坂井先生
與さんがカミングアウトを決意したきっかけを教えてください。
與さん
自分と同じ経験をする人を助けたいと思ったことがきっかけです。1人でも多くの人に僕の存在を通して、勇気を与えることができたらいいなと思い、決意をしました。
坂井先生
実際にカミングアウトをして、ご家族の反応はどうでしたか?
與さん
家族はすぐ受け入れてくれたのですが、公表することに関して母は反対していました。カミングアウトをすることで受ける批判に僕が耐えられないと心配してくれていたようです。
坂井先生
信頼できる人にカミングアウトすることは大切だと思うのですが、信頼する人だけでなく、公にカミングアウトをした理由はありますか?
與さん
ファンのみんなには自分の言葉で伝えたかったからです。
坂井先生
なるほど。ファンの方の反応はどうでしたか?
與さん
大多数のファンの方は良い意味で「だから何?」みたいなポジティブな反応でした。もちろんファンの方の中には受け入れられないという方もいましたが、今まで隠していた事実はあるので申し訳ないという気持ちが強いですね。
坂井先生
捉え方は人それぞれですからね。日本の調査によると日本人のうち約3〜10%がLGBTQ+であると言われていますが、與さんのカミングアウトはそういった人たちに勇気を与えたと思います。
與さん
そうであると嬉しいです。
坂井先生
LGBTQ+という言葉も少しずつ日本でも浸透してきていますが、それぞれどういう意味をもっているのか知らない方も多いですからね。
與さん
僕も未だに知らないことがあります。
坂井先生
最近はいろいろなメディアでも取り扱われるようになって、私たちが過ごした時代とは環境も変わってきましたね。
與さん
全然違うと思います。中学生の甥もLGBTQ+の授業を受けたそうです。
坂井先生
私も学校で性教育の授業をすることがあるのですが、小学生の頃からLGBTQ+について知ることができていたら救われる子どもも増えると思います。
與さん
はい。人を好きになる感情って小・中学生ぐらいで芽生えると思うので、学校側のサポートがすごく大切ですよね。特に子どもは生活範囲が家や学校に限られるので、学校の先生がLGBTQ+の理解者であることもすごく重要だと思います。
坂井先生
その通りですね。日本とLAを比較して何か違いは感じますか?
與さん
LAではゲイやレズビアン、ストレート関係なく遊んでいる印象があります。カリフォルニア州ではLGBTQ+の歴史を小・中学生から教えているところも多いようです。日本も小さい時からLGBTQ+の人も普通だという雰囲気になってくれれば救われる子は沢山いると思います。
坂井先生
そうですね。
與さん
自分で決められることであれば何を言われても構いません。ただ、もちろん自分で決めた訳でも親に決められた訳でもない、誰のせいでもないからこそ分かってほしいです。
坂井先生
LGBTQ+の人たちが感じる生きづらさを軽減していくために、できることは何だと思いますか?
與さん
カミングアウトはしなくてもいいと言う人もいますが、僕は誰でもいいから信頼できる人を見つけて、その人に打ち明けることで気持ちは楽になると思います。もちろん世界中の人がLGBTQ+について理解してくれればいいですが、世界はすぐに変わらないので、自分が動くしかないと思います。
坂井先生
特に都会ではない地方では理解が得られず生きづらさを感じる人も多いと思います。その他に感じることはありますか?
與さん
僕がやったように自分でコミュニティを探すことは大切だと実感しました。しんどいとは思うのですが、自分から殻を破り外に出ていくことを頑張ってほしいです。先生は何が大切だと思いますか?
坂井先生
医療者が適切な知識を持ち理解を示すことが大切だと思います。医療者の中にも理解が乏しい方がいて、その背景にもともと同性愛が病気として扱われてきた歴史があります。
與さん
同性愛が受け入れられた背景に医療も関係しているということですか?
坂井先生
はい。アメリカを中心に当事者の人たちが声を上げ続け、1980年代後半に病気ではないと認められました。医療側から同性愛や多様なセクシュアリティについて「病気ではなく自然なことなんだ」と伝えていくことで社会的な受け入れが進んでいくきっかけになると思います。 医療の立場として最も重要なことは、どんなセクシュアリティだったとしても困ったときにその人が必要とする医療を提供できるようにすることだと思っています。
與さん
そのために先生が活動されていることはどのようなことでしょうか?
坂井先生
主に講演会や研修などを通して、医療者にLGBTQ+について伝えています。実際に、医療者にLGBTQ+であることを安心して話せないという方も多い現状があります。すべての医療者がLGBTQ+の味方※「アライ」であってほしいという思いで、活動しています。 ※アライ:LGBTQ+の味方・支援者を表す言葉
與さん
医療者のみなさんが味方であると心強いです。
坂井先生
医療機関では同性パートナーが家族として認識してもらえず病状説明を受けられない、付き添いをさせてもらえないなど医療現場でも解決すべき課題は多いです。 そういう課題を解決するためにも、まず私たち医療者自身も学ぶことが大切だと感じています。
與さん
医療者の理解を通して、LGBTQ+の受け入れが進んでくれると嬉しいです。
坂井先生
今後も頑張っていきます。最後に読者へ伝えたいことを教えてください。
與さん
僕のことをカミングアウトで知った方やLGBTQ+について詳しく知らない方には、僕たちのような人がいることを一度でいいので考えてみてほしいです。
坂井先生
與さんのカミングアウトは、本当にたくさんの命を救っていると思います。それはもしかしたら医療よりも大きな影響をもたらして、LGBTQ+である人の人生をより豊かにしているのではないでしょうか。
與さん
そうであると嬉しいです。