「集中できない」原因とは?考えられる病気も医師が徹底解説!
集中できない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「集中できない」症状で考えられる病気と対処法
「集中できない」という症状は個性や性格に近いもので、一般的に見過ごされることも多いですが、仕事や人間関係などにおいて支障を生じていることもあります。
「仕事において頻繁にミスをしてしまう」、「集中することが苦手で他の人よりも業務に時間がかかる」など日々苦悩している方も少なからずいらっしゃるかと思います。
今回は、「集中できない」症状で考えられる病気と対処法に関して詳細に解説していきます。
仕事や作業に影響が出るほど集中できない症状で考えられる原因と対処法
仕事や作業に影響が出るほど集中できない症状で考えられる原因疾患としては、「注意欠陥多動性障害」が挙げられます。
注意欠如多動性障害では、集中できない症状が認められるだけでなく、通常の発育年齢に比べて、格段に落ち着きがない、そわそわして待つことができない、注意が散漫になりやすい、作業工程に単純なミスが多いといった特徴があります。
注意欠陥多動性障害に対する治療として、ソーシャルスキル訓練や教育現場での保健指導などの体制が徐々に確立しつつあり、ペアレントトレーニングや親の会などに代表される親御さんに対する支援システムも整備されてきました。
本疾患を疑う際には、できる限り早めに精神科など専門医療機関を受診してください。
気が散って集中できない症状で考えられる原因と対処法
気が散って集中できない症状で考えられる原因疾患としては、「HSP」が挙げられます。
HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の略であり、周囲における刺激的な感覚を感じる閾値が低く、身体の内外に対する数々の刺激的な事象に対して非常に過敏に反応する傾向が強く、通常よりも感受性が高い方々を指しています。
一般的に外部刺激に対して敏感に反応する傾向を有しているために、人混みの混雑地帯やわずかな物音など物理的な刺激を受けると、自分の意図とは関係なしに敏感に反応してしまって、気が散って何事にも集中できない傾向が強いと言われています。
HSPの人が日常生活を送るうえで気を付けておくべき要点は、自分自身でHSPのことを正しく認識して理解し、HSPであることに対して真摯に向き合うことです。
周囲のサポートを上手に活用して、自分の性格や特徴的な癖、あるいは様々な物事に対する認知の偏りなどを適切に捉えて、それらの症状を多少なりとも改善するために精神科など専門医療機関に相談することが重要です。
他のことを考えてしまう、集中できない症状で考えられる原因と対処法
他のことを考えてしまう、集中できない症状で考えられる原因疾患としては、「統合失調症」が挙げられます。
統合失調症は、一言で例えるならば自分の心理や思考そのものがまとまりづらくなってしまうがゆえにその時々の気分や言動、そして人間関係などにも多大なる影響を及ぼすので、比較的長い期間に渡り症状をコントロールしながら周囲からの生活支援を必要とします。
統合失調症の原因は未だ医学界でも明らかになっていませんが、これまでの調査研究からは遺伝的要因が強く関与している可能性が指摘されています。
この病気は慢性的に症状が良くなったり悪くなったりして経過することが多い疾患ですので、まずは症状緩和を図ったうえで平穏な日常生活を送ることを治療目標とします。
統合失調症に伴って集中できない症状が顕著に出現する場合には、なるべく早く精神科専門医を受診してください。
ぼーっとして上の空になる、集中できない症状で考えられる原因と対処法
ぼーっとして上の空になる、集中できない症状で考えられる原因疾患としては、「睡眠障害」が挙げられます。
通常、体内時計は「メラトニン」と呼ばれる代謝物質で調整されており、その物質濃度自体が日光などと深く関連しているため、仮に夜遅くまで活動しながら毎朝の日光を浴びない状態が継続されると容易に体内時計が乱れて睡眠障害を発症することになります。
特に、ストレスが過剰にかかる現代では疲労困憊状態から睡眠障害につながる恐れもあるため、常日頃から規則正しい生活を送ることが重要と考えられています。
眠れない日々が続いて集中できない症状を認める際には、精神科など専門医療機関を受診しましょう。
子どもで集中できない症状で考えられる主な原因と対処法
子どもで集中できない症状で考えられる主な原因疾患としては、「自閉症スペクトラム障害」が挙げられます。
