「胃がチクチクする」のは「胃潰瘍」や「盲腸」が原因?医師が徹底解説!
胃がチクチクするとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
「胃がチクチクする」症状で考えられる病気と対処法
激痛ではないけれど胃がチクチク痛む症状は、誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。症状としては軽いものですが、その原因はさまざまです。以下で各疾患について解説します。
胃がチクチクする症状で考えられる原因と対処法
胃がちくちくと痛む症状のことを指します。この場合、急性胃炎の可能性が考えられます。急性胃炎の詳しい内容は後述しますが、端的にいうと胃粘膜に何らかの原因で炎症を起こした状態です。この原因は、ストレス、刺激の強い食品、タバコ、アルコール、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。
症状は、急に自覚するみぞおち付近の痛みや吐き気、嘔吐です。
主な診療科は、消化器内科です。緊急性はないため、日中に受診してください。軽症ならば、原因を特定しつつ胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬で治療を行うのが一般的です。ただし、吐血している、便に黒いものが混じっている(黒色便)場合は、胃粘膜からの出血の可能性があるため、出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。
食後に胃がチクチクする症状で考えられる原因と対処法
食後に限って胃がチクチクする症状が多い場合を指します。この場合、胃潰瘍の可能性が考えられます。
胃潰瘍についても詳細は後述しますが、端的に言えば、胃酸で胃の粘膜が傷つけられ、(その程度は急性胃炎よりも強く)痛みや出血を起こす病気です。
原因は、喫煙、ピロリ菌感染、薬剤の使いすぎ(特に痛み止め:非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)など)、ストレス、アルコール過剰摂取などです。
重症の場合は、胃から出血したり、胃に穴があいたりすることもあります。受診すべき診療科は消化器内科です。胃潰瘍は症状の程度がさまざまですが、基本的には早めの受診が推奨されます。腹痛があり嘔吐を繰り返してしまう場合は、早めに医療機関を受診しましょう。吐血や黒色便(便が黒い場合)、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。
胃がチクチクして下痢になる症状で考えられる原因と対処法
胃がチクチクする感覚に加えて、下痢も伴う場合を指します。この場合、過敏性腸症候群の可能性が考えられます。
過敏性腸症候群(IBS)は、ストレスのかかる状況になると、慢性的なお腹の不快感や痛みや、下痢、お腹の張りが続き、かつ排便するとその症状が改善するという疾患です。IBSの発生原因は腸の運動機能障害や知覚過敏、精神的な不調が関わっているとされていますが、詳しい原因は分かっていません。対処法としては、高炭水化物食、脂っこい食べ物、コーヒー、アルコール、香辛料など刺激の強いものは避けて、食物繊維が豊富な食べ物を多く摂取することが挙げられます。また睡眠・休養を十分にとり、運動習慣をつけることも有効とされています。
主な診療科は精神科・心療内科、消化器内科です。社会生活を満足に送ることができる程度に、症状をコントロールすることが目標になります。消化器内科の医師による腸の状態の把握は重要ですが、ストレス負荷による精神的な不調が原因のこともありますので、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法を行う医師の診察を受けることをお勧めします。
食べ過ぎて胃がチクチクする症状で考えられる原因と対処法
食べすぎて胃がチクチクする症状の場合、逆流性食道炎の可能性が考えられます。
逆流性食道炎は、下部食道括約筋という食道と胃のつなぎ目の部分の機能が低下することで、胃酸が逆流を起こして食道に炎症が広がる病気です。食道括約筋の動きが悪くなると、胃の内容物が一時的に逆流した際に迅速に胃に送りかえすことが困難となり、食道にさらに炎症を引き起こします。
逆流性食道炎は、加齢・肥満・姿勢などによって、食道を逆流から守る仕組みが弱まるか、内臓脂肪をまとった他の臓器によって胃自体が下から圧迫されるために起こります。また食事自体を食べすぎると、それを消化する胃酸も通常以上に分泌されるため、逆流しやすくなります。
症状は胸やけや胃付近の痛み、吐き気などさまざまです。消化の良い食べ物を摂取して、食べた後にすぐに横にならないように注意しましょう。
症状が長引く際には、消化器内科など専門医療機関を受診してください。緊急性はありませんので日中に受診しましょう。
空腹時に胃がチクチクする症状で考えられる原因と対処法
空腹時に胃がチクチクする症状の場合、十二指腸潰瘍の可能性が考えられます。
十二指腸潰瘍とは、先述の胃潰瘍と同様に、胃酸によって十二指腸粘膜が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気です。胃潰瘍では食事中や食後に症状を自覚しやすいですが、十二指腸潰瘍では空腹時に痛むことが多いとされています。
