「耳が痛い」原因となる病気・治療方法・対処法はご存知ですか?【医師監修】
耳は日常生活を快適におくる上で、最も重要な機能のひとつです。
耳には音を聞き取る機能以外にも平衡感覚を司る三半規管など、重要な役割を果たす機能が多く存在します。
その耳に痛みや違和感を感じると不安を覚える人も少なくないでしょう。痛みを生じる部分を自分で確認できないことも不安を高める要因かもしれません。
この記事では、耳の痛みの原因となる主要な症状を6つ紹介します。さらに耳が痛いときの対処法やよくある質問まで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
監修医師:
矢富 正徳(医師)
保有免許・資格
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科学会認定指導医
日本睡眠学会認定睡眠専門医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医
耳が痛い原因となる病気
耳に痛みを感じる場合、その多くは病気によるものです。耳の構造は複雑で、病気が発生する場所もさまざまです。そして発症する要因や場所によって、病気の種類も異なります。
ここでは耳に関する病気の中でも、痛みを生じる6つの主要な病気を解説します。子供から大人までよく見られる病気なのでぜひ知っておくと良いでしょう。
外耳炎
耳の入り口から鼓膜に至るまでの部分を「外耳道」といいます。そして、この部分に炎症が起きた状態が外耳炎です。耳かきや触りすぎ、ヘアスプレーの使用などで外耳道の皮膚に傷ができ、その傷口から細菌感染を起こすことで発症します。
外耳炎ではかゆみや痛みを感じることが多く、これらの症状は次第に強くなります。悪化すると白、または黄色の分泌物が耳から出てくることがあり、これが外耳道内に貯まると音が聞こえにくくなります。補聴器やイヤホンの使用時に外耳道を傷つけてしまうため、気を付けましょう。
また清潔に管理していないものを使用すると、外耳炎の発症リスクを高めます。最近はリモートワークなどでイヤホンの利用頻度も高まっているため、注意が必要です。長時間の使用や大きすぎるボリュームも外耳道への影響があるため、イヤホンのつけすぎには気をつけましょう。
外耳道真菌症
外耳道真菌症は、外耳道や鼓膜で真菌(カビ)が繁殖する病気です。
通常、皮膚にはバリア機能があり、菌の増殖は抑えられています。傷ができるなどで皮膚の自浄作用が阻害されてしまうことが主な要因となります。耳かきを使用する際、その先端に空中に浮遊する真菌の胞子が付着し、これが外耳道内で繁殖するケースが多いとされています。
炎症が起きるとかゆみを生じることが多く、さらに耳を触ったり耳かきを使ったりするため、悪化しやすく治りにくい病気です。耳かきの他にも、日常的なイヤホンや補聴器の使用が原因となっていることもあります。
急性中耳炎
耳の入り口から鼓膜までが外耳であるのに対し、鼓膜の奥の部分が中耳です。この中耳に細菌などの病原体が侵入し、感染することで中耳炎を引き起こします。
急性中耳炎は風邪をひいたときに発症することが多く、特に子供がなりやすい病気です。鼻の奥に存在していた細菌が耳管を通って中耳に到達し、感染するケースが多いとされています。大人よりも子供がなりやすい理由は、耳管が短く傾斜も緩やかで細菌が到達しやすいためです。
急性中耳炎は早期治療が大事です。放置すると慢性中耳炎を発症するリスクが高くなります。慢性中耳炎では鼓膜に孔があいた状態になり、難聴を引き起こします。
真珠腫性中耳炎
中耳、つまり鼓膜の内側に鼓膜上皮の一部が入り込み、塊(真珠腫)を形成する病気です。原因は未だ解明されていませんが、真珠腫は骨を溶かす性質があることが分かっています。そのため放置して悪化すると中耳内の骨が溶け、音が聞き取り難くなることもあります。
