「泣くと過呼吸になる」のは何のサイン?考えられる病気を医師が徹底解説!

泣くと過呼吸になる時、身体はどんなサインを発している?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
「泣くと過呼吸になる」症状で考えられる病気と対処法
一般的に、泣くことは、理性ではコントロールしきれなかった大きな感情の揺れを身体が受け止める行為です。また、過呼吸とは、不安感の強い人や神経質な人に起こりやすいと言われていて、極度の緊張や不安な状態により速い呼吸を繰り返します。過呼吸は、パニック障害などの疾患に随伴して生じることがあり、主に手足のしびれやけいれん、全身の硬直などの症状が引き起こされます。今回は、「泣くと過呼吸になる」症状で考えられる病気と対処法について、説明します。
小学生で泣くと過呼吸になる症状で考えられる原因と対処法
小学生で泣くと過呼吸になる症状で考えられる原因疾患としては、「小児てんかん発作」が挙げられます。一般的に、18歳までの患者さんのてんかんを小児てんかんと呼んでいて、小児てんかんには色々な種類・症状がみられます。
小児てんかんは、生まれた時の脳の損傷や先天性代謝異常、先天性奇形が原因で起こるてんかんが多く、乳幼児期に発病する頻度が高いとされています。小児てんかん全体では原因不明のてんかんが多く、発病は生後から3歳までと学童期に起こりやすいことが知られています。小児てんかんは比較的治る可能性の高い病気であり、特別な治療が不要な場合もあります。多くの場合は正確な診断のうえで、抗てんかん薬の服用や外科手術など、適切な治療によって発作を起こさずにコントロールして、日常生活を送ることができます。心配であれば、脳神経内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
中高生で泣くと過呼吸になる症状で考えられる原因と対処法
中高生で泣くと過呼吸になる症状で考えられる原因疾患としては、「解離性障害」が挙げられます。解離性障害とは、意識や記憶などに関する感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。主に、意識、記憶、思考、感情、知覚、行動、身体イメージなどが自分の中で分断されて感じられて、特定の場面や時間の記憶が抜け落ちる、あるいは過酷な記憶や感情が突然目の前の現実のようによみがえって体験する(フラッシュバック)などの症状が見受けられます。また、自分の身体から抜け出して離れた場所から自分の身体を見ている感じに陥る体外離脱体験をすることがあります。
自覚症状が深刻で、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害と呼んでいて、この場合には、薬物療法を含めて心療内科など専門医療機関を受診して相談する必要があります。
泣くと過呼吸になりパニックになる症状で考えられる原因と対処法
泣くと過呼吸になりパニックになる症状で考えられる原因疾患としては、「パニック障害」が挙げられます。パニック障害は決して珍しい疾患ではなく、一生の間にパニック障害を罹患する人は100人中に2~3人と報告されています。また、症状の再発率は50%以上と高く、一般的には男性よりも女性に発症しやすいと言われています。パニック障害では、突然に誘因やきっかけもなく、動悸やめまい症状を自覚して、発汗や窒息感、あるいは吐き気や手足の震えといった症状発作を伴うがゆえに生活や仕事に明らかな支障をきたします。パニック障害の根本的な治療は、薬物療法が中心となっており、薬物による治療の主目的としては、パニック発作をなるべく起こさないことを第一目標としており、並行して予期不安や広場恐怖といった症状も極力緩和して軽減させることを掲げています。薬物療法においては、主に選択的セロトニン再取込み阻害薬が用いられますし、抗不安作用を有する安定剤も比較的副作用が少なくしばしば使用されます。心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
泣くと過呼吸になり、吐き気がある症状で考えられる原因と対処法
泣くと過呼吸になり、吐き気がある症状で考えられる原因疾患としては、「心房細動」が挙げられます。