正常であれば胃と同様に、十二指腸粘膜も胃酸に対する防御機構を備えています。しかし喫煙やピロリ菌感染、痛み止め:非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の使い過ぎ、ストレスやアルコール過剰摂取などが原因となって、胃酸と十二指腸粘膜の防御機構のバランスが崩れてしまいます。
ご自身で出来る対処法は、まず上記の原因で心当たりのある物(喫煙やアルコールなど)を避けることです。その上で痛みが強い場合は医療機関受診を検討しましょう。 受診すべき診療科は消化器内科です。診断は胃カメラで行います。軽症であれば内服薬で治療、重症では手術での治療が必要になります。腹痛があり吐血や黒色便、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。
妊娠初期に胃がチクチクする症状で考えられる原因と対処法
妊娠初期の胃がチクチクする症状のことを指します。これは“つわり”の症状の一つである可能性があります。妊娠初期は、妊娠していない時期に比べて、プロゲステロン(黄体ホルモン)という妊娠を維持するためのホルモンが多く分泌されます。このホルモンには、子宮内膜を厚くするという妊娠の維持には欠かせない重要な役割がありますが、一方で消化管運動が抑制されるという作用もあります。そのため吐き気や胃がチクチクする、胃もたれするといった症状が出ることもあります。(つわりは他の要因でも起こることが報告されており、これが全ての原因ではありません。)
ご自身でできる対処法としては、無理に食事を摂らず安静にすることです。スープや経口補水液などで最低限の水分補給を心がけるようにしてください。それでもなかなか症状が治らない場合は、かかりつけの産婦人科を受診しましょう。緊急性はありませんが2−3日全く食事を取れない場合は、予約を早めに変更して受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「胃がチクチクする」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
血便が見られる場合は、消化器内科へ
胃がチクチクする症状に加えて、血便(便に赤い血が混じっている状態)が見られた場合を指します。このような場合は、強い程度の急性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった疾患が考えられます。基本的に出血まで起こしていると粘膜へのダメージは強いことが多く、早急に消化器内科への受診をお勧めします。
もし歩くだけで響くような腹痛が見られる、吐血が出るような状態になった場合はさらに緊急性が高く、救急要請も含めて受診を検討してください。
受診・予防の目安となる「胃がチクチクする」ときのセルフチェック法
- 胃がチクチクする以外に吐き気症状がある場合
- 胃がチクチクする以外に下痢症状がある場合
- 胃がチクチクする以外に血便症状がある場合
「胃がチクチクする」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「胃がチクチクする」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃酸によって胃の粘膜が傷つけられ、痛みや出血を起こす病気です。先述の急性胃炎よりもさらに損傷が激しい状態になります。原因は、胃酸と胃壁を守る粘液の分泌のバランスが崩れ、胃酸によって胃壁が傷つくためです。このバランスが崩れる原因は複数あり、特に喫煙やヘリコバクター・ピロリという細菌の感染、非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)の濫用、ストレスやアルコール過剰摂取などが挙げられます。重症の場合は胃壁全層に傷が到達し、出血や穿孔(穴があくこと)を来す場合もあります。
ご自身で出来る対処法は、まず上記の原因で心当たりのある物(喫煙やアルコールなど)を避けることです。その上で痛みが強い場合は医療機関受診を検討しましょう。
受診すべき診療科は消化器内科です。診断は胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で行います。軽症であれば内服薬で治療可能ですが、重症(出血や穿孔がある場合)では入院の上、内視鏡や手術での治療が必要になります。腹痛があり嘔吐を繰り返してしまう場合は、早めに医療機関を受診しましょう。もし吐血や黒色便、血便が見られた場合は緊急性が高いため、すぐに病院を受診してください。
急性胃炎
急性胃炎とは、突然のみぞおち付近の痛みや吐き気、嘔吐、時には吐血下血を起こす病気です。この際に内視鏡検査を行うと、胃粘膜の表面に急性の異常所見(明らかな炎症所見、出血、びらん、潰瘍)が観察されます。原因としては、ストレスや刺激の強い食品(辛いものや熱いものなど)、喫煙、アルコール摂取、薬剤(痛みどめや抗生物質など)、ピロリ菌感染などがあります。 主な診療科は、消化器内科です。後述する胃潰瘍がないことを確認する意味でも上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行する場合が多いです。緊急性はないため日中の受診を行いましょう。軽症の場合は、原因を除去しつつ胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬で治療が行われます。しかし、吐血している、便に黒いものが混じっている(黒色便)場合は胃潰瘍や胃粘膜からの出血の可能性があるため、出来るだけ早い日程で医療機関を受診しましょう。
