「赤ちゃんの目やに」が多くなる原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
赤ちゃんに目やにがある時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
記事監修医師:
菅谷 雅人(ふかしばこどもクリニック 院長)
2021年茨城県神栖市にふかしばこどもクリニックを開院。子育てを頑張っている家族、こどもの体調不良で不安になっている家族に寄り添った診療を提供すべく努めている。
日本小児科学会認定小児科専門医。日本腎臓学会認定腎臓専門医。
日本小児腎臓学会、日本夜尿症学会所属。
「赤ちゃんの目やに」で考えられる病気と対処法
目やにとは、眼の表面である結膜や角膜からの分泌物で、目に入った小さいゴミなどの物理的な刺激やウイルス・ばい菌に感染することで分泌されます。
少量の目やには常に分泌されていて、涙と一緒に目頭にある涙点という穴から吸収され、涙嚢(るいのう)から鼻涙管(びるいかん)という管を通って鼻の奥へ排泄されています。
目やにの分泌量が排泄できる量を上回るほど多くなる場合や、鼻涙管が生まれつき狭かったり、一時的に詰まった場合に症状としての目やにが出現します。
症状としての目やにが現れる原因は先天性鼻涙管閉塞症、睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)、ウイルス性/細菌性結膜炎、角結膜異物、外傷があります。
赤ちゃんの目やにが多い症状で考えられる原因と治し方
生後2-3か月の赤ちゃんの目やにが多い症状で考えられる原因として頻度が高いのが、先天性鼻涙管閉塞症です。
先天性鼻涙管閉塞症
涙の通り道である鼻涙管がうまれつき閉じてしまっていて、涙や目やにの排泄が滞ってしまい、症状としての目やにが出現します。涙の流れが滞るので泣いていないのに眼がつねに涙目であったり、涙も流れてくる場合もあります。(流涙といいます)片側性、両側性どちらの場合もあります。また、結膜(白目の部分)の充血を伴わないのも特徴です。
すぐにできる処置としては、水で濡らした柔らかい布やコットンなどで優しく拭き取り清潔にすることです。また、1日2-3回程度の目頭からやや下の鼻の脇に沿って、目頭方向へ上向きにマッサージを行うことで、鼻涙管の流れがスムーズになりやすいです。
90%が1歳までに自然に治るとされていますが、目頭が赤く腫れて、涙嚢炎という状態になってしまう場合や、生後6か月の時点でも症状が改善する傾向が見られない場合、結膜の充血を伴う場合は一度眼科を受診しましょう。
眼科を受診し、自然に治らないと診断された場合は、涙道ブジーという鼻涙管を細い針金のようなもので開通させる処置を行います。また、涙嚢炎を併発している場合は抗菌薬の点眼を行います。
赤ちゃんの目やにと、目の充血で考えられる原因と治し方
赤ちゃんの目やにと目の充血が出現した場合、ウイルス性もしくは細菌性の結膜炎の可能性があります。結膜炎では粘性の高い黄色・黄緑色の目やにと流涙がみられ、白目(結膜)の強い充血やまぶたの裏に炎症性の白い膜が形成されるなどの症状がみられます。赤ちゃんの目やにの治療方法・対処法について詳しくは後述しますが、家庭でできる症状を抑える方法はありません。眼科へ受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「赤ちゃんの目やに」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
赤ちゃんが朝に目があかない程目やにが多い、結膜の充血がある、まぶたや目頭が赤く腫れている場合は、眼科へ
少量の目やにや流涙があるだけなら、しばらく目を清潔にして経過観察をしてもよいでしょう。
なかなか症状がよくならない場合、朝に目があかない程目やにが多い場合、結膜の充血がある場合、まぶたや目頭が赤く腫れている場合は必ず眼科を受診しましょう。
また、目に異物が入り、目を痛がる、気にする様子がある場合はなるべく早く眼科や救急外来を受診しましょう。
頻度は低いのですが、流涙や眼やにとともに、黒目が大きくなり、黒目が白く濁る、光をとてもまぶしがるという症状が出てくる場合は、早発型発達緑内障という視力に影響する病気の可能性がありますので必ず眼科を受診しましょう。
「赤ちゃんの目やに」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「赤ちゃんの目やに」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
