「頭皮を押すと痛い」のは「帯状疱疹」が原因?医師が徹底解説!
頭皮を押すと痛いとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
弓場 智雄 医師
もともと心臓外科を研修していたが、担当した患者さんが集中治療室(ICU)の術後管理で劇的に回復したことをきっかけに麻酔科に転科。専門は集中治療、手術麻酔、ペインクリニック、無痛分娩。研究は酸化ストレス、慢性痛や術後せん妄、無痛分娩など。
「頭皮を押すと痛い」症状で考えられる病気と対処法
頭皮を押すと痛い症状がある場合、主に皮膚の表面の問題の場合と内側(神経や臓器など)の問題の場合があります。以降でそれぞれについて説明し、本文が適切に対応するための手助けになればと思います。
頭皮を押すと痛い症状で考えられる原因と対処法
頭皮を押した時に痛い場合は、その部位に何らかの炎症が起きている可能性があります。炎症とは、傷や細菌感染などがきっかけとなり生体防御反応として起きる生理現象です。この場合の症状の特徴として、刺激が加わらなければ比較的痛みはありませんがなにかが触れたりすると痛みが生じます(ひどい炎症の場合はなにもしなくても痛みが出ます)。炎症を起こす原因を取り除くことが重要です。
また、頭皮は場所的には心臓からみて遠い場所(医学的には“末梢”といいます)にあたり、例えば心臓の機能が落ちる、体温が下がる、脱水になるなどの原因で一番最初に犠牲になる場所です。その場合は頭皮の血流が低下し、その結果それが痛みとして現れることがあります。頭皮の血流が低下する原因に対して適切に対応することが重要です。
最後に、頭皮が痛い場合、実は頭皮自体ではなく頭皮を支配している神経が原因の場合があります。頭皮は主に前側は三叉神経といわれる脳神経、後ろ側は首からくる神経によって支配されています。その神経がなんらかの原因で障害を受けると頭皮に痛みがでます。よくある原因としては帯状疱疹による痛みや後頭神経痛が知られます。この場合の痛みは押すと痛いだけでなく、何もしていない時(特による寝る時など)も痛みが出ることがあります。
以上より、症状としては頭皮の痛みだけであっても、さまざまな原因が考えられ、それによって皮膚科・内科・整形外科・麻酔科(ペインクリニック科)などさまざまな専門科を受診する必要があります。
頭皮が腫れていて押すと痛い症状で考えられる原因と対処法
腫れている場合は、その場所が炎症していると考えられます。頭皮が炎症する場合は、ほとんどが毛穴の炎症です。俗に言う“にきび”で、毛穴に起こる細菌感染です。その大きさで毛包炎→せつ→せつ腫症(せつしゅしょう)→癰(よう)と定義され、自然に治る場合からメスで切開して膿を出す必要がある場合までさまざまです。決してあなどらず、自己流の治療(たとえばにきびを潰すなど)をして悪化させないようにしましょう。どんな炎症であれ、共通していえる対処法としては「炎症部位を清潔に保つ」ことです。病院を受診する場合は皮膚科の先生がおすすめです。
頭皮にできものやしこりがあり押すと痛い症状で考えられる原因と対処法
頭皮にできものやしこりがある場合、怖い病気の場合腫瘍の可能性があります。良性腫瘍としては脂肪腫、悪性の場合は悪性黒色腫などが知られています。どちらもできものやしこりを詳しく観察しないといけませんが、頭皮は髪の毛があるため難しいことが多いです。家族にみてもらい、場合によっては医療機関で診察を受ける必要があります。専門家としては皮膚科の先生が最も適しています。
すぐに病院へ行くべき「頭皮を押すと痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
頭皮を押していなくても痛みがある場合は、皮膚科、内科、ペインクリニック科へ
頭皮を押したときだけでなく、押していない時も痛みがある場合は表面ではなく内側にある神経が原因の可能性があります。神経が原因の痛みの特徴としては、なにもしていない時(特に夜寝る時など)に痛みを強く自覚します。また痛みのある場所自体には特になにも異常がない場合がほとんどですので、見逃される場合も多いです。帯状疱疹や後頭神経痛といった神経に障害を起こす病気が考えられます。神経の傷は皮膚の傷と違って治るのに非常に時間がかかるため、早期発見・早期治療が重要です。この場合は皮膚科や内科、また近所にペインクリニック科がある場合はここもおすすめです。
受診・予防の目安となる「頭皮を押すと痛い」のセルフチェック法
- ・頭皮を押すと痛い以外に運動時の息切れやふらつきがある場合
心臓の機能が落ち、皮膚の血流が低下している可能性があります。また脱水や貧血でも皮膚の血流は低下します。この場合は内科、特に循環器内科をすぐに受診しましょう。
「頭皮を押すと痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「頭皮を押すと痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
粉瘤
粉瘤とは、別名アテローマとも呼ばれ、通常では体の外に剥がれ落ちる角質(俗に言う垢)や皮脂が体の中に溜まる病気です。時間と共に溜まるものが増えるため、病変は徐々に大きくなります。好発部位は顔や首、背中ですが、体のどこでもできる可能性があります。分類としては良性腫瘍になります。自然に治ることもありますが、時には外科的に処置をする必要があります。皮膚にしこりがある場合は、一度皮膚科を受診することをおすすめします。
頭皮悪性腫瘍
