インプラント周囲炎の予兆?「インプラント周囲粘膜炎」とは?

公開日:2020/12/02

こんにちは、日本歯周病学会認定医の太田功貴と申します。
近年、歯を失ってしまった場合の機能的・審美的回復の方法の1つとして、インプラント治療が確立されてきました。しかし、インプラント治療を行えば、一生大丈夫というわけではありません。インプラントは虫歯になることはありませんが、歯周病になる可能性があるからです。今回はそのインプラントの歯周病であるインプラント周囲粘膜炎とインプラント周囲炎についてお話ししたいと思います。

太田 功貴(日本歯周病学会認定医)

執筆歯科医師
太田 功貴(日本歯周病学会認定医)

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東京歯科大学卒業。歯学博士。日本歯周病学会認定医、日本口腔インプラント学会会員、東京歯科大学歯周病学講座非常勤講師。

インプラント治療とは?

インプラント治療とは歯を失った部分の顎の骨に生体適合性がある材料(主にチタン)で作製された人工的な歯根を埋め込み、骨と結合する治癒期間を待った後に、それを土台にして被せ物をする方法です。ブリッジ義歯と違い、周囲の歯を犠牲にすることなく、違和感も少ないことが利点です。しかし、自由診療の適応であるため、費用がかかること、外科処置が必要なこと、また治療期間が他の治療法よりも長くなるなどの欠点もあります。

インプラント周囲粘膜炎とは?

インプラント周囲の粘膜に発赤や腫脹などの炎症徴候はありますが、レントゲン上でインプラント周囲の骨の吸収が認められない可逆性の炎症性病変をインプラント周囲粘膜炎といいます。いくつかの研究報告によると、インプラント治療を行った患者において、インプラント周囲粘膜炎の罹患率は非常に高いことが報告されています。しかし、その炎症症状はインプラント周囲の粘膜に限局しているため、適切な処置・治療により、健全な状態を取り戻すことができます。そのため早期発見早期治療が必要といわれています。

インプラント周囲炎とは?

炎症がインプラント周囲の粘膜だけでなく、骨組織まで進行してしまうのが、インプラント周囲炎です。インプラントは天然の歯と比較して、炎症に対する抵抗性が低いため、骨組織まで波及すると、進行が早く、自覚症状があまりないため、気付いたときにはグラグラ揺れていてしまい、最悪の場合、インプラントを撤去しなければいけない場合もあります。

原因

一番の原因はプラーク(歯垢)です。インプラント周囲の粘膜が歯垢により細菌感染を起こしてしまうと、炎症が惹起され、インプラント周囲粘膜炎を引き起こします。そして、炎症が骨組織まで波及することでインプラント周囲炎を引き起こします。この歯垢による細菌感染は、ブラッシングなど適切なケアが行えないことで起こります。また、インプラントの位置が適切でない、インプラントに隣接する歯の位置の不正(歯列不正)、インプラントの被せ物(上部構造)の形態不良インプラント周囲の歯肉が脆弱な場合など、適切なブラッシングが行いにくい環境も細菌感染を引き起こす間接的な原因になる可能性があります。
その他、インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎のリスクを高める要因(リスクファクター)として、歯周病糖尿病喫煙などがあります。

予防法

インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を予防するためには、一番は毎日の歯磨きによる適切なプラークコントロールを徹底することです。また、リスクファクターを減らすこと、定期的にメインテナンスを受けることで、お口の中の清掃状態の確認や、歯磨きの指導を受けることが重要です。

治療法

インプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎の治療法としては以下のものが挙げられます。
歯ブラシの指導の徹底
機械的清掃:インプラントの表面を傷つけないようにプラスチック製の器具などを使用して、歯垢や歯石を除去し、洗浄をすることで除染を行います。インプラントの被せ物が取り外し可能な場合、必要に応じて、取り外して除染する場合もあります。
化学的清掃:0.1〜0.2%クロルヘキシジンによる口内洗浄や、同時に局所洗浄を行います。
抗菌薬療法
 全身療法:抗生物質を投与して感染を除去します。
 局所投与:徐放性抗菌薬を投与します。
外科的治療
 再生療法:インプラント周囲の歯肉を切開し感染部の除去及び洗浄を行なった後、骨が吸収してしまったところを移植材等で補填し、縫合します。
 切除療法:インプラント周囲の歯肉を切開し感染部の除去及び洗浄後、骨が吸収してしまったところの周囲の骨を切除し、周りの骨と移行的にして縫合するこことで歯周ポケットを改善させます。術後にインプラント周囲の歯肉が下がり、歯肉に埋まっていたインプラントが部分的に露出することもあります。
インプラントの撤去:インプラント周囲の骨が改善できない程度まで吸収している場合や、インプラントがぐらついている場合は、インプラント自体が感染源となるため撤去する必要があります。

治療法に関しては、様々な方法や器具が検討されていますが、どの方法が優れているかという決定的なものはまだ確立されていません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
インプラント治療は、歯を失った場合における有効な治療法の1つと考えられます。しかし、インプラント治療を行なった場合でも、きちんと予防や適切な管理を行わないとインプラント周囲粘膜炎やインプラント周囲炎を引き起こしてしまいます。インプラント治療を成功させ、長期に維持させるためには予防や、早期発見・治療のためにも定期的な歯科医院への受診をお勧めします。