さらに進展して内耳に到達すると、感音難聴を引き起こす可能性があり、その場合は回復が困難となります。放置せず、早期治療が重要です。
真珠腫には先天性のものと後天性のものがあり、先天性の真珠腫は3歳児健診時など小児の段階で発見されるケースがほとんどです。後天性真珠腫は、多くが学童期以降に発見されます。
鼓膜炎
鼓膜が細菌やウイルスの感染によって炎症を起こしている状態を鼓膜炎といい、急性鼓膜炎と慢性鼓膜炎に分けられます。
急性鼓膜炎は急性中耳炎の一種で、感染により鼓膜表面に小さな水疱ができます。痛みが主な症状ですが、発熱や聞こえにくいなどの症状もあります。鼓膜炎の大部分は急性といわれています。
抗生物質の使用などが主な治療法ですが、痛みが強い場合は水疱の切開も行われます。それに対して慢性鼓膜炎は、鼓膜の一部に炎症性の肉芽(組織の塊)ができ、耳だれが生じることもあります。未だ発症機序が詳しく解明されていません。
リンパ節炎
耳のうしろにあるリンパ節で炎症が起きることがあります。耳の周辺に痛みを感じますが、耳内部の病気ではありません。
耳やくびの周辺にはいくつものリンパ節があり、これらが腫れることを頸部リンパ節腫脹といいます。そのうち、リンパ節に炎症が起きているものがリンパ節炎で、急性リンパ節炎と慢性リンパ節炎に分けられます。
急性リンパ節炎の多くはウイルスや細菌感染によるもので、主な症状は腫れ・痛み・発熱です。抗菌薬の投与などにより、数週間で治ることが多いです。
一方慢性リンパ節炎の主な原因は、慢性咽頭炎や扁桃炎によるもので痛みは伴いません。
また、他の原因として結核性のものもあります。この結核性リンパ節炎に対しては、結核の治療が必要となります。
耳が痛いときの治療方法
耳に痛みを生じる原因はさまざまで、治療法も症状や原因によって変わります。
例えば急性中耳炎が悪化した場合、鼓膜の内側に貯まっている膿を鼓膜切開で排出することがあります。蓄膿により高まった鼓膜内部の圧力を下げ、さらに細菌量を減らすことで薬剤の効果を高めます。
病気が進行すると難聴や神経への影響を及ぼす真珠腫性中耳炎の治療法は、基本的に手術での除去です。この病気に対する有効な薬剤はまだありません。
まだ初期の段階であれば軽い負担で済みますが、遅れるほど悪化するため全身麻酔での手術や長期の経過観察が必要です。早期の治療が重要だといえるでしょう。
耳が痛いときの対処法
耳の中は自分では目視することができません。そのため、痛み・かゆみ・違和感などを感じたら自分で判断せず、医師の診断を受けることが重要です。
長い間放置すると、病気が進行して日常生活に支障をきたす可能性があり、回復不能な難聴などにつながることもあるでしょう。痛みが強い場合は、応急処置として痛い部分を冷やすことで和らげることができます。但し氷を直接皮膚にあてることは止めましょう。解熱鎮痛剤を服用するのもよいでしょう。
また病気を発症する背景には、耳を触る癖やふさわしくない耳かきなどの習慣が影響しているかもしれません。そのような場合は医師から正しい指導を受けることで病気の発症リスクを減らせます。受診時には私生活における痛みの傾向や習慣などを適切に共有することで医師から適切な指導を受けましょう。
まとめ
この記事では、耳が痛い原因となる病気の治療方法・痛いときの対処方法などについて解説しました。
耳の痛みはさまざまな要因で生じますが、自分では対処できない原因も多いです。そのため放置すると症状が悪化し、日常生活に大きな支障を与えることになります。
中には悪化により難聴や神経障害を引き起こす病気もあり、早期発見が何より大切です。
また、ふさわしくない耳かきなど普段から耳の健康によくない習慣を続けていると、内部を傷つけ病気を発症する危険が高まります。そのような習慣を止める必要があるかもしれません。
耳に痛みや違和感を感じたら自己判断せず、医師の診断を受けるようにしましょう。この記事が少しでも参考になれば幸いです。