「指の腹が腫れる」原因・対処法はご存知ですか?医師が徹底解説!
指の腹の腫れが気になるとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
「指の腹の腫れ」の症状で考えられる病気と対処法
もし自分の指の腹が腫れた場合には、とても心配になりますね。
重大な病気が隠れているか不安を感じる人もいる事でしょう。
今回は、指の腹の腫れ症状で考えられる病気とその対処法を中心に解説していきます。
指の腹が腫れていて痛い症状で考えられる原因と対処法
指の腹が腫れていて痛い症状で考えられる原因疾患として、「関節リウマチ」が挙げられます。関節リウマチは自分自身の体に免疫反応が起こることにより、関節の内面を覆っている滑膜(かつまく)に炎症が起こる自己免疫疾患です。
滑膜に炎症が起こると、滑膜が増殖して周囲の軟骨や骨を溶かし関節に長期間にわたって炎症が起こる結果、関節が破壊されて関節の変形、脱臼、癒合などの障害が現れることがあります。
関節リウマチの治療の原則は基礎療法・薬物療法・リハビリテーション・手術療法です。治療の選択は、病気の重症度・合併症・日常生活の不自由さなどを総合的に判断して行います。
関節リウマチにおける関節破壊は、発症して2年以内に急速進行することが分かっていますので、早めに膠原病内科など専門医療機関に相談して適切に治療してもらうことが重要です。
指の腹が腫れていてかゆいの症状で考えられる原因と対処法
指の腹が腫れていてかゆい症状の場合、考えられる原因疾患として、「ひょうそ」が挙げられます。
爪周囲や指の部分は常に外傷などを受ける危険がある部位であり、爪周囲がささくれなどで傷つくとその隙間から細菌が侵入して、爪周囲部や指部分が赤く腫れる、かゆみや痛みなどの炎症所見を引き起こします。
治療の際には、局所患部の安静、抗生剤内服、患部の消毒、抗菌剤外用での保護が重要です。
指の爪と皮膚の間がひどく痛み、赤く腫れあがっている際には、ひょうそが考えられますので、皮膚科など医療機関を受診するように心がけましょう。
指の腹が腫れていて押すと痛い症状で考えられる原因と対処法
指の腹が腫れていて押すと痛い症状で考えられる原因疾患として、「へバーデン結節」が挙げられます。
へバーデン結節と呼ばれる病気では、親指や人差し指から小指にかけて、第1関節が赤く腫れあがり、変形して曲がってしまう症状を呈します。
また、第1関節の手のうしろ側(背側)に関節を挟んでふたつのコブ(結節性病変)が形成されるのが特徴の一つとされています。
へバーデン結節は、いまだ原因不明の疾患であり中高年齢の女性に比較的頻度が多く認められる病気とされており、手指部の症状のために日常生活に支障をきたして痛み症状がひどくなって心配して医療機関を訪れる患者さんが多いのが実情です。
手指部の変形がひどくなり日常生活に機能的に支障をきたす場合には、手術療法を検討することになります。
指の痛み症状をいつも我慢しておられる人々も大勢おられるようですが、心配であれば一度整形外科など専門クリニックや病院を受診して相談してみてください。
指の腹が腫れていて内出血している症状で考えられる原因と対処法
指の腹が腫れていて内出血している症状で考えられる原因疾患として、「ばね指」が挙げられます。
通常、手の指の手の平側には指を曲げるための「屈筋腱」と呼ばれる組織があり、指に沿って先端の方まで伸びています。この屈筋腱が浮き上がることがないように、靭帯性腱鞘というトンネルの中を通っています。
指の曲げ伸ばし運動は、屈筋腱が靭帯性腱鞘の中をスムーズに移動することによって実行されますが、何らかの原因により屈筋腱に炎症が引き起こされて腫れてしまうと、腱鞘の中をスムーズに移動することができなくなります。
曲げた指を伸ばそうとした時に腫れた部位が腱鞘に引っ掛かって伸ばしにくくなり、さらに無理やり伸ばそうとするとカクンとバネを弾いたような動きをすることから、「ばね指」と呼ばれています。
ばね指の典型的な症状には、指の付け根を押したときに痛みを感じる、指を曲げ伸ばしするときに引っ掛かる、起床時に指がスムーズに動かずに指が曲がったまま伸ばしにくいなどが挙げられます。
症状が軽いうちは患部を休めて安静にすることで、痛みや違和感を取り除くことができますが、明らかに指をスムーズに動かせない場合には、まずは最寄りの整形外科など専門医療機関を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「指の腹の腫れ」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
