「ストレス性の下痢」は放置すると危ない?特徴と治し方のポイントも医師が解説!


監修医師:
関口 雅則(医師)
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浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。
目次 -INDEX-
「ストレスによる下痢」の症状で考えられる病気と対処法
ストレスは消化管の運動や自律神経の働きを乱し、腸のぜん動運動の亢進や吸収障害により下痢症状を引き起こします。この症状は「過敏性腸症候群(IBS)」や「自律神経失調症」「ストレス性胃腸炎」など機能性疾患でも起こり得ます。しかし、なかには器質的疾患(大腸炎・ウイルス性胃腸炎・大腸がん等)が背景にある場合もあるので注意が必要です。ストレスと下痢の症状で考えられる原因と治し方
ストレスからくる下痢の特徴としては、腹痛や不快感を伴い、泥状または水様の便が短期的もしくは断続的に続くことが挙げられます。特に、会議や緊張などの場面で症状が現れることが多く、排便後に軽快する場合も少なくありません。また、下痢と便秘を交互に繰り返すケースも見受けられます。 症状が現れた際にまず試してほしい対処法としては、水分補給と安静があります。経口補水液やお茶、白湯などで脱水を防ぎつつ、消化に良いお粥やうどん、バナナを摂ることで腸への負担を軽減できます。一方、冷たすぎる飲み物、脂っこい食事や刺激物、乳製品は控えるよう心がけましょう。さらに、深呼吸や軽いストレッチなどのリラックス法も症状の緩和に有効です。このような症状の背景には、過敏性腸症候群(IBS)や自律神経失調症、ストレス性胃腸炎などが考えられます。まれにウイルス性腸炎や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)が原因となっている場合もあるため、注意が必要です。 受診の際は消化器内科や胃腸科が基本となりますが、血便や発熱、夜間に症状が強くなる場合、急激に体重が減るような場合や3日以上下痢が続く場合は早めの受診が推奨されます。ストレスによる下痢と嘔吐の症状で考えられる原因と治し方
ストレスによって下痢が現れる際に、同時に吐き気や嘔吐も感じることがあります。このような場合、腹痛と下痢に加えて食事や水分の摂取自体が困難になることも少なくありません。症状が強いときには、無理に食事を摂ろうとせず、まずはこまめな水分補給を心がけてください。経口補水液やスポーツドリンクなどを少しずつ摂り、脱水を防ぐことが重要です。嘔吐が激しい場合には絶食し、症状が落ち着いてから消化に負担の少ない食事を再開しましょう。これらの症状の原因としては、ストレス性胃腸炎やウイルス性胃腸炎、過敏性腸症候群が考えられます。まれに虚血性腸炎や大腸がんといった重篤な疾患が背景にある場合もありますので、注意が必要です。 受診の際には、消化器内科あるいは内科を選択するとよいでしょう。特に嘔吐が急激で水分摂取が困難な場合は、脱水のリスクが高いため、早急に医療機関を受診してください。また、発熱や血便、激しい腹痛を伴う場合には、速やかに医師に相談することが重要です。ストレスによる下痢と胃腸炎の症状で考えられる原因と対処法
ストレスによる下痢に加え、腹痛や嘔吐、発熱、食欲不振などの胃腸炎症状が同時に見られる場合は、ウイルス性胃腸炎が主な原因として考えられます。このような症状が現れた際には、吐き気や発熱がある場合は無理に食事をするのは避け、少量ずつこまめに水分補給を行うことが大切です。体力が落ちやすいため、安静に過ごし、症状が良くなってきたら消化の良い食品を選んで摂取するようにしましょう。原因としてはウイルス性胃腸炎が多いですが、まれに炎症性腸疾患や細菌による消化管感染症などが背景にある場合もあります。 受診する際は消化器内科や内科を選び、特に高熱、血便、意識障害、強い嘔吐や水分摂取が困難な場合は、早急に医療機関を受診してください。器質的疾患を除外するために血液検査や便検査、腹部画像診断などの検査が必要になることもありますので、しっかり症状を伝えることが重要です。ストレスによる下痢と体重減少の症状で考えられる原因と対処法
