人工妊娠中絶ができる時期と中絶手術の妥当な時期
人工妊娠中絶の件数は年間15万件を超えており、予定をしていなかった妊娠に対してやむを得ず人工妊娠中絶を選択する女性は少なくありません。ただ、お腹の中の赤ちゃんも大切な命のため人工妊娠中絶ができる時期にはリミットがあります。人工妊娠中絶ができる期間と手術を行うのにベストとされている時期について、Medical DOC編集部がお届けします。
伊藤 晄二 (栄産婦人科 院長)
目次 -INDEX-
人工妊娠中絶で重要な妊娠週数の数え方
人工妊娠中絶ができる期間は、妊娠週数によっていつからいつまでと決められているため、妊娠週数がとても重要になってきます。妊娠時期は月数または週数で表されますが、一般的には週数で数えることが多いようです。
妊娠週数の数え方
妊娠するとおよその妊娠週数を決められます。妊娠週数は、妊娠が成立した日ではなく、最後の月経開始日を0週0日としています。妊娠週数は「満」でカウントしていくため、満0日目から満6日目までの7日で1週となります。満7日目は週数に「+1」をして繰り上げ、次の週数の満0日目となります。
28~30日の正順な月経周期の人の月経開始日が4月1日だった場合は、次のようになります。
・4月1日:妊娠0週0日
・4月2日:妊娠0週1日
・4月8日:妊娠1週0日
妊娠週数のズレの修正
最終月経開始日があいまいなケースや月経周期が28日~30日ではない人の場合、実際の妊娠週数とズレていることがあります。ズレている場合は、赤ちゃんの大きさの差が出にくい妊娠8週から10週の超音波測定の結果で修正されることがあります。
妊娠8週から10週目の赤ちゃんの大きさは、「頭殿長(CRL)」といわれる胎児の頭のてっぺんからお尻までの長さで表されます。この時期の赤ちゃんの大きさは個人差が少なく、CRLが15mmから30mmで精度は±4日以内とされていることから、最後の月経開始日から起算した妊娠週数にズレがあればCRLから妥当とされる妊娠週数に修正されます。
人工妊娠中絶に関する法律と中絶手術ができる時期
人工妊娠中絶の手術ができるケースや中絶が可能な時期などは、「母体保護法」という法律で定められています。また、人工妊娠中絶の手術は、都道府県の医師会が指定する「母体保護法指定医師」しか行えないため、人工妊娠中絶の手術ができる病院が限られているのも特徴です。
人工妊娠中絶ができるケース
お腹の中の赤ちゃんも妊娠が成立した時点でひとつの大切な命として考えられており、日本では簡単に堕胎できないよう法律で守られています。ただ、予定していなかった妊娠など、法律で定められた理由に該当する場合は、配偶者と本人の同意があれば人工妊娠中絶を選択できるようになっています。
【身体的もしくは経済的理由】
妊娠を継続することや分娩することで母体の健康や生命を危うくする可能性がある場合です。インフルエンザや風疹など、適切な治療によって妊娠中に治癒する可能性がある一過性の病気は除かれますが、ひどい妊娠悪阻など、治療をしても改善が見込めず、症状が悪化するような場合、人工妊娠中絶の理由になることがあります。また、身体的理由だけでなく、他の理由によって母体の健康を害する可能性がある場合も人工妊娠中絶の理由になり得ます。
【強姦などによる妊娠】
暴行や脅迫といった抵抗できない状態で姦淫されて妊娠したようなケースでは、本人の同意だけで行えることが多いようです。
人工妊娠中絶ができる期間
母体保護法によると、人工妊娠中絶は胎児が母体外で生命を保持できない時期にできるものとされています。現在の日本では、妊娠22週以降であれば胎児が母体外でも生存可能とされているため、人工妊娠中絶ができる時期は妊娠22週未満(21週6日)までとなっています。