膿が出ている症状の場合は、皮膚科へ
「ひょうそ」は、指先や爪周囲部などにおいて微細な外傷から生じる細菌感染を伴う化膿性炎症の状態を指しており、主にブドウ球菌による感染が多く、患部は赤く腫れて、痛みを伴って症状が進行すると膿成分が患部に貯まります。
初期段階では、抗生物質を服用して患部に冷湿布を当てて治療しますが、万が一患部に膿が貯留している際には、患部を切開して膿を排出する処置が必要ですので、早急に皮膚科など専門医療機関を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「指の腹の腫れ」のセルフチェック法
- ・指の腹の腫れ以外に指の曲げ伸ばしが難しい症状がある場合
- ・指の腹の腫れ以外に膿が出ている症状がある場合
- ・指の腹の腫れ以外に指が変形している症状がある場合
「指の腹の腫れ」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「指の腹の腫れ」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
へバーデン結節
へバーデン結節とは、手指の第1関節に位置するDIP関節という部分が変形して曲がってしまう原因不明の疾患とされています。
この疾患では、第1関節のうしろ(手背)側の中央付近に2つのコブのような結節所見を認めるのが特徴と言われており、現在ではこの指のふくらみは年齢に伴う変形性関節症であると判明しています。
へバーデン結節は、関節組織の加齢変化を基盤として発症する変形性関節症においても手指部に認められる病変であると言われており、様々な程度の変形所見が認められます。
へバーデン結節における手指関節の保護には、一般的にはテーピングや金属製リングなどが使用されます。
どうしても疼痛症状が強い場合には、漢方や消炎鎮痛剤を服用する、湿布や塗り薬などの外用薬を積極的に使用する、あるいは少量の関節内ステロイド注射といった手段があります。心配であれば、整形外科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
関節リウマチ
関節リウマチは、わが国では人口の約1%程度の方々が罹患すると言われている全身性の自己免疫疾患です。男女比はおよそ1:3であり、男性より女性のほうがかかりやすい病気と言われています。
関節リウマチによる障害によって、滑膜の炎症が慢性化し、患部の痛みや腫れ、そして関節破壊など身体的に構造異常をきたします。その結果として日常生活活動が制限されて、社会活動への参加が難しくなることもあります。
関節リウマチを発症する詳しい原因は解明されていませんが、先天性の遺伝的要因と周辺の環境的要素が複雑に組み合わさっていると考えられています。
発症リスクという観点から環境的要素として重要視されているのは喫煙歴であり、それ以外にも歯周病や慢性呼吸器感染症などの免疫機構が関与していると考えられています。
治療法として最近注目されている生物学的製剤は、免疫機構において重要な役割を果たす炎症性サイトカインという物質に直接的に作用することで、関節リウマチの疾患活動性を抑制する効果が高いという評価がされています。
医療機関などで患者さんが関節リウマチを疑われた際には、血液検査や画像検査を施行して、これらの諸検査結果と自覚的な症状などから総合的に専門医が判断します。心配であれば膠原病内科など専門医療機関に相談しましょう。
ばね指
ピアノ伴奏者や料理人・美容師など手指を使う職業で「ばね指」になりやすいといわれています。近年ではパソコンやスマートフォンの普及により身近な病気になりつつあり、ばね指は日常診療上も良く遭遇する疾患です。
ばね指の原因は、パソコンやピアノの鍵盤を叩く、ゴルフやテニスなどの運動、包丁で野菜を大量に切るなどをきっかけにして指を使い過ぎることです。
これらの動作を繰り返して行うことで腱鞘という部分に負荷がかかり、炎症が引き起こされてそれを繰り返すことによりスムーズに動かすことができなくなります。
ばね指の治療法は症状を改善させる保存療法と、手術により完治を目指す手術療法があり、基本的には保存療法から開始することが多いです。
心配であれば、整形外科など専門医療機関を受診しましょう。
「指の腹の腫れ」の正しい対処法は?
