「脇がかゆい」のは「アトピー性皮膚炎」や「肝臓病」が原因?医師が徹底解説!
脇がかゆいとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
丸山 潤(医師)
【保有資格】
医師/医学博士/日本救急医学会救急科専門医/日本集中治療医学会集中治療専門医/DMAT隊員/日本航空医療学会認定指導者(ドクターヘリの指導者資格)/JATECインストラクター/ICLSインストラクター
「脇がかゆい」症状で考えられる病気と対処法
脇がかゆいという症状は、多くの方が経験されているかと思います。しかし、その原因は一時的なものから重大な病気によるものまで多岐にわたります。
本記事ではなぜ脇がかゆくなるのか?その原因と対処法、考えられる病気の例について詳しく解説します。
脇のかゆみにお悩みの方はぜひ参考にしてください。
脇がかゆい症状で考えられる原因と対処法
脇がかゆい症状で考えられる原因はさまざまですが、代表的なものにアトピー性皮膚炎があります。
アレルギー体質の人や、皮膚のバリア機能が弱い人に多く見られる、皮膚の炎症を伴う病気です。
主な症状は湿疹とかゆみで、良くなったり悪くなったりを慢性的に繰り返すのが特徴です。
皮膚のバリア機能異常、かゆみ、アレルギー反応の3つの要素がそれぞれ互いに関連しながら発症する特徴があります。
治療は症状の強さによって異なり、炎症やかゆみを抑える塗り薬や飲み薬、注射や紫外線照射などによる治療、皮膚の清潔さと保湿を目的とするスキンケア、症状を悪化させる原因となるアレルゲンの除去や皮膚への刺激を抑える、といったアプローチを組み合わせて治療を進めます。
皮膚が乾燥してかゆい、湿疹がなかなか治らない場合は適切な診断と治療が必要です。
早めに皮膚科を受診してください。
脇が赤くてかゆい症状で考えられる原因と対処法
脇の下のように皮膚がこすれて摩擦を受ける場所のことを間擦部(かんさつぶ)と言い、その間擦部にできる発疹を間擦疹と呼びます。
間擦疹は摩擦と蒸れによって皮膚が刺激されることで起こり、かゆみ、発赤、皮膚の刺激感といった症状を伴います。
肥満や多汗症の方に多く見られ、季節としては高温多湿の夏に多く発生します。
また、こすれて弱くなった皮膚に菌が感染して起こるカンジダ性間擦疹の場合もあり、用いる治療薬も異なってきますので自己判断はせず皮膚科の診察を受けてください。
脇が黒くてかゆい症状で考えられる原因と対処法
脇毛の処理でカミソリを使った際に皮膚が傷ついてかぶれたり、毛穴に汚れや皮脂が詰まることで毛穴周辺に黒いブツブツが見られたり、かゆみが生じることがあります。
さらに摩擦や炎症が繰り返されると皮膚にメラニン色素が沈着し、脇全体が黒ずんでしまうこともあります。
対処法としては皮膚にかかる刺激を減らすこと、脇の下を清潔に保つことが挙げられます。
アトピー性皮膚炎や脂漏性湿疹などでも脇の黒ずみが生じることがありますので、かゆみ、黒ずみが気になる場合は皮膚科を受診してください。
汗をかくと脇がかゆい症状で考えられる原因と対処法
夏になると、じっとしていても汗が出てきますよね。
汗をかくと脇がかゆい症状で考えられる原因に、あせも、汗かぶれがあります。
あせもは大量に汗をかいた時に、汗を排出する汗管が一時的に詰まってしまい、汗が排出されず皮膚の内側に留まることで生じる赤い発疹のことです。
また、汗かぶれとは汗に含まれるアンモニアや塩分が肌を刺激し、かぶれた状態になることを言い、汗による接触性皮膚炎のことです。
対処法としては、汗をそのまま放置せず、タオルでふき取る、着替える、シャワーを浴びるといった対策をこまめに行うようにしてください。
制汗剤で汗を抑える方も多いかと思いますが、制汗剤に含まれる塩化アルミニウムが皮膚の炎症を引き起こす場合もあります。
あせも、汗かぶれなどの症状が続く場合、かゆみを掻くことで症状が悪化するおそれもありますので、早めに皮膚科を受診してください。
脇がかゆくて臭い症状で考えられる原因と対処法
脇の下には、アポクリン腺という皮膚の一部にしかない特殊な汗腺が多く存在します。
アポクリン腺から分泌される汗はタンパク質や脂質を含んでおり、皮膚の常在菌と混ざって分解される際に強い臭いを放ちます。一般的にワキガと呼ばれる状態です。
また、タンパク質や脂質の多い汗は菌の繁殖に適した環境を作りやすいため、かゆみの原因にもなります。
通気性の良い服で蒸れを防いだり、シャワーやふき取りなどで清潔に保ったりつようにすることが有効な対策となります。
高脂肪な食事や過度な飲酒も体臭が強くなる原因ですので、バランスの良い食生活を心掛けるようにしてください。
日常生活での対処法を講じても症状が改善しない場合や、脇の臭いが生活に支障をきたすようでしたら皮膚科の受診をおすすめします。