自閉症スペクトラム障害では他人とのコミュニケーションの場面で、言葉や視線、顔の表情やジェスチャーなどを用いて相互的にやりとりをしたり、自分の気持ちを上手く伝えたり、一方で相手の気持ちをスムーズに読み取ったりすることが苦手とされています。
何事にも集中できない自閉症スペクトラム障害を抱えた子どもに対して、精神科専門医などに相談することで本人を取り巻く問題を解決するサポートになりますので、心配であれば専門医療機関を早期に受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「集中できない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
幻聴や幻覚が出現する症状の場合は、精神科へ
集中できない以外にも幻聴や幻覚が出現する、あるいは支離滅裂な発言が認められる場合には統合失調症の悪化が疑われますので、可及的速やかに精神科専門医に相談する必要があります。
受診・予防の目安となる「集中できない」のセルフチェック法
- ・集中できない以外にそわそわして落ち着きがない症状がある場合
- ・集中できない以外に夜に眠れずに日中に強い眠気に襲われる症状がある場合
- ・集中できない以外にわずかな物音でも敏感に反応する症状がある場合
「集中できない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「集中できない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病とは、体内のインスリンと呼ばれる血糖を一定の範囲におさめる働きを担っているホルモンが十分に働かないために血液中に存在するブドウ糖が増加する病気です。
糖尿病に罹患していて普段から血糖値が高い人ほど認知機能が低下しやすいと言われており、認知機能が低下すると日常生活において記憶力、集中力、意思決定力などを含む様々な能力が減衰して集中できない症状を来すこともあります。
糖尿病は食事療法と運動療法が治療の基本であり、特に生活習慣の乱れが発症に大きく関与している2型糖尿病では、原因となっている食生活や運動習慣の乱れを正す生活指導が行われます。
生活習慣の是正だけでは思うように高血糖を改善できないときに薬物療法を始めることになり、経口の飲み薬を服用することも有用的ですので、心配であれば糖尿病内科などを速やかに受診しましょう。
睡眠障害
睡眠障害とは、睡眠に何かしらの異常がある状態を指しており、上手に眠れない「不眠症」、日中にも強い眠気を自覚する「過眠症」、昼夜の睡眠リズムが狂って生活習慣が乱れる「概日リズム睡眠障害」なども本疾患に含まれると考えられています。
睡眠障害の原因は様々伝えられていますが、基本的には心理的ストレス、過度の飲酒、身体不調などが代表格として挙げられます。
睡眠障害の発症要因は精神的な疲れ以外にも、時差や劣悪な就寝環境、眠る前にアルコールやカフェインなどを過度に摂取することなどが考えられますので、まずはこれらの生活習慣を整備して、それでも眠れない状態が続けば精神科専門医を受診しましょう。
統合失調症
統合失調症は、幻覚や妄想を代表とする精神症状や意欲や意思など自発性に関する機能低下、ならびに認知機能が衰えるなどを主体とするメンタル疾患を指します。
統合失調症は主に思春期から青年期という時期に発症しやすいとされており、その特徴的な症状によって生活の広範囲に及んで種々の障害を引き起こす精神疾患です。
統合失調症の主な発症原因はいまだに明確に判明していませんが、一旦発病すると薬物療法や認知行動療法などの治療内容が行われます。
本疾患に伴って集中できない症状を認める際には、できるだけ早く精神科専門医を受診して相談しましょう。
多動性障害
多動性障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスが背景にあって、その人が過ごす環境や周囲の人との関わり合いのミスマッチから社会生活活動に色々な困難が発生する障害のことです。
発達障害に含まれる多動性障害では、先天的に脳機能の一部に多少の障害があることで日常生活における様々な場面で集中できないなど多彩な症状が現れます。そのために日々の生活においてなにかしらうまくいかずに、自分やその周囲が困る行動を起こします。
多動性障害を抱える本人やその家族たちが、精神科など専門医療機関に相談して障害の特性に応じて学校や職場での過ごし方を工夫することで、本来個性として持っている力を活用しやすくなり、日常生活での困難性を軽減することが期待できます。
「集中できない」ときの正しい対処法は?
