岩谷先生
当時行った治療について教えていただけますか?
IKKOさん
当時はパニック障害で1週間入院して治療したのですが、退院してからすごく不安でパニック発作を繰り返して地獄のようでした。
岩谷先生
特に苦手なシチュエーションはありましたか?
IKKOさん
当時は夜の0時に職場のみんながいなくなってひとりぼっちになると、いつ発作が起きるのだろうと思って、夜が明けるまですごく怖かったのを覚えています。
岩谷先生
予期不安があったのですね。
IKKOさん
はい。それで通っていた救急病院の医師には精神科に行ったほうが良いと言われました。当時は精神科もメジャーではなかったので、精神科に通うことで周りから変な目で見られるのではないかと心配になりました。今ではパニック障害も含めいろいろなことをカミングアウトできる時代になって、救われている人も多いと思います。
岩谷先生
そうですね。入院後はどのように治療をしていましたか?
IKKOさん
1週間に1回メンタルクリニックを受診して抗不安薬を処方してもらい、交感神経の緊張を整えるために首や肩に鍼治療もしていました。パニック発作が起きたら、まずどうすればいいのですか?
岩谷先生
パニック発作が起こった場合は、1人でいると不安や孤独感で再び発作が起こる可能性もあるので、早めに心療内科や精神科の医師へ相談してください。
IKKOさん
まずは医師に相談することが大切ですね。
岩谷先生
そうですね。IKKOさんはパニック障害を発症してから、どのように対処していましたか?
IKKOさん
退院後は任せられる仕事を弟子たちに任せて仕事の量を3分の1に減らし、休みの日にはウォーキングも始めました。
岩谷先生
仕事を含めて生活を変えたのですね。ほかにはどんな対処をされましたか?
IKKOさん
緊張して追い詰められると同じような夢を見て、寝ている間に奥歯が折れるくらいの歯ぎしりをしていたので、寝る前に好きなDVDを見たり音楽を聴いたりしていました。力が入らないように大の字で寝る工夫も良かったですね。
岩谷先生
IKKOさんは工夫しながら対処していて、すばらしいと思います。
IKKOさん
当時は医師から、今の環境を捨てて全て変えるように言われたのを覚えています。経営者として環境を変える必要性は分かっていたのですが、仕事だけでなく自分の弟子を見捨てられませんでした。実際に環境を変えるのは難しいですよね。
岩谷先生
そうですね。環境を大きく変えるのは難しいと思います。仕事は人にプレッシャーを与えるだけでなく支えてくれる存在でもあるため、そのバランスを保つことのほうが大切です。
IKKOさん
そういった意味では、41歳から少しずつ始めたテレビの仕事はすごく良かったと思います。テレビの仕事では「IKKOさん楽しんでくださいね」という言葉をかけられてすごく救われました。美容の仕事では譲れないものがあったのですが、テレビの仕事に関しては笑顔になれるような気がして、すごく良かったと思います。
岩谷先生
美容の仕事に関してはとことんストイックですが、テレビの仕事では少し力が抜けたのでしょうね。自分を肯定してくれる人や仕事が自分の支えとなって、自然体の自分を肯定できる体験はすごく大事なことです。仕事に向き合う姿勢も変わりましたか?
IKKOさん
理想や目標にばかりとらわれて昔の目標を見失っていることに気付けたことで、1日1mmでも良いから前に進もうと思えるようになりました。
岩谷先生
自分がそもそも何をやりたかったかと初心に立ち返ることで、プレッシャーを力に変えられたのですね。そこまで患者さん本人の力で、自然体の自分で良いと立ち返れる人は少ないと思います。
IKKOさん
もちろん経営者としての自分に戻ってストイックにならなければいけない場面もあったので、その時は自分に言い聞かせて、自然体の自分に戻るということを繰り返してきました。
岩谷先生
自然体の自分と演じる自分をわけて考えることが大切ですね。自然体の自分を大切にしながら場面によって役割を演じる。たとえ演じる自分が役割を果たせなかったとしても本当の自分が消えてなくなるわけではないと理解しておくことが重要だと思います。
IKKOさん
自然体の自分や初心を忘れずに過ごしたいですね。パニック障害になる可能性を調べる方法はありますか?
岩谷先生
パニック障害になる可能性を知る目的でセルフチェックシートを作りました。
図:パニック障害になる可能性を知るセルフチェックシート
IKKOさん
私もやらせていただきました。
岩谷先生
パニック障害になりやすい人は、自分の理想像が高く何かを成し遂げなければいけないという強い使命感を持っている傾向があります。そのためパニック障害は先進国のほうが多いと言われており、当てはまる項目が多い人は実際に物事を成し遂げられることが多い反面、追い詰められるリスクもあることを知っておいてほしいですね。
IKKOさん
誰でもそういうことはありますよね?
岩谷先生
そうですね。パニック障害の有病率は3〜5%で20人に1人は一生の間にパニック障害を経験すると考えられています。パニック障害はどんな人にでも起こり得るのです。ただ、緊張が自律神経の乱れにつながるリスクには体質の差もあるので、自分の思いが強い人ほど注意していただければと思います。IKKOさんから最後に伝えたいことはありますか?
IKKOさん
当時ある人にパニック障害のことを話したら「頑張った証としてメダルをもらったと思いなさい」と言われ、涙があふれて止まりませんでした。私がやってきたことはストイックだったけど悪いことではなかったと思えるようになったので、その言葉は今でも私の頭に残っています。もしパニック障害で悩んでいる人がいたら、その言葉を伝えてあげたいですね。苦しいことがあったら「背負い投げ〜」という気持ちで、頑張り過ぎずに気楽に生きていけば良いと思います。