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chapter02 小林幸子「信号の色が消えた」網膜剥離で見えた世界。壮絶手術の全貌とは chapter02 小林幸子「信号の色が消えた」網膜剥離で見えた世界。壮絶手術の全貌とは

吉田先生吉田達彌先生

小林さんが実際におこなった治療について教えていただけますか?

小林幸子さん小林さん

オイルとガスの治療を提案されてオイルの治療を選択しました。

吉田先生吉田達彌先生

オイルを選択した理由は何ですか?

小林幸子さん小林さん

ガスの治療では飛行機に乗れないとの説明を受けました。仕事のスケジュール上、飛行機に乗らないと仕事をいくつか断ることになってしまう可能性があったため、オイルの治療を選択しました。

吉田先生吉田達彌先生

術後の経過はいかがでしたか?

小林幸子さん小林さん

手術のために入院をしましたが、術後2日目にはテレビの仕事があり、麻酔で痛みを誤魔化しながら仕事をしていました。コンサートの仕事では、眼帯を外すと痛みが増したため、曲間の暗転で片方の目を閉じて痛みを乗り越えていましたね。

吉田先生吉田達彌先生

網膜剥離の手術は術後も大変なので、つらかったと思います。

小林幸子さん小林さん

網膜剥離の治療は手術しか方法がないのでしょうか?

吉田先生吉田達彌先生

進行した網膜剥離には手術が必要ですが、剥離せずに穴が開いただけの場合、外来でレーザー治療が可能な場合もあります。

小林幸子さん小林さん

早い段階で治療ができれば、手術せずに済む場合もあるということですね。進行してしまった場合はいかがですか?

吉田先生吉田達彌先生

進行した網膜剥離に対しては2種類の手術方法があります。一つは目の外側からシリコンを当てる方法です。

小林幸子さん小林さん

外側から治療するのですか?

吉田先生吉田達彌先生

はい。シリコンスポンジでできたあてものを眼球の外側から穴の部分にあてて、眼球をへこませることで硝子体の引っ張りを緩め治療します。この方法は主に若い方に使用される方法です。

小林幸子さん小林さん

それ以外の人はどのような手術をするのですか?

吉田先生吉田達彌先生

網膜剥離の発症が多い中高年以降の方は、硝子体を眼球の中から直接取り除く硝子体手術を選択することが多いですね。

小林幸子さん小林さん

詳しく教えてください。

吉田先生吉田達彌先生

白目に開けた数ヵ所の穴から細い手術器具を入れ、硝子体を直接取り除きます。

小林幸子さん小林さん

手術方法を絵の説明で見た時はとても怖くて倒れそうになりましたが、実際の手術は全く痛くありませんでした。

吉田先生吉田達彌先生

局所麻酔の作用により、手術中は基本的に痛みがありません。細い手術器具を使って網膜の穴を生じさせた硝子体を除去し、はがれた部分は空気や特殊なガス、オイルを使用して網膜を元の位置に復位させます。これらの物質は水より浮力があり、その力を利用して網膜を後ろ側の壁に押し付けるため、術後は下を向く姿勢がとても大切です。

小林幸子さん小林さん

術後すぐは麻酔が効いていたので痛みはありませんでしたが、うつ伏せで寝て動いてはいけなかったので大変でした。その後は痛みも出てきました。

吉田先生吉田達彌先生

大変ではありますが、術後の体勢は網膜剥離の治療にとても重要です。小林さんが目の中にオイルを入れていた期間はどのくらいでしたか?

小林幸子さん小林さん

3ヵ月くらいだと思います。その後オイルを抜くために同じ手術をしました。一般的にはガスとオイルどちらを選択される人が多いのでしょうか?

吉田先生吉田達彌先生

一般的にはガスを選択する方が多いですね。飛行機を使う頻度の多い方やうつ伏せができない方はオイルを選択される場合もあります。

小林幸子さん小林さん

ガスの場合は、抜く必要はないのでしょうか?

吉田先生吉田達彌先生

はい。1〜2週間で目の中のガスは消失するため、抜く必要はありませんが網膜を復位させるため、しっかりと下を向いて過ごすことが大切です。

小林幸子さん小林さん

本当に疲れますよね。

吉田先生吉田達彌先生

網膜剥離の手術から5年以上たっているとのことですが、現在の視力や見え方はいかがでしょうか?

小林幸子さん小林さん

オイルを抜く手術から半年がたち、車の運転をした時(停車中)に手術した目だけで見てみようと思ったのですが、なんと信号に色がありませんでした。

吉田先生吉田達彌先生

それは怖いですね。

小林幸子さん小林さん

テールランプも真っ黒に見えました。今はだいぶ良くなりましたが、完全には戻っていません。手術した網膜が再び剥離することはありますか?

吉田先生吉田達彌先生

基本的には90%以上が初回の手術で治りますが、5〜10%の確率で再剥離が生じると言われており、複数回の手術を必要とする場合もあります。また重症例は非常に治療が難しく手を尽くしても失明に至る場合もあります。

小林幸子さん小林さん

片方の目の手術後、もう片方の目のリスクについてはいかがですか?

吉田先生吉田達彌先生

網膜剥離の10%は両目に生じると言われているので、もう片方の目にも網膜剥離が起きる可能性があります。

小林幸子さん小林さん

その10%にならないようにしたいですね。

吉田先生吉田達彌先生

また、網膜剥離の20%はご家族に網膜剥離を発症した人がいますので注意が必要ですね。

小林幸子さん小林さん

家系的には私が初めてです。家族歴がないか確認することも大切ですね。

吉田先生吉田達彌先生

そうですね。網膜剥離は早い段階で手術しなければ失明の危険がある恐ろしい病気です。目が悪い人だけでなく、誰にでも起こり得るため、飛蚊症や光視症の症状がある場合は早めに眼科を受診することをお勧めします。また、片目に網膜剥離を経験したことがある方やご家族にその病歴がある場合は症状がなくても早めに眼科を受診することが大切です。

小林幸子さん小林さん

私自身、目の病気は起こり得ないと思っていましたが、それは盲点でした。網膜剥離を経験して、目だけでなく病気の予防について考えるきっかけになったと思います。本当にありがとうございました。

編集部より

今回の対談を通して、網膜剥離の怖さについて知っていただけたと思います。網膜剥離の初期症状である飛蚊症についても軽視してはいけません。特に目の健康に関しては、症状がない限り詳細に検査する機会は少なく、気になる点があれば早期に眼科を受診することが重要です。この対談を通して網膜剥離についての理解が深まり、みなさまの目の健康につながることを願います。

この記事の監修医師