冬に脇がかゆい症状で考えられる原因と対処法
冬は空気の乾燥により肌の水分量が少なくなったり、寒さのせいで皮脂を作る力が衰えたりするなどの原因により、皮膚のバリア機能が低下します。皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に弱くなり、
衣服の擦れなどのちょっとした刺激でもかゆみを感じやすくなります。
日頃からクリームなどで保湿するようにして乾燥を防ぐようにしてください。
また、保温性能を謳うインナーに使われている化学繊維は、肌の水分や皮脂を奪ってしまいますので、着用するものの素材にも気を付けてください。
かゆみが続くと湿疹や皮膚炎になることもありますので、ひどくなる前に皮膚科を受診してください。
すぐに病院へ行くべき「脇がかゆい」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
薬を塗っても良くならない場合は、皮膚科へ
皮膚に湿疹や赤い斑点が出てもかゆみが軽い場合などは、とりあえず様子を見るか市販薬を使ってみるという方も多いかと思います。
しかし、自然治癒しない場合や、薬を使用しても症状が治まらない場合は注意が必要です。
パジェット病という皮膚がんの一種は、初期には湿疹や皮膚炎とよく似た症状が起こります。
アポクリン腺という汗腺が多く集まる箇所に発生し、脇の下などに現れるものを乳房外パジェット病、乳房に発生すると乳房パジェット病と呼ばれます。
がんが表皮内にとどまっているうちは転移もなく、手術の予後も良好ですが、発見が遅れるとがんが広い範囲に及び、その分切除する範囲も大きくなります。
そうなると外見や機能の面で障害が起こりやすくなります。
また、複数のリンパ節への転移が起こると、その後内蔵への転移の可能性も高く、内臓に転移した乳房外パジェット病には抗がん剤の効果が期待できないのが現状です。
乳房外パジェット病は発見が遅れやすく、再発の可能性も高いがんですので、疑わしいと思ったらすぐに皮膚科を受診してください。
受診・予防の目安となる「脇がかゆい」ときのセルフチェック法
- 脇がかゆい以外に湿疹がある場合
- 脇がかゆい以外にただれがある場合
- 脇がかゆい以外に発赤がある場合
「脇がかゆい」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「脇がかゆい」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
疥癬
疥癬(かいせん)とは、ヒゼンダニというダニがヒトの皮膚に寄生して起こる病気です。
疥癬には通常疥癬と角化型疥癬があり、症状は通常疥癬で赤いブツブツや疥癬トンネルが生じ、激しいかゆみを伴います。角化型疥癬では皮膚の角質が厚くなり、鱗のような見た目となります。かゆみは人によって異なり、全くかゆみのない場合もあります。
治療にはヒゼンダニを殺すための飲み薬や塗り薬が使われます。塗り薬は塗り残しが無いようにしっかり塗る必要があります。また、かゆみに対してはかゆみ止めの薬が処方されます。
上記のような症状がみられる場合、周りに感染させてしまうこともありますので、できるだけ早く皮膚科を受診してください。
紅斑
紅斑(こうはん)とは、毛細血管の拡張などが原因で皮膚の表面が赤くなる状態を指します。
似たような症状に紫斑や色素沈着がありますが、紅斑には圧迫すると消える特徴があり、判別の際には圧迫を行います。
紅斑の原因は不明なことも多いですが、よくある原因には感染症やニキビ、アレルギー、日焼け、毛の引き抜き、運動などがあります。
そのほか、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患や肝硬変などの内臓疾患が原因のこともあります。
紅斑の対処法は原因によって異なります。思わぬ病気が潜んでいることもありますので、紅斑が現れたらなるべく早めに皮膚科を受診してください。
肝臓病
肝臓病とは、ウイルス感染や生活習慣、薬物などにより肝臓に障害が起こる病気の総称です。
肝臓病にはさまざまな種類がありますが、代表的なものに肝炎、肝硬変、肝がんなどがあります。
肝臓が悪いことで起こる皮膚症状には、赤い斑点を中心にくもの糸状に細い血管が赤く広がって見えるくも状血管腫、手のひらの外周部分に赤みが生じる手掌紅斑があります。どちらもかゆみを伴いません。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、病気になっていても自覚症状が少ないことが多いです。
皮膚症状が見られ、健康診断などで肝臓の数値が悪い場合はすぐに消化器内科を受診してください。
「脇がかゆい」の正しい対処法は?