心房細動と呼ばれる不整脈は、心房内に流れる電気信号の乱れが原因となって心房が細かく震えるために心臓内の血液をうまく心室などに送り出せなくなる疾患です。
一般的に、心臓は一定のリズムとペースで壁運動をすることで全身に血液を送り出しており、規則正しく心臓の各箇所が収縮運動をするためには、心臓を構成している右心房という部屋にある洞結節と呼ばれる部位から規則正しく電気信号が発信される必要があります。
ところが、心房細動は、洞結節以外からも異常な電気信号が発生し、心房内をめぐる電気信号がイレギュラーに乱れることで心房自身が細かく震えるように動いてしまいます。
心房細動は年齢を重ねるごとに罹患しやすい傾向があり、高齢者で多くみられることが知られています。
また、それ以外にも心臓弁膜症、心筋症、狭心症などの虚血性心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症などの基礎疾患を有していると引き起こされやすいと伝えられています。
心房細動に対しては、薬物治療やカテーテルアブレーション療法などが検討されます。
心配であれば、循環器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
泣くと過呼吸になり止まらない症状で考えられる原因と対処法
泣くと過呼吸になり、止まらない症状で考えられる原因疾患としては、「気管支喘息」が挙げられます。
気管支喘息とは、空気の通り道である気管支や気道の領域で慢性的に繰り返して炎症反応を引き起こすことによって気管支が物理的に狭くなり、呼吸をする際にゼーゼーといった喘鳴を認めて呼吸困難などの症状が生じる疾患です。
気管支喘息では、好酸球が気道に集簇すると、気道の表面を覆っている細胞がはがれ落ちて周囲細胞を過剰に遊走させるサイトカインと呼ばれる物質が放出される結果として、気道領域が様々な刺激に過敏反応して呼吸器症状が出現しやすくなると言われています。
喘息に対する治療策は、通常の気管支喘息と同様に吸入ステロイド薬が用いられます。
現実的には、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬を一度に吸入できる合剤が、作用機序効果と即効性の観点から喘息の標準的な治療薬として実用されています。
気管支喘息など喘息疾患の治療においては、吸入ステロイド薬などによる維持療法を2年程度かけて継続する治療方法が推奨されています。
心配であれば、呼吸器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
すぐに病院へ行くべき「泣くと過呼吸になる」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
泣くと過呼吸になるのに伴って、脳梗塞を疑う症状を認める場合は、脳卒中センターへ
泣くと過呼吸になる原因が心房細動の場合、心房細動に伴って、心房内に血栓を形成し、その心房内の血栓は血流に乗って全身へ飛ばされる恐れがあるため、脳梗塞の発症リスクも上昇すると考えられています。
心臓の中に出来た血液の塊が時に遊離して、不幸にも脳の動脈の方に流れていってしまうせいで脳の血管が詰まって閉塞してしまうことが原因で起こる脳梗塞のことを特に心原性脳塞栓症と呼んでいます。
このような危険な不整脈と考えられる心房細動があると、毎年約5%の方に脳梗塞が起こると言われています。
万が一、普段の生活で泣くと過呼吸になるのに伴って、脳梗塞を疑う症状が出現した際には、心房細動がないかどうか医療機関で詳しく調べてもらうとともに、脳卒中センターを受診して、脳梗塞に対する適切な診断や治療につなげましょう。
受診・予防の目安となる「泣くと過呼吸になる」ときのセルフチェック法
・動悸がある場合
・けいれんがある場合
・嘔気がある場合
「泣くと過呼吸になる」症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「泣くと過呼吸になる」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
気管支喘息
気管支喘息は、空気の通り道である気管支(気道)が慢性的に炎症を繰り返して、気管支が狭くなり、呼吸時にゼーゼーといった音が聞こえる喘鳴(ぜんめい)を聴取して、呼吸困難や呼吸苦などの症状が生じる状態です。
