「口の中が甘い」のは「糖尿病」が原因?医師が徹底解説!
口の中が甘いとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
「口の中が甘い」症状で考えられる病気と対処法
「口の中が甘い」という症状は何らかの病気が関わっている可能性があります。放置したままで良いのか、病院に行くべきなのか悩まれる方が多いのではないかと思います。
どんな場合に病院受診を行う必要があるのか解説していきます。
何も食べていないのに口の中が甘い症状で考えられる原因と対処法
何も食べていないのに口の中が甘く感じるという症状がある場合には味覚障害を疑います。原因は様々な要因が考えられますが、多くの例で亜鉛欠乏の関与があるとされています。まずは亜鉛のサプリメントなどを内服してみるのもいいでしょう。
緊急性はありませんが、味覚障害が継続する場合には内科に受診してみると良いでしょう。
朝、口の中が甘い症状で考えられる原因と対処法
朝起きた時に、口の中が甘く感じるような症状がある場合にはケトン症を疑います。ケトン症とは体にブドウ糖が足りない状況で、脂肪をエネルギーに変えようとすることで分泌される「ケトン体」という物質が過剰に分泌されている状態です。
過剰な糖質制限などをしている場合には適切な糖質を摂取することが必要となります。
基本的には緊急性はなく、日中に内科に受診すると良いでしょう。
口の中が甘く渇く症状で考えられる原因と対処法
口の中が乾いており、さらに甘く感じるような症状を指します。
まずは水を飲むなどして口を潤わせてみて症状の変化を確認すると良いでしょう。
このような場合には糖尿病が原因となっている可能性があります。糖尿病は生活習慣、遺伝子要因などが絡まり合って発症する血糖が高くなってしまう病気です。
基本的には緊急性はなく日中に内科へ受診しましょう。稀に糖尿病が急激に悪化した場合には意識が悪くなったり、力が入らなくなったりするため、そのような症状がある場合はすぐに医療機関に受診しましょう。
妊娠中に口の中が甘い症状で考えられる原因と対処法
妊娠中の方で口の中が甘く感じるような症状を指します。女性は妊娠すると女性ホルモンの分泌量が増加し、唾液が減ったり食の好みが変化したりすることがあります。
虫歯や歯周病にならないように口腔ケアは大切にする必要がありますが、食の好みの変化については気にせず食べたいものを食べつつ、栄養バランスもしっかりと考えると良いでしょう。
症状が気になる場合には産婦人科の主治医に相談してみるのも良いでしょう。
水を飲むと口の中が甘い症状で考えられる原因と対処法
水を飲んだ時にいつもより口の中が甘く感じるような症状がある場合には脱水を考える必要があります。より分かりやすいのは経口補水液を飲んだ時です。普段の状態で飲むと少し塩味を感じる味ですが、脱水状態の時には甘味をより感じるようになります。
脱水の対処法としては経口補水液などのミネラルが含まれた水分を十分に摂取することです。しっかり口で飲める場合には問題ないですが、吐き気や腹痛、下痢などで十分に水分を摂取できない場合には医療機関に受診して点滴などの処置を受けると良いでしょう。
すぐに病院へ行くべき「口の中が甘い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
口が甘く感じ、さらに吐き気、胃痛などの症状がある場合は、内科へ
上記のような症状がある場合に一番心配なのが、糖尿病が非常に悪化していることによる糖尿病性ケトアシドーシスです。
この病気はインスリン作用不足からケトン体が増加して身体中の酸塩基平衡や電解質などのバランスが崩れる病気です。すぐに点滴やインスリン投与などをする必要があるため緊急で医療機関に受診すると良いでしょう。
水が甘く感じて十分に水分摂取できない場合は、内科へ
経口補水液などの水分を甘く感じる場合には身体の水分が足りていない可能性があります。吐き気や腹痛などがあり、十分に水分を摂取できない場合は医療機関に受診して点滴などの治療が必要な場合があります。
まずは内科を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「口の中が甘い」ときのセルフチェック法
- ・口の中が甘い以外に口が乾くような症状がある場合
- ・口の中が甘い以外に発熱や風邪症状がある場合
- ・口の中が甘い以外に吐き気や胃痛などの症状がある場合
「口の中が甘い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「口の中が甘い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
ケトン症
ケトン症とは体にブドウ糖が足りない状況で、脂肪をエネルギーに変えようとすることで分泌される「ケトン体」という物質が過剰に分泌されている状態です。
原因としては過度な糖質制限や糖尿病が悪化してブドウ糖を利用できないことなどが挙げられます。
