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「急に毛が濃くなった」のはなぜ?医師が疑うべきホルモン異常と受診の目安を解説!

「急に毛が濃くなった」のはなぜ?医師が疑うべきホルモン異常と受診の目安を解説!

急に体毛が濃くなっても多くは問題ありません。しかし、場合によっては健康状態に影響が出るような病気にかかっている場合もあります。

病気が原因の場合は、すぐに医療機関を受診し専門科の評価や治療を受けることが重要です。今回は、急に体毛が濃くなる可能性がある病気と、病気以外に考えられる原因、さらにそれぞれの症状に対してどの科を受診したらよいのかを解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

急に体毛が濃くなる症状とは

体毛の濃さや増加は、体の部位によって違いがあります。特に、顔面(鼻下や顎)、体幹(胸部、下腹部、背中)、腕や脚、VIOゾーンなどは、男性ホルモンの影響を受けやすいため、毛の濃さに違いが生じやすくなります。

これらの部位の部位を中心に、急に体毛が濃くなる症状の多くは、体内ホルモンの変化が原因のため、基本的に問題はありません。

しかし、毛が少なかった部位に一時的に毛や濃い毛が急に生え始める場合は、ほかの健康問題が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

急に体毛が濃くなったことで考えられる病気

まずは、急に体毛が濃くなった場合に考えられる病気を確認しておきましょう。代表的な病気が、男性型多毛症と多毛症です。

男性型多毛症の原因

女性において口髭・顎髭など、男性に典型的な発毛パターンで太い毛や濃い毛が過剰に成長する状態のことで、以下のような原因で発症します。

家族性男性型多毛症

家族性男性型多毛症は、男性ホルモンの分泌が通常よりも早く始まる「早発性思春期」を引き起こす遺伝性の病気です。

一般的には、女の子は10歳頃、男の子は12歳頃に、精巣発育・陰毛発生・腋毛・ひげや声変わりなどの変化が出ますが、家族性男性型多毛症の場合は、これの症状が2~3年以上早く現れるのが特徴です。

症状が気になる場合などは、脱毛やホルモン療法を行う場合があります。

副腎過形成

副腎過形成は生まれつきの病気で、腎臓の上に位置する副腎皮質でうまくホルモンが作られない難病疾患の1つです。

一般的に、副腎皮質は以下のような重要なホルモンを作っています。

       

  • 糖質コルチコイド:ストレス応答や血糖を上昇させる
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  • 鉱質コルチコイド:血圧や電解質のバランスを調整
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  • 副腎性アンドロゲン(性ステロイド):男性ホルモンの一種で、性発達に関係する

副腎過形成の場合は、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドが作られず、その結果、低血糖・食欲不振・易疲労感・低血圧などの症状がみられます。

ただ、副腎性アンドロゲン(性ステロイド)は、過剰に作られる特徴があるため、男性型多毛症を引き起こす可能性があります。

副腎過形成の治療は、不足した糖質コルチコイドや鉱質コルチコイドを薬として補うことで、異常な状態を正常化できます。

副腎腫瘍

副腎腫瘍とは副腎に発生する腫瘍のことですが、腫瘍の多くは良性です。

副腎は腎臓の上に位置し、ホルモンを分泌する重要な役割を果たしています。しかし、副腎腫瘍になると、ホルモンの過剰分泌を引き起こし、さまざまな症状をもたらす場合があります。

副腎腫瘍は以下の種類に分かれます。

       

  • 副腎皮質腫瘍:副腎の外側にある副腎皮質から発生し、電解質のバランスを調整する「アルドステロン」や「コルチゾール」などのホルモンを過剰に分泌することがあります。
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  • 副腎髄質腫瘍:副腎の中心部にある副腎髄質から発生し、交感神経を活発にする「カテコールアミン(アドレナリンやノルアドレナリン)」を過剰に分泌することがあります。

この中でも、副腎皮質腫瘍は、男性ホルモンである「アンドロゲン」を過剰に分泌することがあります。

このため、「顔や体の毛が濃くなる」「声が低くなる」などの症状がみられる場合があります。

クッシング症候群

体内でコルチゾールというホルモンが過剰に分泌される難病の1つで、女性の方に多く発症する傾向です。コルチゾールは副腎から分泌され、ストレス応答や代謝の調整に重要な役割を果たしています。

しかし、過剰に分泌されると、手足は細く、顔や体幹に脂肪がつく「中心性肥満」や顔に脂肪がつき、満月のように丸くなる「満月様顔貌」など特徴的な身体症状がみられます。

なお、クッシング症候群の主な原因には以下のようなものがあります。

       