ストレスが原因の下痢が長引き、「自然に痩せた」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしこれは、医学的には「体重減少」とされ、栄養障害や慢性疾患が潜んでいる可能性があります。とくに炎症性腸疾患や大腸がんなど深刻な病気が原因となることもあるため、注意が必要です。対策としては、まず消化吸収の良い食品を摂ることが重要です。例えば、お粥や煮野菜、ヨーグルトなどを積極的に選び、定期的に体重や水分摂取量を確認するようにしましょう。また、医師の指導がない限り、自己判断でダイエットを始めたり、極端な食事制限をしたりするのは避けてください。 考えられる病気としては、過敏性腸症候群のほか、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、また大腸がんなどが挙げられます。長期にわたるストレスが食欲不振や栄養障害につながる例もあります。このような場合、消化器内科や総合内科への受診が勧められます。特に急激な体重減少や、全身の倦怠感や血便がある場合は早急な受診が必要です。食事摂取ができない、脱水や栄養障害が懸念される際にも、速やかに医療機関を受診しましょう。なぜストレスがたまると胃腸に影響がでるのか?
ストレスは自律神経のバランスを崩し、胃や腸の運動と分泌に大きな影響を及ぼします。具体的には、脳のストレス刺激が交感神経・副交感神経を介して、胃腸のぜん動運動や胃酸分泌、腸の働きに伝わります。結果として、痛みや不快感、胸焼け、下痢、便秘などさまざまな不調を引き起こします。また、ストレスで腸内環境(善玉菌・悪玉菌のバランス)が崩れたり、免疫力が落ちたりするため、感染症や機能性疾患を発症・増悪しやすくなります。過敏性腸症候群やストレス性胃腸炎はその典型例です。すぐに病院へ行くべき「ストレスによる下痢」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。ストレスによる下痢と重い症状の場合は、消化器内科・内科へ
ストレス性の下痢に加えて、激しい腹痛・高熱・血便・黒色便・脱水・吐き気・体重減少などが見られる場合は、医療機関を受診しましょう。機能性の病気だけでなく、感染症や炎症性腸疾患、まれに大腸がんが関与している可能性もあります。下痢が1週間以上続く場合、1日10回以上の排便やトイレから出られないほど症状が強い場合も、緊急受診の対象です。受診時は症状発生の時期・回数・便の形状・食事内容・服用中の薬などをメモして伝えると診断がスムーズです。病院受診・予防の目安となる「ストレスによる下痢」のときのセルフチェック法
・強い腹痛、発熱、血便、黒色便、脱水症状がみられる場合・ストレスが強く、精神的な不調(不眠・不安感など)も続いている場合
・下痢が3日以上から1週間以上続く場合
・急な体重減少・食欲低下がある場合
・日常生活に支障をきたしている場合
これらの状態では自己判断せず、早めに消化器内科・内科を受診しましょう。医師は必要に応じて血液検査や便検査、腹部の画像診断などを行い、感染症や治療が必要な疾患がないか慎重に調べます。
「ストレスによる下痢」の症状が特徴的な病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「ストレスによる下痢」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群は、強い緊張・不安・ストレスなどが引き金となり、腸管の運動異常を引き起こして、下痢・便秘・腹痛などを慢性的に繰り返す疾患です。突然の便意や腹痛を感じやすく、外出や会議の直前など精神的に負担のかかる状況で発症しやすい特徴があります。腹痛は排便後に軽快することが多く、他の臓器症状(例:吐き気、頭痛、不眠)が現れることもあります。 治療の基本は生活習慣の改善・食事療法・薬物治療の3本柱です。消化に良い食事(低FODMAP食)、規則正しい睡眠、適度な運動などを心がけ、症状に応じて腸の働きを整える薬や整腸剤を使用します。心理的な負担が強い場合は、認知行動療法や抗不安薬の処方も有効です。 受診の目安は、「1週間以上症状が続く」「血便・体重減少・激しい痛みを伴う」「市販薬で改善しない」場合などであり、消化器内科または内科で診断と治療が可能です。自律神経失調症
