「久しぶりに着た服で蕁麻疹」になる原因はアレルギー?対処法も医師が解説!


監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
目次 -INDEX-
久しぶりに着た服で蕁麻疹が出る原因
長い期間、タンスやクローゼットに入っていた衣類には、ダニが増殖していたりカビが生えていたりします。衣替えの際に久しぶりに着た服にダニやカビがついていると、アレルゲンとなりアレルギーを引き起こす場合があります。また、衣服の素材自体がアレルゲンとなってアレルギーを引き起こす場合もあるため注意が必要です。ダニやカビなどのアレルゲンが皮膚に接触したり、身体に入ったりするとIgE抗体を介してマスト細胞を活性化し、マスト細胞からヒスタミンが分泌されます。マスト細胞は皮膚の血管周りに多く存在し、マスト細胞から分泌したヒスタミンは血液の血漿を血管外に滲み出しやすくします。血管から滲み出た血漿によって皮膚の一部が盛り上がり蕁麻疹がおこるのです。蕁麻疹の大きさは1〜2mmくらいから、身体全体に広がる大きさのものまでさまざまです。蕁麻疹は出てから数時間以内に消えることがほとんどですが、1日以上続く場合もあります。ダニ・カビによるアレルギー
ダニは押入れの中や収納ケースの中など湿度の高い環境を好みます。衣類を収納しているケース内の湿度が高いとダニが増殖している可能性があります。ダニのアレルギーはダニの虫体・死骸・抜け殻・糞をアレルゲンとして発症するので注意が必要です。カビもダニと同じく湿度の高い環境が大好きです。衣類の収納ケース内の湿度が高いとカビが発生しやすくなります。ダニやカビなどのアレルゲンが身体に入ったり皮膚に接触したりすると、アレルギーになりマスト細胞からヒスタミン分泌が促され、蕁麻疹が生じます。素材によるアレルギー
羊毛や絹など衣類の素材自体をアレルゲンとしてアレルギー性の蕁麻疹を引き起こすケースがあります。半年前は問題なく着ていた服でも、体調や精神状況の変化によって、衣類の素材自体をアレルゲンとして認識してしまうことがあります。また、衣類にはアレルギーをおこしやすいホルムアルデヒドが使用されているものがあるので注意が必要です。ワイシャツやズボンの形態安定加工を施した製品にホルムアルデヒドが使用されています。衣類の素材自体や衣類に残存するホルムアルデヒドがアレルゲンとして認知されると、アレルギーを引き起こし、マスト細胞からヒスタミンが分泌され蕁麻疹を引き起こします。また、化学繊維でできている衣類の場合、化学繊維の接触刺激により蕁麻疹が発生することもあります。久しぶりに着た服で蕁麻疹が出たときの治療法と対処法
久しぶりに着た服で蕁麻疹が出た場合、適切な治療法・対処法を施すことが重要です。以下の治療法と対処法を実践しましょう。・内服薬や外用薬を使用する
・患部を冷やす
・患部をかかないようにする
それぞれ詳しく解説します。
内服薬や外用薬を使用する
ダニ・カビや衣類の素材によるアレルギーが引き起こす蕁麻疹の治療では、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬が用いられます。マスト細胞から分泌されたヒスタミンが血管や神経に働き、血漿が血管から滲み出します。滲み出た血漿が皮膚の下にたまり、蕁麻疹の症状を引き起こすのです。抗ヒスタミン薬はヒスタミンの作用を抑える薬で、蕁麻疹の作用を抑えることができます。抗ヒスタミン薬はドラッグストアで購入できます。購入する際は薬剤師に相談しましょう。抗ヒスタミン薬を内服すると、ヒスタミンの作用を抑え、蕁麻疹を低減させる効果が期待できます。また、医師に処方された内服薬は用法用量を守って飲み続けることが重要です。薬を飲むのを止めると、症状がもとに戻ってしまうケースもあります。一方、ステロイド外用薬を患部に塗る治療法もあります。ステロイド外用薬には蕁麻疹の症状やかゆみを低減させる効果がありますが、副作用も多く長期的な使用は危険です。ステロイド外用薬の症状を改善させる効果は抗ヒスタミン薬よりも低いです。医師による指示のもと、用法用量を守って適切に使用しましょう。患部を冷やす
蕁麻疹が出た患部を冷やすと、かゆみを低減させる効果が期待できます。患部をかいてしまうと蕁麻疹が広がる可能性があります。患部を冷やしてかゆみをなくすと症状改善に効果的です。タオルで包んだ保冷剤などを患部に当てるとよいでしょう。また、蕁麻疹には寒冷刺激が原因でおこる寒冷蕁麻疹もあります。寒冷蕁麻疹では患部を冷やすと蕁麻疹が誘発されてしまうため注意が必要です。患部をかかないようにする
蕁麻疹は接触刺激によってもおこりますので患部をかくと蕁麻疹の症状が悪化してしまう可能性があります。また、患部をかいてしまうと皮膚が傷つくので注意が必要です。蕁麻疹が出たら患部を冷やしてかゆみが引くような対処をするとよいでしょう。また、患部のかゆみを抑える外用薬を使用するのも効果的です。久しぶりに着た服で蕁麻疹が出た場合の受診目安