逆さまつげ・睫毛内反症(しょうもうないはんしょう)
赤ちゃんの下まぶたはふっくらしているため、まつ毛が眼球に向かって生える場合があります。このために目の表面の角膜にまつ毛の先端があたってしまい、角膜炎や結膜炎をひき起こして目やにがついてくることがあります。成長とともに、下まぶた周囲の皮膚が下に引っ張られるため、まつげが外を向くようになり、自然治癒することが多いと言われています。
角膜炎や結膜炎を起こして目やにが見られる場合は眼科へ受診しましょう。
抗菌薬の目薬や角膜を保護する目薬を処方されます。
自然治癒を期待して経過観察となりますが、角膜の傷がひどい時やまぶしい、痛いなどの症状が強く、つねに目をこすっている場合には、手術治療が行われます。
結膜炎
結膜炎では粘性の高い緑黄色の目やにと流涙がみられ、白目(結膜)の強い充血やまぶたの裏に炎症性の白い膜が形成されるなどの症状がみられます。
新生児期にはクラミジアの産道感染による結膜炎が多く、乳児期以降の細菌性結膜炎では黄色ブドウ球菌やインフルエンザ桿菌によるものが多いと言われます。また、ウイルス性結膜炎では単純ヘルペスウイルスやアデノウイルス(流行性角結膜炎:いわゆる流行り目)などの感染が多いことも特徴です。
家庭でできる対処法はありませんので、眼科へ受診しましょう。
細菌性結膜炎では抗菌薬の目薬を処方されます。
ウイルス性結膜炎は特効薬がありませんが、二次感染を防ぐ目的で抗菌薬の目薬を処方されたり、炎症が強い場合はステロイドの目薬を処方されることもあります。
「赤ちゃんの目やに」があるときの正しい対処法は?
目やにがみられたらその都度、水やお湯で濡らした清潔な布やガーゼで目頭から目尻にかけて優しくぬぐいましょう。
鼻涙管閉鎖による目やにが出ている場合は、1日2-3回程度、目頭からやや下の鼻の脇に沿って、目頭方向へ上向きに優しく10回なぞるマッサージを行うことで、鼻涙管での流れがスムーズになりやすいです。
ウイルス性結膜炎など感染性が高い病気の場合は、家族への感染を防ぐために顔や手をふくタオルは家族と分けましょう。入浴は最後が望ましいです。目やには湿ったティッシュでやさしくふき、ふき取ったティッシュはその都度捨てましょう。赤ちゃんの目に触れた場合は手をよく洗いましょう。
2歳までは市販薬は使わない方が無難です。
「赤ちゃんの目やに」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「赤ちゃんの目やに」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
赤ちゃんがいつも涙目・目やにが多い場合は何科に行くべきですか?
菅谷 雅人 医師
小児科や眼科へ受診しましょう。
赤ちゃんの目やにが気になるとき市販の目薬を使用しても良いですか?
菅谷 雅人 医師
2歳までは市販薬を使うのでなく、病院へ受診して処方された薬を使用することが望ましいです。
赤ちゃんの目やにの色や量がいつもと違うのは目の病気でしょうか?
菅谷 雅人 医師
赤ちゃんの鼻涙管はちょっとしたことで一時的に狭くなることがあります。朝起きた時目があかないくらい多い目やにでなければ、急いで受診する必要はありません。
白目が赤く充血している、目やにが増えてきて、まったく改善傾向がない場合は小児科か眼科へ受診しましょう。
まとめ
赤ちゃんは目やにがでやすいです。少量ならば経過観察でよいと思われますが、量が多い場合や白目や目の周囲が赤い場合は、眼科か小児科へ受診しましょう。
「赤ちゃんの目やに」で考えられる病気と特徴
「赤ちゃんの目やに」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
赤ちゃんは目やにが出やすいのですが、量が多かったり充血していたり目の周囲が赤かったりする場合には、受診して相談してください。
「赤ちゃんの目やに」と関連のある症状
「赤ちゃんの目やに」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「赤ちゃんの目やに」の他に、これらの症状が見られる際は、「先天性鼻涙管閉塞症」「睫毛内反症」「ウイルス性/細菌性結膜炎」「角結膜異物」などの病気の存在が疑われます。
目やにが多い場合やなかなか治らない場合などは、早めに医療機関への受診を検討しましょう。
・睫毛内反(日本小児眼科学会)