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新型コロナウイルス、吸入型ワクチンの有効性【医師による海外医学論文解説】

 更新日:2023/03/27

新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐり、カナダのマクマスター大学の研究チームが吸入型ワクチンの有効性についての論文を学術誌「Cell」に発表しました。この海外論文について工藤医師に伺いました。

工藤 孝文 医師

監修医師
工藤 孝文(医師)

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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

マクマスター大学の研究チームによる吸入型ワクチンの論文とは?

マクマスター大学の研究チームが発表した吸入型ワクチンの論文について教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

吸入型ワクチン開発についての論文は、カナダ・マクマスター大学のマシュー・ミラー氏を中心とした研究グループが、今年2月に学術誌の「Cell」に発表しています。
研究グループは新型コロナの新たな変異株が、スパイクタンパク質のみを標的とするように設計されている現在の筋肉内投与型のワクチンの有効性を脅かしていることから、より広範かつ長期的な防御を実現するための次世代ワクチン戦略の開発が急務となっているとしています。研究グループは,ヒトおよびチンパンジー由来のアデノウイルスベクターを用いた3つの抗原を発現する吸入型ワクチンをマウスモデルで評価しました。その結果,特にチンパンジー由来のアデノウイルスベクターワクチンを用いた単回鼻腔内投与では,局所および全身性の抗体反応,粘膜組織常在型記憶T細胞,粘膜学習型自然免疫からなる保護免疫の誘導において,筋肉内投与よりも優れている結果が出たということです。さらに、鼻腔内免疫により元々の新型コロナウイルスのほかにも、アルファ株とベータ株の2つの変異株に対しても耐性が得られることが示されたということです。論文ではこれらの結果から、アデノウイルスベクター多価ワクチンの呼吸器粘膜への投与が、現在および将来発生し得る変異株に対する有効なワクチン戦略であると評価しています。
また、こうしたマウスを用いた研究結果に基づき、研究グループはワクチンの第1相臨床試験を開始し、新型コロナウイルスのmRNAワクチンを2回接種した健康な成人を対象に、同吸入型ワクチンによる免疫増強効果について検討しているということです。

この論文に対する評価と受け止めは?

今回の論文内容についての受け止めを教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

新型コロナウイルスは呼吸器から侵入し、血中に移行して感染します。この最初の段階である呼吸器の免疫系で排除できれば、より予防効果は高いと考えられます。ただし、ワクチン注射よりもワクチン吸入の方が効果が低いということになれば意味がないので、注射と比較した効果の実証がまたれます。

吸入型ワクチンに期待できることは?

吸入型ワクチンに対して期待されるポイントを教えてください。

工藤 孝文 医師工藤先生

上述のように注射と比較して効果が高いということになれば、ワクチン注射にとってかわる新型コロナウイルスの新しい感染対策になることも可能だと思います。また、注射をしづらい方に対しても投与が可能になりますし、薬局などでのワクチン投与も可能になるかもしれません。

まとめ

新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐり、カナダ・マクマスター大学の研究チームが吸入型ワクチンの有効性についての論文を発表したことが明らかになりました。従来の新型コロナウイルスワクチンとは違うアプローチになるため、今後の研究結果などにも注目が集まります。

原著論文はこちら
https://pmc.carenet.com/?pmid=35180381

https://pmc.carenet.com/?pmid=35118464

この記事の監修医師