久しぶりに着た服で蕁麻疹が出てしまった場合、どのタイミングで受診すればよいか迷ってしまいます。蕁麻疹が出た期間や部位などによって適切な受診のタイミングを見極めましょう。1日経過しても治らない
1日経過しても治らない場合、皮膚科を受診しましょう。ダニやカビなどのアレルギー性の蕁麻疹が疑われる場合、血液検査や皮膚を用いた検査を行います。アレルギーの原因物質を調べて蕁麻疹の原因になっている物質を絞ることができます。蕁麻疹の治療は、蕁麻疹の原因物質を取り除くことが有効な手段です。蕁麻疹の原因物質が絞れたら、その原因物質を生活空間から除去しましょう。また、受診して内服薬を処方してもらい、薬を服用して症状を改善するとよいです。処方された内服薬は医師の指示にしたがって飲み続けましょう。受診する前に患部の写真を撮っておくことをおすすめします。蕁麻疹は腫れが出たり引いたりする病気で、1日のなかで夕方から夜にかけて症状が悪化するケースがあります。症状が悪いときの写真を撮っておき、受診時に医師に見せれば正確に診断をする材料になるためおすすめです。1日経過後も蕁麻疹が治らない場合は、医療機関を受診しましょう。全身に蕁麻疹がある
全身に蕁麻疹が現れたり、皮膚だけでなく瞼や唇が腫れたりする場合はすぐに医療機関を受診しましょう。血管性浮腫の疑いがあります。蕁麻疹は皮膚の表面が腫れる症状であるのに対し、血管性浮腫は皮膚や粘膜の深部が腫れます。気道に血管性浮腫が生じると窒息の危険性があるため注意が必要です。そのような症状が現れた場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。久しぶりに着た服で蕁麻疹が出ないようにする予防法
長い間、収納していた服を久しぶりに着たときに蕁麻疹がでないようにするために、以下の予防法があります。・着る前に洗濯や天日干しをする
・通気性のよい場所で保管する
・収納前に洗濯をする
・収納時に防虫剤を入れる
予防策を実践し、久しぶりに着た服による蕁麻疹を防ぎましょう。
着る前に洗濯や天日干しをする
アレルギーを引き起こすダニやカビは洗濯で取り除きましょう。ダニやカビは湿度が高い環境を好み、乾燥には弱いです。ダニやカビは熱や日光にも弱いため、天日干しでダニやカビを取り除くことができます。また、衣類についているホルムアルデヒドは洗濯によって大幅に低減できるので着用前の洗濯が効果的です。衣替えをしたあとの衣類をすぐに着るのではなく、一度洗濯をしてから着ると久しぶりに着た服による蕁麻疹を予防できます。通気性のよい場所で保管する
ダニやカビは湿度が高い環境を好みます。衣類を収納する押入れやタンス、クローゼットの内部は通気性が悪く、湿気が溜まりやすいためダニやカビの生存環境として格好の場所です。押し入れにはスノコを敷いて空気の通り道を作って通気性をよくするとよいでしょう。タンスや収納ケースの内部には乾燥剤を入れて低い湿度を保つのがおすすめです。湿度を60%以下にするとダニやカビの繁殖を抑えることができます。また、生乾きの状態でケース内に収納するとカビが発生しやすいです。ダニやカビが生存しにくい環境で衣類を保管し、衣類によるアレルギー性の蕁麻疹を予防しましょう。収納前に洗濯をする
衣類をケースに収納する前に洗濯をするのも効果的です。衣類に付着するダニやカビを洗濯と天日干しによって除去してから収納し、収納中にダニやカビが増殖するのを抑えましょう。ダニやカビは日光や熱、乾燥に弱いので天日干しが効果的です。また、ケース自体をときどき清掃し、ケースについたダニやカビを除去することもおすすめです。カビは溜まったゴミやホコリから発見されます。ダニの死体や糞なども収納ケースの底に溜まっている可能性があるため、収納ケースを清掃するとダニやカビの除去に効果的です。収納時に防虫剤を入れる
クローゼットや押入れ、衣類の収納ケースに防虫剤を入れておくとダニやカビの増殖を抑えられます。防虫剤から揮発する防虫成分によってダニやカビの増殖を抑えましょう。衣類につくダニやカビを増やさないことで久しぶりに着た服による蕁麻疹を防げます。まとめ
久しぶりに着た服で蕁麻疹になる原因は、衣服についたダニやカビ、衣類の素材自体や繊維についたホルムアルデヒドなどのアレルゲンです。アレルゲンがアレルギー反応を引き起こし、マスト細胞からヒスタミンが分泌されると血管から血漿が滲み出して蕁麻疹ができます。ダニやカビは乾燥に弱いため、長期間保管する際に湿度を低く保てばダニやカビの増殖を抑えられます。ダニやカビ・ホルムアルデヒドを効率よく除去するには、衣類を長期間収納する前後に洗濯と天日干しを行うのがおすすめです。蕁麻疹が1日以上経過しても治らない場合、医療機関を受診しましょう。蕁麻疹は抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬などの内服薬の服用で治療できます。久しぶりに着た服で蕁麻疹が出た場合、適切な対処と治療を行い解決していきましょう。「蕁麻疹」で考えられる病気と特徴
関連する病気
- 血管性浮腫
- 蕁麻疹様血管炎
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