自律神経失調症は、精神的・身体的なストレスによって自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが乱れ、消化器症状を中心に全身の様々な不調が現れる病気です。強いストレスや睡眠不足、過労が引き金となり、腸の動きが不安定になって下痢や便秘を繰り返すのが特徴です。主な症状は腹痛・下痢・便秘・動悸・発汗・不眠・疲れやすさなどです。精神的な症状として「不安感」「気分の落ち込み」が加わることもあります。 治療はストレス緩和と生活習慣の見直しが基本です。質の良い睡眠(7~8時間推奨)、定期的な適度な運動、バランスの良い食事、趣味やリラックス法を取り入れることで自律神経を整えます。必要に応じて消化器症状の薬や抗不安薬を処方します。 病院受診の目安は「症状が1~2週間以上続く」「日常生活に支障を来している」「精神的な不調が強い」場合などで、まず内科や消化器内科を受診し、専門的な治療が必要な場合は心療内科や精神科への紹介も行われます。ストレス性胃腸炎
ストレス性胃腸炎は、強い精神的・身体的ストレスが胃腸粘膜に影響して炎症が生じ、腹痛・下痢・吐き気・食欲低下・みぞおちの不快感などの症状を引き起こす疾患です。症状が長期間続く場合や、激しい痛み、急な体重減少・持続する食欲不振などがあれば注意が必要です。まれに「嘔吐・血便・黒色便」「強い脱水症状」も起こります。 治療は薬物療法と生活習慣の改善が中心です。医師の診断で消化管運動機能改善薬や胃酸分泌抑制薬、抗不安薬、漢方薬などが処方されます。根本的なストレス対策が治療の要となり、十分な休養、ストレス源の把握と解消、バランスの良い食事・規則正しい睡眠・適度な運動が重要です。 病院に行くべき目安は「数日~1週間以上症状が続く」「痛みが強い」「日常生活に支障が出ている」「体重減少や食欲不振が続く」場合などです。まず消化器内科や内科で受診し、必要があれば心療内科・精神科の受診も検討します。「ストレスによる下痢」の正しい対処法は?
ストレスが原因で下痢を起こすときは、根本原因へのアプローチとともに、適切な対処法を知っておくことが大切です。市販薬の使用や食事管理、生活習慣の見直しなど、正しいセルフケアで症状改善を目指しましょう。ストレスによる下痢で、市販の下痢止めを飲んで良いのか
ストレスが主な原因で突発的な下痢が生じた場合、市販の下痢止め薬を服用すること自体は可能です。ただし、発熱や血便、激しい腹痛、または明らかな食中毒・感染性胃腸炎が疑われる場合は、市販薬を自己判断で使わず必ず医療機関を受診してください。 症状を緩和する市販薬には、即効性のある下痢止め薬であるロペラミド(ストッパ下痢止めEXなど)、乳酸菌・ビフィズス菌(新ビオフェルミンS・ラックビーなど)といった整腸剤、半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)や胃苓湯(イレイトウ)などの漢方薬があります。 下痢止め薬の使用は「一時的な外出時」や「精神的緊張による急な症状」に限定し、連用や多用は避けましょう。また、服用は用法用量を必ず守り、異常があればすぐに服用を中止し医師に相談してください。ストレスによる下痢の症状で、おすすめの食事や飲み物
下痢の時にはまず脱水予防を心がけ、経口補水液、麦茶、白湯などカフェインレスかつ体を冷やしにくい飲み物を少量ずつこまめに摂るのが理想的です。食事は消化の良いお粥、うどん、白身魚、豆腐、鶏ささみ、バナナ、りんご、ヨーグルトなどがおすすめで、特に乳酸菌やビフィズス菌を含む食品・整腸剤の活用も腸内環境改善に役立ちます。 反対に脂っこい料理・刺激物・アルコール・カフェイン、乳製品(乳糖不耐がある場合)、炭酸飲料などは下痢を悪化させる可能性があるため避けてください。ストレスによる下痢の症状を早く治したい場合
最も大切なのは、十分な休息と7〜8時間ほどの質の良い睡眠をとることです。暴飲暴食を避け、無理に食事を摂らず腸に負担をかけないようにすることもポイントです。お腹を冷やさないよう腹巻きやカイロで腹部をあたため、深呼吸や軽いストレッチ、散歩、趣味に取り組むなどして自律神経のバランスを整えてあげるのも有効です。 こころと体をしっかり休めることで自然治癒力が働き、症状の回復を早めやすくなります。もし症状がなかなか治まらない場合や、体調悪化をともなう場合は、早期に受診して医師のアドバイスを受けましょう。「ストレスによる下痢」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「ストレスによる下痢」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
仕事の緊張や不安でお腹を壊しやすいです。内科で治療できますか?
