腺がんになると、PSA(前立腺特異抗原)が血液中に増えるため、検査は採血で行われます。最近では、PSA検査自体が全国的に普及しておりますので、市町村の健康診断でも、検査項目に入っている場合もあります。また、人間ドックでも、PSA検査は腫瘍マーカーの検査項目の中に入っています。ただ、いずれもオプション扱いになる場合がございますので、検診前に一度ご確認ください。当院に受診なされる患者さんの中にも、人間ドックで異常を指摘された方が結構いらっしゃいます。PSA値の正常値は4ng/mL以下といわれていますが、40~50代といった比較的若い方や家族内に前立腺がんを発症された方がいる場合には、4未満でも一度、泌尿器科の受診をおすすめいたします。また前立腺肥大症や前立腺炎といった病気でも上昇することがありますので、高値を指摘された場合も、泌尿器科に受診することをおすすめいたします。

編集部編集部

前立腺肥大症になると、いずれ前立腺がんになるのでしょうか?

土橋 先生

前立腺肥大症の患者さんからよく、「いずれ前立腺がんになるのでしょうか」と相談されることがありますが、前立腺肥大症と前立腺がんはまったく違う病気です。ですから前立腺肥大症になったからといって、がんを心配する必要はありません。ただ、PSAの検査値は前立腺肥大症でも高くなります。PSA値が高いけど、前立腺肥大症だから大丈夫、と放置していたら、実は前立腺肥大症とは別にがんができていて、知らない間に進行していた、ということもあり得ますから注意は必要です。

編集部編集部

前立腺がんには何か自覚症状は何かありますか?

土橋 先生

自覚症状はありません。そのため、PSA検査が普及する前までは、前立腺がんの早期発見は難しく、骨に転移して痛くなったり、足に麻痺が出たりなど、かなり進行した状態で発見されていました。前立腺がんは、泌尿器系のほかの膀胱がんや腎臓がんなどと違って、直接命に関わる肺や肝臓などには転移しにくいのですが、骨やリンパ節には転移しやすい特徴があります。そのため、他のがんにくらべて直接的に死に至るリスクは比較的低いものの、骨の痛みなどで長い期間、辛い思いをしてしまう可能性があります。ただ、今は早期に発見することで、治療して治るがんになってきています。そのため罹患率に比べ、死亡率は6位(2017年実績)と、ほかのがんに比べると低くなっています。

前立腺がん予防には、日本型食生活と適度な運動を!

編集部編集部

前立腺がんを予防するにはどうしたらよいでしょうか?

土橋 先生

原因の一つが欧米型の食生活といわれていますから、元々日本人が食べていた日本型食生活を基本とするのがおすすめです。とくに、肉類のとり過ぎは控えましょう。代わりに、前立腺がんの予防になるといわれている大豆や大豆製品、トマト、アブラナ科の野菜であるブロッコリーやカリフラワー、玉ねぎ、にんにくなど、抗酸化作用の高いものを積極的にとるようにしましょう。また、喫煙や多量の飲酒は避け、適度な運動を心掛けましょう。

編集部編集部

もし前立腺がんになってしまった場合の治療法は?

土橋 先生

前立腺がんとひと口に言っても、進行しやすいものと進行しにくいものがあります。大事なことは、診断されたときの年齢や社会的な立場など、自分自身の置かれた状態と、病気の顔つき(悪性度)や進行度を総合的に判断して治療方針を決定していくことだと思います。進行しにくいタイプの場合は、PSAをみながら経過をみるだけの場合もありますし、進行具合や悪性度によっては、早めに治療を行う必要がある場合もあります。

編集部編集部

治療と経過観察の判断はどのようにおこなうのでしょうか?

土橋 先生

グリーソン・スコア」というがん細胞の悪性度を分類する指標と転移の有無などを確認する画像診断、前立腺に対して占めるがんの割合など総合的に判断していきます。治療法は大きく分けて、手術、放射線治療、ホルモン療法、無治療経過観察があります。いずれを選択するかは、グリーソン・スコアによる悪性度と、年齢などを考慮し、本人とも相談しながら決められます。前立腺がんの患者さんは高齢者が多いですから、手術やホルモン治療などが必ずしもよいとは限りません。たとえば、82歳ぐらいの方で、進行の遅いがんの場合は、体に負担がかかる治療は避けて、経過観察になる場合もあります。いずれも、患者さんと相談しながら、がんがどれくらいその方の寿命を左右するかをみながら、判断いたします。

編集部まとめ

前立腺がんになる患者さんが近年急増している、というのは事実ではありますが、その背景には、PSA検査というスクリーニング検査により、早期発見できるようになったことが大きく関係していることがわかりました。前立腺がんは、自覚症状がまったくないため、PSA検査が行われる前は、かなり進行しないと発見できなかったそうです。検査は血液検査で簡単にできるため、家族歴がある方は、40歳代になったら一度検査をしたほうがよさそうです。

前立腺がんになる原因としては、欧米型食生活による肉や乳製品などの高脂肪高たんぱくの食事が関係しています。逆にいえば、予防のためには、高脂肪高たんぱくの食べ物を避けて、昔ながらの魚をメインにしたごはんと味噌汁などの日本食がよいといえます。また、果物や野菜など、抗酸化作用の高い食品を積極的にとるように心がけようと思いました。

<前立腺がんの予防によいとされる食品例>
大豆や大豆製品、トマト、アブラナ科の野菜であるブロッコリーやカリフラワー、玉ねぎ、にんにくなど。

医院情報

どばし泌尿器科クリニック

どばし泌尿器科クリニック
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