歯に潜む様々な問題
槙野選手
僕は試合の時に最大の力を発揮したいと考えているのですが、歯はパフォーマンスにどの程度影響を与えているのでしょうか?
増岡先生
一言で「歯」と言っても、歯並びや噛み合わせ、虫歯や歯周病などさまざまな問題があります。それらがパフォーマンスに大きな影響を与えていることは間違いありません。
槙野選手
具体的にはどのような影響があるんでしょうか?
増岡先生
わかりやすい例を挙げると、噛み合わせが良くなると、四十肩等で肩が上がらない人が上がるようになる、アスリートの方がパフォーマンスを発揮しやすくなるといった影響が生まれます。
槙野選手
全身に影響するんですね。噛み合わせが悪い場合は、やっぱり全身に悪い影響が……。
増岡先生
はい。歯の噛み合わせが悪いと、食いしばった時に、部分的に力が入ってしまい、虫歯や歯周病を引き起こす原因になることもあります。また、怪我をしやすくなるとも言われていますね。噛み合わせは、顎の関節への影響も大きいとも言われています。噛み合わせが左右のどちらかにずれていると、片方の関節が圧迫されて、血行が悪くなり、機能が果たせなくなるということが起こります。具体的には、片頭痛や肩こりを引き起こしたり、膝や腰に影響を及ぼすこともあります。
槙野選手
確かに、歯に高い意識を持っている選手は、怪我が少ない気がします。でも、歯のポジションは人それぞれ違うと思いますが、良い噛み合わせかどうかを調べる方法はあるのでしょうか?
増岡先生
その人にとってベストな噛み合わせの位置を調べるには、個々にふさわしい顎のポジションを探ることが重要になります。例えば、割り箸のようなものを使って、通常の状態や、顎をずらした状態で噛んでもらいながら、どの位置が最も力が発揮しやすいかを診断することが必要です。
まだまだ低い日本人の意識
槙野選手
なるほど。僕は以前、ドイツでプレーしていたことがあるのですが、ドイツの選手たちは3ヶ月に1回、必ず歯医者に行くことを義務付けられていました。それほどヨーロッパでは、歯はパフォーマンスに大きな影響を与えられると考えられているんですね。でも、Jリーグでは、歯医者に行くことは義務付けられていません。もちろん、歯を大切にしている選手は一定数いますが、海外に比べれば、まだまだ歯に高い意識を持っている選手は少ないと感じます。
増岡先生
欧米に比べると、日本はまだまだ歯の大切さに気づいていない人が多いのが現状ですね。ちなみに、アスリートがパフォーマンスを上げるために、マウスピースを使うケースがあります。ゴルフでは、マウスピースを使うと飛距離が伸びるため、着用が禁止されているほど、歯とパフォーマンスは密接な関係にあります。
槙野選手
僕は以前、何度かマウスピースを使おうとしたことがあったんですが、その時は、練習中に外してしまいました。サッカーの場合、呼吸のしやすさや、喋りやすさが必要になるんですよ。
増岡先生
サッカー選手の場合は、ボクシングのようなスポーツと違いますので、奥歯だけに着用するセパレートタイプのマウスピースも良いのではないでしょうか。
槙野選手
確かに、それは気になりますね。