関口 雅則医師
ストレスで下痢や腹痛が生じる場合、内科または消化器内科で治療が可能です。病気の背景に過敏性腸症候群(IBS)や自律神経失調症、ストレス性胃腸炎などが隠れていることが多いですが、これらは症状や生活背景から総合的に診断されます。まずは生活習慣の見直しやストレスマネジメント指導を行い、必要に応じて整腸剤・下痢止め・安定剤などの処方や、心療内科・精神科と連携した治療が受けられます。
ストレスによる下痢の治し方はどうしたら良いでしょうか?
関口 雅則医師
まずはストレスの原因となる環境や出来事への対策を考え、生活リズムの安定(十分な睡眠や三食のバランスの良い食事)、適度な運動やリラクゼーションを意識することが大切です。症状の悪化を感じるときは、消化によい食べ物を選び、水分と休息を優先しましょう。症状が強い場合は整腸剤や一時的な下痢止めの活用も有効ですが、血便や高熱、体重減少など他の症状を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
ストレスで下痢になった場合、何日ぐらいで治りますか?
関口 雅則医師
ストレス由来の軽い下痢なら、充分な休養や環境の見直しによって2日程度で回復することが多いとされています。一方で、ストレスが続いていれば症状も再発しやすいため、根本的なストレス対策が重要になります。また、数日休養しても改善せず、長引く場合は慢性化のサインか別疾患の可能性があるため、早めに医師へ相談することをおすすめします。
まとめ ストレスによる下痢は生活改善と早期対応が重要
ストレスによる下痢は、生活の質(QOL)を大きく損なうだけでなく、体調悪化やほかの症状(下腹部痛、全身の倦怠感、集中力の低下など)も招きやすいため、単なる一過性のトラブルと見過ごさず早期対応がとても大切です。 下痢が続く場合や強い腹痛・血便・高熱などの重い症状がある場合は、重大な疾患のサインや、脱水・低栄養などのリスクを伴うこともあるため、自己判断で放置せず必ず早めに医療機関を受診してください。 ストレス性下痢を改善するためには、規則正しい生活とバランスの取れた食事、そして適度な運動や質の良い睡眠など、生活全体を見直すことが重要です。無理をせず「心と体を労る」ことが、根本的な改善への第一歩となります。「ストレスによる下痢」症状で考えられる病気
「ストレスによる下痢」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。消化器系の病気
- 過敏性腸症候群(IBS)
- ストレス性胃腸炎
- 機能性下痢
- 自律神経失調症
- 慢性下痢症・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎/クローン病)
- 感染性腸炎(ウイルス・細菌性など)
- 大腸がん・大腸ポリープ
婦人科系の病気
- 月経前症候群(PMS)
- 月経随伴症(ストレス関連で下痢・腹痛を伴う場合)
- 女性の慢性骨盤痛(ストレス悪化)
- ホルモンバランス異常に伴う下痢
循環器系・その他の病気
- ストレスに起因する頻脈・動悸・発汗(自律神経失調と関連)
- 強い緊張からの過換気症候群
- 全身のだるさや疲労と連動した消化障害