悪性黒色腫とは皮膚の癌の一種です。メラノーマとも呼ばれ、皮膚の色と関係するメラノサイトと呼ばれる細胞があるのですが、その細胞が癌化したものです。悪性黒色腫は粘膜などにもできる場合があります。皮膚のシミや腫瘤として体に現れますが、頭皮にできた場合は髪の毛に隠れるため発見が遅れることがあります。悪性黒色腫は癌であるため、早期発見・早期治療が非常に重要です。少しでも疑った場合は専門である皮膚科を受診しましょう。
後頭神経痛
後頭神経痛とは、頭の後ろを支配する神経の異常によって起こる痛みのことです。顔の前側は三叉神経という脳神経によって支配されていますが、後ろは首からきている神経によって支配されています。病気の名前というよりは症状の名前であり、後頭神経痛にはさまざまな原因があります。例えば自動車事故などによるムチウチや、手術の合併症、糖尿病や帯状疱疹などが原因として挙げられますが、その結果頭の後ろの神経が障害されることで発症します。痛みを軽減するためにはまず原因を調べて、内服薬や時には神経ブロック注射などを併用して治療することが重要です。疑った場合は整形外科や内科、ペインクリニック科を受診しましょう。
脂肪腫
脂肪腫とは皮膚の下にできる良性腫瘍の一つです。多くの場合、皮膚のしこりとして自覚されます。ゆっくり時間をかけて大きくなり、時には数センチほどの大きさになることもあります。治療としては、大きい場合は手術で摘出します。この場合も頭皮にできた場合は髪の毛で自分では見ることが難しいため、皮膚科など専門の医師の診察を受ける必要があります。摘出する場合は形成外科の先生が行う場合が多いです。
帯状疱疹
帯状疱疹とは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって皮膚に痛みや発疹が出現する病気です。皮膚の神経は三叉神経と呼ばれる顔の前面を支配する神経や、背骨からでる神経の枝によって身体中をくまなく走っています。その神経にそってウイルスが増殖することにより病気が発症し、さらにウイルスの増殖が落ち着いても神経がダメージを受けることによって皮疹が治っても痛みが続くことがあります。よって理論的には身体中のどこにでも発症し得るのですが、一般的には左右のどちらかに皮疹が出ることが多いです。また頭や顔は神経が敏感であるため、痛みが強くでます。治療としては神経の興奮を抑える作用のある痛み止めや、時には神経ブロック注射などを併用します。皮膚科や内科、ペインクリニック科を受診することをおすすめします。
「頭皮を押すと痛い」ときの正しい対処法は?
まずはあまり押さないようにしましょう。特に痛い場合はマッサージなどをすると悪化する場合があります。痛みを自覚し、それが持続する、さらに痛みが強くなる場合、またしこりなど他の症状も認める場合は速やかに医師に相談することをおすすめします。原因としては上記のように様々であり、それにより最終的に治療にあたる医師の専門は異なりますが、まずはかかりつけ医や近所の内科や皮膚科の先生に相談するといいでしょう。
「頭皮を押すと痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「頭皮を押すと痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
頭皮を押すと痛いときに効くマッサージはありますか?
弓場 智雄 医師
肩こりや首こりから痛みが後頭部に広がり頭皮が痛い場合はマッサージが効果的な場合がありますが、一般的にはおすすめしません。痛みが出る行為は行うべきではありません。
頭皮を押すと痛いときは何科に行けばいいですか?
弓場 智雄 医師
上記のように原因により専門科は異なりますが、まずはかかりつけの内科や皮膚科、痛みの専門科であるペインクリニック科がおすすめです。はじめから正解の専門科に行くことは難しく、必要なら受診した病院から紹介してもらえば大丈夫です。
髪をかきあげると頭皮が痛いのは病気でしょうか?
弓場 智雄 医師
髪の毛は頭皮の毛根に繋がっているため、毛根が痛みの原因の可能性があります。痛みが良くならない場合や強くなる場合はすぐに皮膚科を受診しましょう。
頭皮を押すと痛いのですが薄毛が原因でしょうか。
弓場 智雄 医師
薄毛が原因で頭皮が痛くなることはあまりありませんが、生活習慣やホルモンバランスが乱れて薄毛になる場合、時に痛みを伴うことがあります。薄毛と頭皮の痛みが同時にあるようなら、一度皮膚科の先生に相談しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。痛みがある場合、それは体が発する重大な病気の警告信号である場合があります。特に痛みが続く場合や、痛みが強くなる場合は要注意です。そのような場合は上記に書いたように様々な病気の可能性があるため、放置せず速やかに医療機関を受診することが重要です。病気は予防することが最も大切ですが、その次に大切なのは早期発見・早期治療です。一人で悩まずに一度医療機関を受診することをおすすめします。
「頭皮を押すと痛い」症状で考えられる病気
「頭皮を押すと痛い」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経内科・脳神経外科の病気
押したら痛い症状の原因となる病気は、押さなくても痛みを感じる場合もあります。
「頭皮を押すと痛い」に似ている症状・関連する症状
「頭皮を押すと痛い」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「頭皮を押すと痛い」症状の他にこれらの症状がある場合でも「帯状疱疹」「頭皮悪性腫瘍」「脂肪腫」「後頭神経痛」などの疾患の可能性が考えられます。
早めに治療しないと後遺症として痛みがずっと残ってしまうこともあるため、症状がなかなか改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。