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chapter03 小倉智昭「腎盂がん」治療に向き合い、余命宣告を受けた今伝えたいこと chapter03 小倉智昭「腎盂がん」治療に向き合い、余命宣告を受けた今伝えたいこと

堀先生堀祐太郎先生

膀胱がんと肺の転移が見つかった後の経過についても教えてください。

小倉智昭さん小倉さん

肺がんがほぼ消えたあとは、2ヵ月に一度の受診で経過観察を続けました。

堀先生堀祐太郎先生

異常などはありませんでしたか?

小倉智昭さん小倉さん

ある日、また血尿が出たので検査すると腎盂に影があり、がんかもしれないと言われました。ところで腎盂とはどういった場所なのでしょうか?

堀先生堀祐太郎先生

腎盂は腎臓で作られた尿がたまる場所です。体の中でも奥深いところにあるので、腫瘍の発見は難しいことが多いです。そのあとはどうされたのですか?

小倉智昭さん小倉さん

腫瘍がない可能性もあるが、腎臓を摘出する以外に検査する方法がないと言われました。そういうものなのでしょうか?

堀先生堀祐太郎先生

本来は腎盂近くの尿を回収して検査(細胞診)するのですが、小倉さんは代用膀胱であり、そこまでたどり着くのが難しいからだと思います。

小倉智昭さん小倉さん

そう言われました。病院内でも摘出するかどうか意見が分かれていたみたいです。

堀先生堀祐太郎先生

そうですね。腎機能も弱っているため意見が割れると思います。実際にはどうされたのですか?

小倉智昭さん小倉さん

左の腎臓を摘出して、病理の結果を待ちました。

堀先生堀祐太郎先生

結果はどうだったのでしょうか?

小倉智昭さん小倉さん

腎盂をスライスすると、木が土の中で根を生やすようにがん細胞が筋層まで到達していたようです。

堀先生堀祐太郎先生

結果的に手術してよかったですね。

小倉智昭さん小倉さん

そうなりますね。腎盂がんの基本的な症状についても教えてください。

堀先生堀祐太郎先生

基本的な症状は血尿です。腎臓を摘出した後の治療についてはいかがですか?

小倉智昭さん小倉さん

腎臓を摘出した後も転移する可能性があるので、肺の腫瘍に効果があった免疫チェックポイント阻害薬を使用しました。その時に余命1年半という宣告を受けていますが、見た目は元気に見えますよね?

堀先生堀祐太郎先生

そうですね。余命を聞いてどう感じましたか?

小倉智昭さん小倉さん

やっておかなければいけないことの準備や、覚悟もできて逆に良かったと思っています。

堀先生堀祐太郎先生

そう考えられることは素晴らしく素敵だと思います。普通、がんと言われると、誰でもショックを受け葛藤しますが、最後は「よし戦ってやろう」「やれることはやってやろう」と前向きに考えられる時期が訪れると思っています。

小倉智昭さん小倉さん

私は1年どころか2年、3年と生きて好きなことをやろうと思っています。このままだと残った右の腎臓の機能も低下する可能性が高いので、人工透析について調べ今後のことを考えているところです。

堀先生堀祐太郎先生

前向きに考えることが大切ですよね。

小倉智昭さん小倉さん

そのほかに大切なことは医師としっかり話すことです。私のホームドクターは腎臓がんで手術もしているので、血液データの数値を一緒に競争していますよ。

堀先生堀祐太郎先生

いい関係ですね。

小倉智昭さん小倉さん

そういう医師が身近にいるとすごく安心です。

堀先生堀祐太郎先生

そうですね。がんの治療を続けるうえで、それ以外に大切だと思うことはありますか?

小倉智昭さん小倉さん

がんと友達になったような気持ちで付き合っていくことも大切だと思います。

堀先生堀祐太郎先生

大事な考え方ですね。最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。

小倉智昭さん小倉さん

「がんは怖い、されどがんは怖くない」大事なのは諦めないことです。常に前を向いて頑張っていきましょう。

編集部より

がんをはじめ、小倉さんが持つ幅広い医学的な知識に驚きを覚えました。小倉さんはがんの恐ろしさを知ったうえで、自信を持って治療に向き合っていけると感じ、その姿勢が「がんは怖い、されどがんは怖くない」という言葉に表れているのかと思います。病気について知っておくことが、1年半という余命宣告を受けた上で「自分の病気とどう向き合っていくのか」「これからの人生をどう過ごしていくのか」という前向きな気持ちにもつながっているのかもしれません。誰でも正体が分からない敵と向き合うのは怖いはずです。がんのみならず、病気と向き合うためには、まずその正体について知ることが大切だと実感しました。今回の対談を通して、がんを含めた病気との向き合い方を考えるきっかけとなることを願います。

この記事の監修医師