脇がかゆい時の対処法は、症状によって異なります。
一般的な対処法は、脇を清潔に保つ、保湿を心掛ける、市販のかゆみ止めを使うことなどです。
市販薬に含まれる有効成分は、炎症を抑えるステロイド、神経の働きを抑える局所麻酔剤のリドカイン、それ以外では抗ヒスタミン剤なども有効です。
ステロイドはかゆみ止めに有効ですが、肌の薄い部分やデリケートゾーンには使用しないでください。また、糖尿病や感染症にかかっている方、消化管に障害のある方や妊婦の方は使用しないでください。
市販薬に含まれるステロイドの強さには上限がありますが、それでも連続して使い続けると副作用の恐れがありますので、長くても連続で1週間を超えない範囲で使用するようにしてください。
症状が似ていても原因はそれぞれ異なる場合もありますので、早く治したい方は自己判断せずに皮膚科を受診してください。
「脇がかゆい」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「脇がかゆい」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
脇のかゆみとワキガは関係ありますか?
丸山 潤(医師)
脇のかゆみとワキガは別々の原因で発生する症状であり、直接的な関係はないと言えます。ですが、脇のかゆみを掻きすぎて皮膚が傷ついたり、汗をかいたまま放置したりすると、細菌の増殖や臭いの悪化につながる可能性はあります。
脇がかゆいときは何科の病院を受診したらよいですか?
丸山 潤(医師)
脇がかゆいときは皮膚科を受診してください。皮膚科ではかゆみの原因となる可能性のある病気を診断し、適切な治療を受けることができます。
脇がかゆいのですが、がんなのでしょうか?
丸山 潤(医師)
脇がかゆいというだけでは、がんかどうかの判断はできません。脇のかゆみ以外に乳房にもかゆみを感じる場合や、脇の下にしこりや腫れが生じる、発疹や皮膚の色の変化がみられる、発熱や体重減少の全身症状があるなどの症状を伴う場合は炎症性乳がんやリンパ腫の可能性があります。
気になる症状がある場合は早めに皮膚科を受診してください。
ストレスが原因で脇がかゆくなることはありますか?
丸山 潤(医師)
ストレスが原因で脇がかゆくなることはあります。ストレスは皮膚のバリア機能を低下させたり、かゆみを引き起こすヒスタミンという物質の分泌を増加させたりすることが知られています。また、ストレスによる自律神経の乱れによる汗の分泌異常により、脇の下の皮膚に影響を与え、かゆみの原因となることもあります。
脇のかゆみを抑える市販薬や塗り薬を教えてください。
丸山 潤(医師)
脇のかゆみを抑える市販薬には、かゆみ止めとしてジフェンドラミンなどの抗ヒスタミン薬があります。この薬には、かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑制することでかゆみを軽減する効果があります。塗り薬、飲み薬ともにあり、塗り薬は局所的に、飲み薬は全身に作用します。
また、皮膚の炎症を抑える塗り薬として、プレドニゾロン、ベタメタゾン吉草酸エステルといったステロイド薬や、抗炎症作用のある非ステロイド薬のグリチルリチン酸を含む塗り薬などがあります。
市販薬を用いる場合は薬局の薬剤師に相談し、ご自身の症状や体に合った薬を選んでください。
市販薬で症状が改善されない場合や悪化してしまった場合は早めに皮膚科を受診してください。
まとめ 脇のかゆみはアトピー性皮膚炎の可能性あり
一口に「脇のかゆみ」と言っても、その原因は多岐にわたります。
皮膚に原因のあるものから、場合によっては内臓の疾患が原因であることもあり、かゆみや赤みといった表に出る症状だけで自己判断すると重大な病気を見落としてしまうこともあります。
不快な症状が続く、なかなか治らないといった場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
「脇がかゆい」症状で考えられる病気
「脇がかゆい」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳腺外科の病気
- 乳房パジェット病
血液内科の病気
- リンパ腫
皮膚炎や湿疹であれば症状に合わせた治療で改善が期待できます。しかし、かゆみの他にしこりや発熱、体重の減少などがみられる場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。
「脇がかゆい」に似ている症状・関連する症状
「脇がかゆい」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 乳頭、乳輪がかゆい
- 鼠径部がかゆい
- 首がかゆい
- 膝窩(膝の裏)がかゆい
脇以外の部位にもかゆみを感じる場合、アトピー性皮膚炎や脂漏性湿疹といった皮膚病や、肝臓病、バセドウ病などの臓器疾患の可能性があります。これらの病気はかゆみ以外にも皮膚の発赤やびらん、黄疸や倦怠感、動悸、手の震えなどを引き起こす場合があります。このような症状に思い当たることがあれば、早めに医療機関を受診してください。