歯列矯正して歯周病を予防!?

公開日:2020/10/06

こんにちは、有楽町デンタルオフィス勤務、日本歯周病学会歯周病認定医の佐藤正敬と申します。皆さんの周りで歯列矯正を行っている方はいらっしゃるでしょうか。今実際に矯正中の方もいらっしゃるかもしれません。皆さんは見た目を改善する事だけが歯列矯正の利点と思ってはいませんか? 今回は歯列矯正と歯周病についてお話したいと思います。

佐藤 正敬(日本歯周病学会認定医)

執筆歯科医師
佐藤 正敬(日本歯周病学会認定医)

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東京歯科大学卒業。日本歯周病学会認定医、日本口腔インプラント学会会員。

 歯列矯正とは?

まずは、歯列矯正とは何かをお話ししましょう。歯列矯正は、出っ歯や八重歯、でこぼこな歯並びやねじれて生えてきた歯、歯が噛み合わないなど歯並びや噛み合わせの不具合を、矯正装置を用いて改善していく治療です。

個々の歯にブラケットといわれる装置を付け、そこに患者それぞれに合ったワイヤーを通して改善していくのが一般的です。現在ではインビザラインという透明なマウスピースを用いた治療もあり、症例によってはより目立たない矯正治療が可能となっています。

歯並びが悪くなる原因には先天的なもの(生まれ持ったもの)と後天的なもの(生活習慣によるもの)に大別されます。先天的なものには、顎の大きさや歯の幅径、歯の本数などにより歯並びが悪くなってしまうものが挙げられます。後天的なものには、虫歯や抜歯した隙間を長い期間放置したり、頬杖や舌で前歯を押すなどの癖が原因となるものが挙げられます。歯列矯正により歯並びが整えば、しっかりと噛んでから飲み込むようになることで胃腸への負担が軽減されますし、コンプレックスが解消されることで人前で思い切り笑ったりすることができます。歯並びは心身の健康にも影響を与える因子となるのです。

 歯周病とは?

歯周病は、その字のごとく歯の周りの組織を破壊する病気です。歯の周りとは、主に歯茎と歯を支える顎骨です。歯周病になると歯茎が腫れ、歯ブラシをする際に出血しやすくなったり、歯茎から膿が出てきて嫌な臭いがしたりします。また、歯を支える骨が歯周病によって破壊されれば、歯茎が下がって歯の根っこが見えてきたり、歯がグラグラになる原因となります。

そんな歯周病で一番恐ろしい点は、病状が慢性的に進行していくところです。特に痛みもなく進行し、歯がグラグラしだす頃には、重度な歯周組織の破壊がみられ歯の保存が困難になるケースもあります。

歯周病の原因となるのは、主に歯周病原細菌という細菌です。歯の清掃を怠るとプラークという細菌の塊が歯に付着します。プラークには歯周病原細菌も含まれており、歯と歯茎の境目である歯周ポケット内から生体内に侵入します。まず細菌侵入による炎症によって歯茎が赤く腫れ、歯周ポケットからの出血も顕著になります。この状態を歯肉炎といいます。そのまま清掃できずに放置してしまうと細菌はより深く生体内に侵入し、生体の免疫反応の結果、歯の周囲の骨が吸収されてしまいます。この状態を歯周炎といい、歯肉炎・歯周炎を合わせて歯周病と呼びます。

歯肉炎の状態であれば、歯ブラシをしっかりと行うことで改善が見込めますが、歯周炎まで進行すると自身での改善は難しく、歯科医師の介入が必要となってきます。歯周病予防はまずしっかり歯ブラシを行うことが先決です。もし、きちんと毎日歯ブラシをしているにもかかわらず歯茎から出血して悩んでいる方がいらっしゃれば、それは歯ブラシの動かし方や角度が悪い可能性があります。是非一度、歯科医院にいらしていただき、正しい磨き方を身につけて頂くことをお勧めします。

 歯列矯正と歯周病予防

さて、ここまで歯列矯正というのはどういうものか、そして歯周病とはどういう病気で、何が原因なのかをお話してきました。では、歯列矯正は歯周病の予防に成り得るのでしょうか。

前述したように、歯周病の原因となるのはプラークであり、歯ブラシをすることによってプラークを取り除くことが一番の予防となります。逆を言えばプラークを取り除きにくい、つまり歯ブラシしづらい口腔内は、歯周病を予防しにくいのです。

歯並びが悪いと、それだけ歯ブラシと歯の間に隙間が生まれ、鏡を見ながら丁寧にブラッシングをしたり、歯ブラシ以外の清掃器具(デンタルフロスやタフトブラシといわれる先端の小さいもの)を用いない限り磨き残しが生じる可能性が高くなります。歯並びのせいで物理的に歯ブラシが届かない場所や磨き残しを生じやすいところはプラークが溜まり、虫歯や歯周病に罹患する原因となってしまうのです。

歯列矯正は見た目を改善することだけではなく、歯ブラシのしやすい歯並びにすることにより、プラークを溜めにくい口腔内にすることも大きな一つの利点となります。そしてひいてはそれが歯周病の予防と繋がっていきます。また、歯列矯正による噛み合わせの改善も歯周病の予防に繋がります。噛み合わせは、口を閉じたとき左右の奥歯が同時にしっかりと噛みこみ、前歯は上の歯と下の歯が軽く触れあっている状態が理想的です。例えば歯並びの不正によって、噛んだ時にある1本の歯にのみ大きな力が加わっている場合、その歯は過剰負担により周囲組織に炎症が起こり、それによって噛んだ時の痛みが生じたり、歯を支える骨が吸収されてしまいます。

そのような噛み合わせの問題で起こる骨の吸収も歯周病の一種であり、歯列矯正で噛み合わせを改善することによって予防することが可能です。

 まとめ

歯列矯正による歯並びと噛み合わせの改善は、自身での口腔内清掃を容易にし、歯への過剰な噛み合わせの負担を回避することで歯周病を予防することにも繋がっていきます。しかし、歯列矯正中は矯正器具があるため歯ブラシがしにくくなるのも事実です。歯列矯正は歯周病予防に効果的と言えますが、矯正治療中、矯正治療後も含め、歯ブラシの習慣やしっかりとした磨き方を身につけている事が前提となります。また、矯正治療はあくまでも歯並びと噛み合わせを改善する治療であって、それ自体が歯周病治療となるわけではありません。すでに歯周病に罹患している場合は、まずしっかりと歯周病治療を行い、歯周組織の炎症を取り除くことが最優先事項となります。