集中力を高めるために、まず変えるべきは周囲の環境であり、目の前にある仕事から別のところに意識が飛んで、気が散って集中できないときは、手を数秒間見つめることで自分の意識を制御することが期待できます。
集中できない際に、自らの集中力の無さを非難して自暴自棄になるのは誤った対処法です。
コーヒーに含まれるカフェインをはじめとして、脳の機能を高める物質により集中力が高まる一方で、コンビニでも気軽に買うことのできるエナジードリンクはカフェイン以外にも、大量の砂糖成分が含まれていますので過剰に摂取することはお勧めしません。
音やにおいが気になって集中できない場合には、耳栓をする、自分にとって心地よいアロマオイルなどを活用することで多少は症状が緩和されます。
他人が気になって集中できない場合には、苦手な人と上手に距離を取る工夫をしましょう。
考え事をして集中できない場合は、考えていることを全てノートにまとめておく、定期的に筋トレする、考えるときは立ったり歩いたりして体を動かすなどを実践してみましょう。
症状を緩和させるためにツムラ漢方半夏厚朴湯エキス顆粒などの漢方薬を含めて市販薬を飲んで様子を見ても良いですが、長期間症状が続く、あるいは市販薬の効果が乏しい際には出来るだけ早く専門医療機関を受診しましょう。
脳がエネルギーとする主な栄養素はブドウ糖ですが、ブドウ糖を脳のエネルギーとして十分に活用して集中力を保つためには、ビタミンB群の存在が不可欠だといえます。
特に豚肉やニンニクなどに含まれているビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸などは糖質からのエネルギー生成に使われる栄養素ですのでお勧めです。
早く治したい時や応急処置をしても症状が収まらない場合は、重大な疾患が隠れている可能性が考えられますので、出来るだけ早く専門施設に相談しましょう。
「集中できない」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「集中できない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
集中力が低下してやる気が出ないとき、どう対処すべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
まずは規則正しい生活を送ることを意識しながら、自分なりに適した日々のセルフケアを実施して症状改善を期待しましょう。
集中できず仕事などでミスが増える場合、病気を疑うべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
大人でも子供でも発症する可能性がある注意欠陥多動性障害などの病気を鑑別に挙げる必要がありますので、心配であれば専門医療機関を受診しましょう。
集中できない症状で病院を受診したいときは何科がよいですか?
甲斐沼 孟(医師)
様々な背景や原因疾患が考えられますが、その多くは精神的要素が大きく関連していますので、精神科や心療内科などの医療機関を受診されることをお勧めします。
集中力が続かない・仕事に集中できないのはHSPの症状でしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
集中力が続かずに仕事や作業に支障を呈する場合には、HSPの可能性もあります。症状を自分なりに受け入れて、専門施設でアドバイスを受けて自分なりの工夫を実践できれば通常通りに日常生活を送ることができると思います。
子供が常に気が散って集中できないのはADHDの可能性がありますか?
甲斐沼 孟(医師)
子どもが様々な場面で気が散って集中できない場合には、注意欠陥多動性障害(略称:ADHD)や自閉症スペクトラム障害などを疑います。色々なサポートが必要とされますので、心配であれば専門医療機関を受診しましょう。
まとめ
普段の生活で集中できない症状がよく出現して、仕事や学業などに支障をきたして苦悩される場合があります。
集中力を高めて症状改善するためにはまず規則正しい生活を送って周囲の環境を整備するなどの工夫が重要ですが、身体が不調であっては元も子もありません。
長期的に症状が継続する、あるいはセルフケアだけでは奏功しないケースでは、早期的に精神科など専門医療機関を受診して、適切に相談するように認識しておきましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「集中できない」で考えられる病気と特徴
「集中できない」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
糖尿病内科の病気
集中できないことが仕事や人間関係などにおいて支障を生じることもあります。セルフケアでは改善しない場合、一度専門家へ相談することをお勧めします。
「集中できない」と関連のある症状
「集中できない」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedicalDOCの解説記事をご覧ください。
「集中できない」症状の他に、これらの症状がある場合も「統合失調症」「注意欠陥多動性障害」「HSP」「睡眠障害」「自閉症スペクトラム」「糖尿病」などの疾患の可能性が考えられます。セルフケアでも改善しない場合や、長期間症状が続く場合には、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
・国立国際医療研究センターHP