過剰な糖質制限などをしている場合には適切な糖質を摂取することが必要となりますが、糖尿病の場合には緊急で血糖値を下げる治療が必要となります。
個人の判断ではどちらによるものかを判断するのは難しいため、まずは内科に受診すると良いでしょう。
糖尿病
糖尿病は血液中のブドウ糖を体内に取り込むインスリンの作用不足による慢性の高血糖症状を特徴とする病気です。1型糖尿病はウイルス感染症や自己免疫疾患によりインスリンを分泌する細胞が破壊されることにより発症します。2型糖尿病は遺伝子的要因に加えて高脂肪食、肥満、運動不足、ストレスなどの要因が絡み合って発症します。
初期の場合には運動療法や食事療法で治療可能ですが進行した場合には飲み薬やインスリンなどの注射が必要となります。
検診で高血糖を指摘されたり、口渇・多飲症状が強い場合には医療機関へ受診するとよいでしょう。主な診療科は糖尿病内科です。
味覚障害
味覚障害は味がわからなくなったり、変な味を感じるようになったり、何も感じなくなるような病気です。原因としては抗癌剤などの薬剤使用によるものや亜鉛欠乏などが挙げられます。
亜鉛欠乏が関与している可能性が高い病気なので、まずは抹茶やココア、牡蠣などの亜鉛が多く含まれている食品を取り入れてみると良いでしょう。
味覚障害が継続したり症状の程度がひどくて食事があまり進まない場合には、一度内科で原因を調べてみると良いでしょう。
「口の中が甘い」ときの正しい対処法は?
口の中が甘いと感じる場合、さまざまな原因が考えられますが、味覚障害によることが一般的には多いと考えられます。日常の生活では口腔内を清潔に保つために、適宜歯磨きをしたり、唾液の分泌を促すためにレモン水でうがいをしてみたり、そして亜鉛の豊富な食材を試してみると良いでしょう。唾液の分泌を補うために市販薬のバイオティーン®︎などを試してみるのもお勧めです。
また口が甘く感じて口の渇きがあり、さらに水を摂取しても変わらない場合には、糖尿病や脱水の可能性があるので市販薬で様子を見ずに、医療機関に受診すると良いでしょう。
味覚障害の時には亜鉛欠乏が関与していることが多いため、ココアや抹茶、牛肉、牡蠣、ごまなど亜鉛が豊富に含まれているとされる食品を積極的に取り入れてみると良いでしょう。
上記のような生活改善や市販薬を試しても改善しない場合には、一度医療機関に受診して原因を詳しく調べてみると良いでしょう。
「口の中が甘い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「口の中が甘い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
何も食べていないのに口の中が甘く感じるのは何かの病気ですか?
久高 将太 医師
味覚障害や糖尿病などの病気が隠れている可能性があります。症状が継続する場合には医療機関を受診しましょう。
口の中が甘いのですがストレスや疲れが原因でしょうか。
久高 将太 医師
ストレスや疲れによっても味覚障害を発症する可能性があります。ストレスに心当たりがあり、身体の調子が悪い場合には心療内科などを受診すると良いでしょう。
口の中が甘いときは亜鉛が足りていないのでしょうか。
久高 将太 医師
味覚障害の原因の一つに亜鉛欠乏があり、多くを占めていると考えられます。亜鉛を多くふくむ食べ物を取り入れてみると良いでしょう。
口の中が甘いのですが貧血の症状でしょうか。
久高 将太 医師
ある種の貧血では舌炎も合併しますので、その場合には味覚障害を発症する可能性があります。一度血液検査をして調べてみると良いでしょう。
口の中が甘いときの治す方法を知りたいです。
久高 将太 医師
画一した方法はありません。上記のようにさまざまな病態が原因として考えられますので、検査を行い、それぞれの病態に応じた治療が必要となります。特に糖尿病の中には劇的な経過を辿るタイプもありますので、早めに医療機関を受診し相談すると良いでしょう。
まとめ
口の中が甘く感じるという症状は普段はあまり感じないため気になってしまう症状だと思います。原因は複数あり、その中には病院で治療が必要な病気もあります。
症状がつらかったり継続する場合には無理せず医療機関を受診してください。
「口の中が甘い」症状で考えられる病気
「口の中が甘い」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
糖尿病のような自覚症状のわかりづらい病気が見つかる場合も考えられます。
「口の中が甘い」に似ている症状・関連する症状
「口の中が甘い」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 口が乾く
- 味がしない
- 口から甘い匂いがする
- 食べ物の好みが変わった
「口の中が甘い」という症状の他にこれらの症状がある場合も「糖尿病」「ケトン症」「亜鉛欠乏症」「脱水症」などの病気の可能性があります。症状が継続する場合には医療機関への受診をお勧めします。
・亜鉛欠乏症の診療指針 2018