主な発症年齢は、幼児期と40~60歳代に2つのピークがあります。小児喘息の多くは思春期の頃には症状が改善することが多いですが、そのうちの約30%は成人喘息に移行します。気管支喘息に伴う症状は、軽症の部類から適切な処置が行われないと命に直結するような重度のタイプまでさまざまです。代表的な治療方法としては、発作の頻度が少なく症状も軽い場合には、気管支拡張薬を使用しますが、発作の頻度が多く、夜間の睡眠中などにおいても度々喘息発作が生じる際には、ステロイドなどの治療薬を積極的に使用して炎症を鎮める治療手段を講じることもあります。心配であれば、呼吸器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
パニック障害(パニック症)
パニック障害は、主にパニック発作が起きる、予期不安が続く、広場恐怖を感じるといった主要症状を呈する病気です。生涯にわたる罹患率がおよそ数パーセントであり決して稀有な疾患ではありません。パニック障害とは、一言で説明すると「予期しないパニック発作が繰り返して生じ、再度発作が起きるのではないかという不安を払拭して、発作を回避するような言動をとることが1ヶ月以上もの期間を通じて持続する」という状態を指します。パニック障害では、多種多様な身体症状を発作的に繰り返すために、当人は内科のみならず他の診療科を受診するケースが多いですが、常に適切な診断がなされるとは限らずにその結果として適切な治療の介入が遅れてしまうこともしばしば存在します。
心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
解離性障害(解離症)
解離性障害は、思考や記憶、周囲の環境や身体的なイメージなど、本来は一人の人間の中で、ひとつのつながりとして自覚されるべきものが、それぞれ分断されて体験されるように感じる障害のことです。
解離性障害の場合には、あるときの出来事がごっそりと抜けて思い出せなくなる、予期せぬ場所に無意識に行ってしまう、などの症状がみられて、日常生活にも大きな支障をきたします。発症の要因としては、幼い頃の虐待、強い過去のトラウマやショックなど、心的に深い傷を残すような出来事やイベントが関わっているため、主な治療法としては、精神療法や心理療法が行われます。
心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
てんかん発作
てんかん発作は、主に脳の病気であり、年齢、性別、人種の関係なく発病します。世界保健機関(WHO)では、てんかんは「脳の慢性疾患」であると認識されています。発症様式としては、脳の神経細胞(ニューロン)に突然発生する激しい電気的な興奮により繰り返す発作を特徴とします。生涯を通じて1回でも発作を経験する人は人口の約10%といわれていて、本邦では約100万人のてんかん患者が存在すると報告されています。てんかん発作は、大脳の電気的な興奮が発生する場所によって様々ですが、発作の症状は患者さんごとにほぼ一定で、同じ発作が繰り返して起こります。また、高齢者では、脳血管障害などを原因とする発病が増加すると考えられています。心配であれば、脳神経内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
心房細動
我が国のおよそ2%弱の人が心房細動という不整脈を患っていると推定されており、本疾患の患者さんは加齢に伴って増えることが知られていて、特に80歳以上の男性ではその罹患率はおおむね10%以上と言われています。不整脈の一種である心房細動は、本来は一定リズムの電気活動で拍動している心房部分が、無秩序に痙攣するために、正常の規則的な脈リズムではなく、不規則な脈になってしまうことで動悸やめまいなどの自覚症状が出現することも往々にしてあります。近年では高齢者を中心に、知らないうちに心房細動と呼ばれる不整脈を罹患している方が増えており、この不整脈を患うと心臓の中に血液の塊が出来やすくなります。心配であれば、循環器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
「泣くと過呼吸になる」の正しい対処法は?