妊娠0週0日から可能ということになりますが、月経予定日を過ぎても月経が来ないことに気がついて、妊娠検査薬を使用してから妊娠に気がつく人が多いため、実際には妊娠3週目から4週目ごろから妊娠22週未満までの間に人工妊娠中絶を行うことが多いようです。
時期で異なる人工妊娠中絶手術の方法
妊娠週数によって人工妊娠中絶の手術方法が異なります。
妊娠初期の手術方法
12週未満の妊娠初期の場合、掻爬(そうは)法と吸引法のいずれかの手術が行われます。掻爬法は、特殊なハサミのような器具を使って子宮内容物をかき出す方法で、吸引法は、金属の棒状の吸引機を子宮内に挿入し、子宮内容物を吸い出す方法です。手術後に異常がなければ手術当日に帰宅できます。
吸引法は、手術時間が早く、胞状奇胎など特殊な妊娠の場合に行われることが多いですが、器具に血や組織などが付着しやすいといわれています。丁寧に滅菌しなければ感染症の原因となる可能性があります。
妊娠中期の手術方法
妊娠12週から22週未満の中期では、子宮収縮剤を使い、人工的に陣痛を起こさせて流産させます。分娩と同じくらいの負担が身体にかかるため、2~3日入院となるケースが多いです。手術料に加え、入院費用も必要になるため、妊娠中期の人工妊娠中絶は経済的な負担が大きくなります。
人工妊娠中絶手術のベストな時期
人工妊娠中絶の手術にはさまざまなリスクがともないますが、一般的には妊娠6週から9週ごろの初期中絶が身体への負担が比較的少ないといわれています。
早い方が身体的にも経済的にも負担が少ないのではと思うかもしれませんが、妊娠に気がついてすぐの4週から5週ごろは、子宮頸管が硬く子宮もまだまだ小さい状態です。子宮頸管が硬いと手術に必要な子宮頸管の拡張が難しく、子宮のふくらみがほとんどない状態では子宮内容物が残っていないかを確認するのが難しくなります。
逆に、子宮が大きくなり始める妊娠10週を超えると胎児も大きくなるため、手術が難しくなり、身体への負担も大きくなります。したがって、子宮頸管が柔らかくなり、子宮も大きくなりはじめた妊娠6週から9週ごろがベストと考える医師が多いようです。
妊娠6週から9週であれば、妊娠初期の手術方法で行えるため、手術日当日に帰ることができます。手術後2~3日は安静にした方がよいですが、事務程度の仕事であれば、手術翌日から働くことは可能なため、仕事を休まなくて済むという点も、人工妊娠中絶の手術のベストタイミングといわれる理由のひとつです。
身体や経済面から人工妊娠中絶時期を検討することも大事
予定していない妊娠に対して人工妊娠中絶を検討する人は少なくありません。初産婦や経産婦に関わらず、経済的な理由で人工妊娠中絶を行うケースが多いとされていますが、決断をするのであれば、なるべく妊娠週数が早いタイミングがベストです。
人工妊娠中絶は、手術を行うタイミングに関わらず身体にダメージを与えます。妊娠初期でも感染症などのリスクや苦痛がともないますが、妊娠中期である12週以降の手術は陣痛を人工的に起こして流産させるため、分娩するのと同じくらい身体に負担がかかります。入院費用もプラスされるため、妊娠中期の人工妊娠中絶は経済的な負担も大きくなります。人工妊娠中絶を検討しているのであれば、身体や経済面も考慮して時期を決めることが大切です。
本来、人工妊娠中絶術は安易に行うことではなく、きちんと自分の生活計画などを考えた上で行わなければなりません。
妊娠前には、家族計画をしっかり立てることは最低限であり、好まない妊娠をしないように、ピルやコンドームを使いましょう。
もし失敗した場合には、十分に自分の今後の生活計画において、人工妊娠中絶術は本来いけないことであるが、どうしてもしなければならないかどうか熟慮の上、施行することだと思います。
監修ドクター:伊藤 晄二 医師 栄産婦人科 院長
中絶でおすすめの産婦人科 中部編
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