  • 副腎腫瘍:副腎自体に腫瘍ができ、コルチゾールを過剰に分泌する場合があります。
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  • 下垂体腫瘍:脳の下垂体に腫瘍ができることで、副腎の活動を活発にさせる「アドレノコルチコトロピン(ACTH)」が過剰に分泌されることで、コルチゾールの分泌が増加する場合があります。
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  • 異所性ACTH分泌:肺の腫瘍など、ほかの部位からアドレノコルチコトロピンが分泌され、副腎を刺激することによってコルチゾールが増加する場合もあります。コルチゾールが過剰に分泌されると、毛が濃くなるなどの症状が現れることがあります。

多嚢胞性卵巣症候群

卵巣で男性ホルモンが多く作られるため、排卵しにくくなる疾患で、生殖年齢女性の約5〜8%に発症すると言われています。また、女性における多毛症の最も一般的な原因は多嚢胞性卵巣症候群であるとされています。

多嚢胞性卵巣症候群は以下の3つがそろうと診断されます。

       

  • 月経が不順:ホルモンの不均衡により、月経周期が不規則になります
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  • 卵巣の嚢胞形成:卵巣内に小さな嚢胞が多く形成される
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  • ホルモンの不均衡:女性ホルモンと男性ホルモンのバランスが崩れて、男性ホルモンが高くなる

多嚢胞性卵巣症候群になると、男性ホルモンが高くなるため、体毛が濃くなる可能性があります。

特定の薬剤による影響

以下のような、特定の薬剤を継続的に使用していることで、男性型多毛症になる場合があります。

       

  • ダナゾール:性ステロイド系の薬剤で、子宮内膜症や乳腺症の治療に使用されますが、副作用として多毛症が報告されています。
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  • ジアゾキシド:インスリンの分泌を抑制して血糖を上昇させる働きがありますが、多毛症の副作用があるといわれています。

多毛症の原因となる疾患

性別に関係なく体のあらゆる部分で毛が濃くなる状態です。この多毛症は、全身性と限局性にわかれ、以下のような原因で発症します。

腫瘍随伴症候群

腫瘍随伴症候群は、腫瘍が直接的に引き起こす症状ではなく、離れた部位にもかかわらず、腫瘍によって生じる全身的な症状のことです。

この症状によって、ホルモンバランスが崩れ、アンドロゲンを過剰に分泌した結果、多毛症の原因となる場合があります。

特定の薬剤

以下のような薬剤を継続的に使用していることで、多毛症になる場合があります。

       

  • ミノキシジル:発毛を促進する効果があり、内服薬と外用薬にわかれます。内服薬は体毛が濃くなりやすいものの、外用薬は直接塗布するため、全体の体毛が濃くなる危険性は低い傾向です。
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  • フェニトイン:抗てんかん薬で、長期使用により多毛症が副作用として現れることがあります。
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  • シクロスポリン:免疫抑制剤の一種で、異常な免疫反応を抑える働きがあります。
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  • 副腎皮質ホルモン薬(ステロイド薬):長期間使用すると、体内のホルモンバランスが変化して、多毛症になる場合があります。

急に体毛が濃くなる場合に考えられる病気以外の原因

病気以外でも急に体毛が濃くなる場合があります。病気以外で急に体毛が濃くなる原因も確認しておきましょう。

       

  • ホルモンバランスの乱れ:体毛の成長には男性ホルモンであるアンドロゲンが大きく関与しています。アンドロゲンの分泌量は、思春期以降に増加し、20〜30歳代にかけて分泌量が最も多くなり、それ以降は少しずつ減少するのが一般的です。しかし、何かしらの原因によって、ホルモンバランスが崩れてアンドロゲンの分泌量が多くなると、体毛が濃くなる可能性もあります。
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  • 遺伝的要因:体毛の濃さは遺伝的な要素が大きく、両親や祖父母の体毛が濃い場合、遺伝的に体毛

    まとめ

    急に毛が濃くなる原因の1つとして、男性型多毛症や多毛症が考えられますが、直ちに健康に大きな影響を与えることはほとんどありません。しかし、違う病気が隠されている場合も少なからず存在します。

    そのため、急に毛が濃くなって気になる場合は、一度医療機関を受診して専門家の診断をうけましょう。

    「急に毛が濃くなった」で考えられる病気と特徴

    急に毛が濃くなると関連する病気は以下が考えられます。

    婦人科の病気

    内分泌科の病気

    皮膚科の病気

    • 多毛症
    • 男性型多毛症

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