泣くと過呼吸になる原因が心房細動の場合、心房細動の状態が長期に渡って継続されると、自然と動悸や息切れなどの症状が悪化して日常生活に支障が出るようになりますし、脳梗塞や全身性塞栓症などを中心としたさらに重篤な合併症を引き起こしてしまう恐れがあります。心房細動を疑う症状に該当する場合には自分の脈を実際にとってみることで、不整脈を自覚しているタイミングでの脈拍状態が冷静に判断できます。また、定期的に脈をとっていると無症状の時でも稀に本疾患を認めることがあり正確な診断に役立つこともあります。心房細動の場合には、無症状のケースでも脳梗塞を合併する危険性が他の不整脈に比べて高いことが懸念されていますので、個々の症例に関して脳梗塞を予防するための抗血栓薬あるいは抗凝固薬の処方適応を検討されることもあります。泣くと過呼吸になる原因がパニック障害の場合、はじめの頃は発作に対して過大な心配をしてくれていた家族及び友人や職場の同僚たちも、医療機関で調べた結果で体のどこにも異常がないと判明すればだんだん理解されなくなってきます。パニック障害では基本的にパニック発作を何度も繰り返す経過をたどり、本人は発作が苦しくて不安に苛まれているのに、誰からも理解されず協力してもらえないことは大変つらいことですので、実際にパニック障害に陥った時の対処法を知っておく必要があります。パニック障害に対する治療において、薬物効果は人によって個人差があり個々のケースによってその作用結果も異なるため、逐一効果を確認しながらその都度、薬の内服量を増減したり変更したりして適宜調整していく必要があります。
自分にとって正しく薬剤の効果を確認するためには、かかりつけの専門医が指示したとおりの用法と用量を遵守して服用するように心がけましょう。万が一にも薬を服用することや治療内容に少しでも不安や疑問を感じる場合には、遠慮せずに担当専門医師に相談するようにしましょう。
「泣くと過呼吸になる」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「泣くと過呼吸になる」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
泣くと過呼吸になりヒクヒクするのはなぜですか?
甲斐沼 孟(医師)
泣くと過呼吸になりヒクヒクする原因としては、パニック障害が考えられます。パニック障害とは、予期しない突然の強い恐怖や不快感の高まりが生じて、動悸や吐き気、手のふるえ、めまいなどの症状を繰り返す病気のことです。心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診して、薬物治療なども含めて相談しましょう。
泣くと過呼吸になる原因は何でしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
不安や緊張などで泣いて、何度も息を激しく吸ったり吐いたりすると、過呼吸の状態となります。主に、体内にある二酸化炭素が放出されて、炭酸ガス濃度が低くなることで本来は中性であるはずの血液がアルカリ性に偏り、過呼吸発作を生じると考えられます。心配であれば、心療内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。
泣くと過呼吸になり止まらない時はどうしたらいいでしょうか?
甲斐沼 孟(医師)
泣くと過呼吸になり、発作が止まらない時は気管支喘息などを疑います。気管支喘息の治療では、気道の慢性炎症を抑えて、いかに発作が起きないような状態にコントロールできるかが重要なカギとなります。心配であれば、呼吸器内科など専門医療機関を受診しましょう。
まとめ
誰しも不安が強くなってくると、「何だか息苦しい」と感じて、その状態がエスカレートして、息苦しさを自分でコントロールできなくなってしまうと過呼吸の状態になります。
吸っても吸っても息苦しさが改善せず、身体にも様々な症状が現れて日常生活に支障をきたすようになります。様々な疾患が隠れている可能性がありますので、心配であれば、専門医療機関を受診して、適切に相談しましょう。
今回の情報が参考になれば幸いです。
「泣くと過呼吸になる」症状で考えられる病気
「泣くと過呼吸になる」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器内科の病気
- 心房細動
心療内科の病気
- パニック障害
- 解離性障害
呼吸器内科の病気
脳神経内科の病気
- てんかん発作
心療内科や精神科領域の病気の症状だけではなく、全身の病気でも起こりうる症状であることには注意しておきましょう。
「泣くと過呼吸になる」に似ている症状・関連する症状
「泣くと過呼吸になる」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 動悸がする
- けいれんを認める
- 吐き気がする
- 手足のしびれ
- 全身の硬直
不安感が強くなることで自分自身でコントロールできなくなってしまい、さまざまな症状を生じてしまうことがあります。
・一般社団法人日本呼吸器学会HP:咳嗽に関するガイドライン第2版



