【雑誌「anan」連動企画】メディカルケアリサーチ vol.05 眼内コンタクトレンズ治療の安全性や将来性について《眼科》
「Medical DOC」編集部・佐藤あやが、最新医療を紹介する連載企画の5 回目。今回は、眼内コンタクトレンズ手術を受けた佐藤さんと眼科医の佐藤香先生が対談しました。
※2023年8月30日発売の「anan」に掲載された記事をMedical DOC用に再編集しています。
監修医師:
佐藤 香(近視ケアクリニック渋谷 院長)
アイケアクリニックグループ院長。集中力を要する緻密な作業を得意とし、年間3000件以上の手術を行う。注目の眼科医として、テレビや新聞、雑誌、YouTubeなどで眼の医療情報を発信している。校医として、地元住民のかかりつけ医としても貢献。
CLINIC DATA
近視ケアクリニック渋谷。視力矯正治療やコンタクトレンズの処方など、近視治療に特化したクリニック。最新の医療機器や医療技術を取り入れ、高品質な近視治療を提供。東京都渋谷区渋谷1-7-7-1F TEL 03-6452-6090 https://eye-care-clinic.jp/shibuya
佐藤 あや(「Medical DOC」編集部)
モデル、リポーター。2021年8月から「Medical DOC」の編集部としても活動を開始。最新の美容・医療・健康情報には常にアンテナを張っている。1児の母。Instagramは@faafa8
ICL手術から10カ月。気になることを解決!
佐藤あや
去年9月にICL(眼内コンタクトレンズ)の手術を受けたのですが、コンタクトレンズから解放されて最高です! 普段の生活でも快適さを実感していますが、特に旅行の時にはありがたいなとしみじみ実感。替えのコンタクトレンズを持って行かなくてもいいのと、メガネなしで露天風呂の絶景が楽しめるようになって感動しました。本当に手術を受けて良かったので、夫にもおすすめしたくらい。術後しばらくは、ハロー・グレア(光を見ると眩しさや滲みを感じる現象)があって、間接照明のお店に行くと眩しく感じていましたが、今はもう大丈夫です。定期的にアフターケアも受けているので、その点でも安心です。
佐藤先生
個人差もあるのですが、最初は眩しく感じる方は多いですね。夜間の運転での対向車のライトや、暗い場所で見る光が気になる場合がありますが、生活に支障が出るほどではありません。
佐藤あや
ICLは取り出して元の状態に戻すことができるのもメリットですが、将来的にICLを取り外すとしたらどのようなケースが考えられますか?
佐藤先生
白内障を発症した場合ですね。眼内の水晶体が白濁して視力が低下するので、ICLを取り出して白内障の手術をする必要があります。白内障の発症年齢は、60〜70代が多いですが、最近は若年化しており40〜50代で手術を受ける方も増えてきています。近視が強い方や、ICLなど眼の手術を受けた方は、若いうちから白内障の症状が出やすくなる可能性があるので、注意が必要です。
佐藤あや
ICLの寿命が理由で、レンズ交換が必要な場合はありますか?
佐藤先生
ICL自体は、眼内に入れっぱなしでも劣化することはないので、寿命はありません。もし、レンズの交換が必要になるとしたら、ICL手術を受けてすぐ、度数やサイズが合わないという理由でしょうか。あとは、老眼が進んできたら、老眼用のICLに交換する人もいます。ただ、近くを見る時は老眼鏡で対応できるので、交換まで考える人はそれほど多くはないです。
佐藤あや
何度も手術はしたくないですよね。私もレンズの度数を決める時は、確かに迷いました。今、視力は1.5で満足しているのですが、度数を決める術前検査では、視力が高い方が良いかと思っていました。どうせ手術をするのだから、2.0にしようかと……。でも、もともとコンタクトレンズの度数を弱めにしていたからか、あまり見えすぎると頭が痛くなってしまって。2.0だと本当にクリアな視界なのですが、ずっとこの視力が続くと疲れるかなと考えて1.5にしました。
佐藤先生
コンタクトレンズは病院で処方せずに購入できるので、強めの度数にしている人も多いです。それに合わせてICLの度数を決めると、度数が強いメガネをずっとかけているのと同じことなので、目が疲れてしまうリスクが。目が疲れても、コンタクトレンズは外せますが、ICLはそうもいきません。普段の生活で、パソコンなど近くのものをよく見る人も、弱めの度数にしておくほうが安心です。自分のライフスタイルに合わせて、度数を決めることが大切ですね。
佐藤あや
今後、ICLより進歩した視力矯正手術は出てきそうでしょうか?
佐藤先生
現段階ではわかりませんがICLとよく比較されるレーシックに、より安全とされる「リフレックススマイル」という術式が登場し、注目されています。ICLは、近視や乱視が強い方や、角膜が薄くてレーシックが適応外の方、ドライアイの方など、適応範囲は広いのですが、軽度の近視の方には適しません。近視が軽度な場合やアレルギー症状にお悩みの方は、レーシックを選択することになりますが、視力が戻ってしまうこともあります。リフレックススマイルは、レーシックの懸念点だった近視の戻りが少ないことから、世界的に症例数が増えています。
佐藤あや
費用的にはどうなのでしょうか?
佐藤先生
高い順に、ICL、リフレックススマイル、レーシックですね。
佐藤あや
やはり、ICLがいちばん高額なのですね。将来的に、ICL手術の費用が下がる可能性はありますか?
佐藤先生
今後、需要がさらに増えれば金額が下がるかもしれませんが、なんとも言えません。実は、眼内コンタクトレンズや手術に使う薬剤は海外からの輸入になりますが、価格が少し上がりました。輸入コストには世界情勢も影響するので、さらに円安が進行すれば、手術費用が上がることも考えられるかもしれません。
佐藤あや
高額だとは思いますが、裸眼で過ごせて生活の質が上がるのと、今後もずっとコンタクトレンズを使うにしてもランニングコストはかかるので、費用面で迷っている方は、早めに手術を受けた方がお得なのかなと思います。
写真・土佐麻理子
取材、文・岡井美絹子