アニサキス症
アニサキス症とは、生の魚やイカを食べた際に、アニサキスという寄生虫に感染することで起こる疾患です。アニサキスは、魚やイカの体内に寄生していることが多く、生の状態で食べた際に人間の胃や腸に入り込むことがあります。
アニサキスが入り込んで胃や腸に炎症を起こすことで、腹痛や吐き気、下痢などの症状が現れます。特に、感染後数時間から1日以内に急激な腹痛が起こることが特徴的です。
アニサキス症の診断は、胃や腸の内視鏡検査を行い、アニサキスの虫体を確認することで確定されます。また、患者さんの食事内容や症状から診断の手がかりとなります。原因になりやすい食品は、サバ、サンマ、アジ、イワシ、ヒラメ、サケ、カツオ、イカ等の刺身、冷凍処理をしていないシメサバなどです。
受診すべき診療科は消化器内科や消化器外科です。感染が確認された場合、内視鏡を使用してアニサキス本体を取り除く治療が行われます。予防としては、食品自体を十分に加熱調理するか、冷凍してから食べることが推奨されています。
盲腸(虫垂炎)
盲腸(虫垂炎)とは、腸管の盲腸(虫垂)と呼ばれる部分に炎症が起こる疾患のことを指します。若い年代から高齢者まで幅広く見られます。食欲低下や腹痛(みぞおちから右下腹部へ移動する)、吐き気や嘔吐、発熱、悪寒といった症状が特徴的です。
軽症であれば、抗菌薬の内服のみで治療が完了することもありますが、重症な場合は外科手術が必要な場合もあります。
受診すべき診療科は消化器内科、消化器外科です。上記の症状が出現し、これまで解説してきた悪寒戦慄や、歩くだけでも響く腹痛が見られた際は、緊急性が高いため、夜間でも迷わずに医療機関を受診してください。
「胃がチクチクする」ときの正しい対処法は?
胃がチクチクする場合、一般的に考えられるのは胃粘膜への負担が大きい状態ということです。まずは胃に負担をかけるような、脂分が多い食事、味付けの濃い食事、香辛料を多く含んだ食事などは避けて、消化に良い食事を心がけましょう。
市販薬では、いわゆる胃薬は飲んでも問題ありません。しかし一般的な痛み止め、特にロキソニンなどは胃粘膜を荒らす作用があるため、推奨できません。判断が難しい場合は、薬剤師に相談してみましょう。
食事に気をつけても全く症状が改善しない場合は、一度医療機関を受診してください。
「胃がチクチクする」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「胃がチクチクする」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ストレスが原因で胃がチクチクすることはありますか?
中川 龍太郎(医師)
ストレスが原因になることはあります。非常に強いストレスがかかり続けると、それで胃潰瘍にまで至ることもありますので、可能性としてはあり得ます。
たまに胃がチクチクするのですが病院に行くべきですか?
中川 龍太郎(医師)
たまに胃がチクチクした時に、何らかの心当たり(食べすぎた、飲みすぎた、喫煙、ストレスなど)があるのであれば、まずはそれらを排除して様子を見てみましょう。それでも改善がないのであれば、一度日中に医療機関を受診してみましょう。
胃がチクチクするのですが自分でできる対処法はありますか?
中川 龍太郎(医師)
食べ過ぎや飲み過ぎ、タバコ、ストレスなどがあるのであれば、まずこれらを解消できるようにしましょう。暴飲暴食は控え、禁煙して、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
胃がチクチクするときに有効な市販薬を教えてください。
中川 龍太郎(医師)
胃粘膜を保護する薬か、胃酸の分泌を抑える薬が有効と考えられます。幅広く存在しますので、ドラッグストアで薬剤師に相談してみましょう。ただし、チクチク痛いからといって、いわゆる“痛み止め”を使用するのはお勧めできません。注意してください。
まとめ 胃がチクチクするときは胃潰瘍に注意
胃がチクチクするときに考えられる病気について解説しました。胃がチクチクするだけでは症状が軽いように考えられますが、そこからひどくなるとさまざまな病気が考えられます。胃粘膜に負担をかけないような生活習慣を意識してみてください。
「胃がチクチクする」症状で考えられる病気
「胃がチクチクする」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
婦人科の病気
胃がチクチクする症状では基本的に胃の病変が考えられますが、それ以外にも食道や十二指腸、虫垂など別の場所の痛みが反映されている場合もあります。症状が長引く場合は一度医療機関を受診してください。
「胃がチクチクする」に似ている症状・関連する症状
「胃がチクチクする」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胃がパンパンに張る
- 歩くとお腹に響く
「胃がチクチクする」以外にこれらの症状が見られる際も、急性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍の可能性があります。複数見られる場合は一度医療機関を受診して、しっかり調べましょう。