「へバーデン結節」における治療策として、普段から指先に過度な負担が生じることを避ける、指の腫れや熱感があるときには患部を積極的に冷却する、軽くマッサージを行う、あるいは装具などにより関節部の安静を保つことで痛み症状の緩和が期待されます。
また、「ひょうそ」が想定されて軽度の発赤所見や炎症を認める場合は、抗菌剤内服、鎮痛剤服用、患部を清潔に保持して日々消毒を行い、抗菌薬を含有した市販の塗り薬を患部に外用して治療を行います。
その際に、患部の症状を緩和させる市販塗り薬の代表例としては、ゲンタシン軟膏®やロコイド軟膏®などが挙げられます。
患部において発赤所見や炎症を軽度のみ認める場合には、外用薬などを塗って一時的に様子観察することも可能です。
ただし、患部の赤みが強く膿が出て炎症が強い場合は、患部に細菌を密封させて閉じ込めることを避けるため、切開排膿する必要があるので、基本的には市販外用薬を塗ってはいけません。
また、患部を温めると血流が良くなって痛みと腫れがひどくなることが考えられるため、患部を冷やしてクーリングすることがお勧めです。
また、痛み症状が強い際には、ロキソニン錠®など市販薬を内服するのも良いでしょう。
早く治したい時、あるいは応急処置やセルフケアを実施しても症状が収まらない場合は、自己判断だけに頼らずに早急に専門医療機関を受診して相談しましょう。
「指の腹の腫れ」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「指の腹の腫れ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
指の腹が腫れているときは何科に行けばいいですか?
甲斐沼 孟(医師)
指の腹が腫れているときには、ひょうそを疑う際には皮膚科、関節リウマチを疑う際には膠原病内科、ばね指やへバーデン結節を疑う際には整形外科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
指の腹が腫れているのですが対処法を教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
指の腹が腫れている際には、まずは患部を安静にして冷却するなど対処しましょう。セルフケアを実施しても症状が改善しない際には、できるだけ早く専門医療機関を受診することをお勧めします。
手指の腹が腫れて触ると痛いのは病気の可能性がありますか?
甲斐沼 孟(医師)
手指の腹が腫れて触ると痛い時には、関節リウマチやばね指など病気が潜んでいる可能性が否定できません。心配であれば、専門医療機関を受診して症状を伝えましょう。
1本だけ指の腹が腫れてかゆいのですがばい菌が入ったのでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
1本だけ指の腹が腫れてかゆい場合には、指の爪周囲部分からばい菌(細菌)が侵入してひょうそを発症している可能性があります。症状が改善しない際には、早急に皮膚科など専門医療機関を受診して適切に処置してもらいましょう。
まとめ 指の腹の腫れはひょうそなどの可能性あり
指の腹が腫れている場合に考えられる疾患や簡便な対処策などを紹介してきました。
指の腹が腫れて痛い時には、ひょうそや関節リウマチ、へバーデン結節、ばね指などの病気を発症しているかも知れません。
また、痛い症状だけでなく、かゆい、指が変形している、指の曲げ伸ばし動作が難しい、患部から膿が出ているなどの症状があれば、早急に専門医療機関を受診しましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「指の腹の腫れ」症状で考えられる病気
「指の腹の腫れ」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
膠原病内科の病気
整形外科の病気
- ばね指
- へバーデン結節
皮膚科の病気
- ひょうそ
指の腹の腫れという症状から膠原病内科や整形外科、皮膚科の多様な病気が疑われます。症状が続く場合は一度医療機関を受診してみましょう。
「指の腹の腫れ」に似ている症状・関連する症状
「指の腹の腫れ」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 指が曲げ伸ばししにくい
- 膿が出ている
- 指が変形している
- 一本だけ指が腫れる
- 一本だけ指が腫れてかゆい
- 何も刺さってないのにチクチクする
- 指が痛い
- 指 曲げると痛い 第二関節
- 手をグーにすると痛い
- 指先 とげが刺さったような痛み
「指の腹の腫れ」以外にこれらの症状がみられる際も、「関節リウマチ」「ひょうそ」「へバーデン結節」「ばね指」などの疾患が疑われます。症状を複数認める場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
・内科医が知っておきたい高齢者の整形外科疾患(日本内科学会雑誌)