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歯のぬめりはプラーク(細菌の塊)

 更新日:2023/03/27

こんにちは。日本歯周病学会認定医としてメープルデンタルクリニック大久保で勤務している剣持正浩と申します。
今回は、歯周病や虫歯の予防に大切なプラークコントロールについて、歯周病との関わりについてお話させて頂きます。

「食事を楽しむ」ことは、非常に大切なことです。もし、食事のたびに、痛みなどを伴うのであれば、いかに美味しいものを食べても美味しくなくなってしまいますし、食事をとること自体が苦痛になってしまいます。痛みなどの不快な症状がなく、しっかり咀嚼できれば、入れ歯でもインプラントでも楽しく食事をとることができます。
それが、自分の歯であれば、最高ですね。しっかり食事を楽しむことは、全身的な健康につながります。
 
 
しかし、ご高齢の方でも多くの歯が残っている方がいる一方、かなりの数の歯を失ってしまっている人もいます。また、いろいろな背景はあると思いますが、若くして歯を失ってしまう人もいます。歯を失う原因として、交通事故や転倒などの外傷や、顎の骨にできる嚢胞や腫瘍などにより、歯を抜かなくてはならない稀なケースもあります。
しかし、現在のところ、歯を失う一番の原因は歯周病が40%程度、虫歯が約30%、歯の破折が約10%程度となっています。つまり、歯周病と虫歯でおよそ7割近くを占めていることになります。
 
 
つまり、今後歯を失わないために、一番大切なことは、歯の喪失原因の約7割を占める歯周病と虫歯を予防することになります。先に述べた歯を一本も失っていない人や、残念ながら少なからず歯を失ってしまった人の大きな違いは、多少の個人的な要素はあるにしても予防にあると思われます。
今回は、歯周病や虫歯の予防に大切なプラークコントロールと歯周病の関わりについてお話させて頂きます。
 

 プラークとは

ご存知の方もいるかもしれませんが、プラークは、歯と歯の間に挟まった食べかすではありません。歯の表面や歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目などにある付着物(ぬめっとした白い付着物)のことをいい、染め出し液で赤く染まります。
プラークは歯の汚れというよりも、歯周病や虫歯の原因となる細菌の塊です。身近な例を挙げるならば、キッチンや洗面所などの排水溝のぬめりもそうです。そう考えると、プラークにより、歯ぐきに炎症が起きるのもうなずけます。実際に、プラーク1mgあたりに10億個もの細菌が存在するといわれています。
 

 プラークを放置すると・・・

歯ぐきが健康な状態であっても、歯ぐきより上のプラーク(歯肉縁上プラーク)がずっと停滞していると、歯ぐきが赤みをおびたり・腫れたり、出血するなどの炎症がおこります。この状態を歯肉炎といいます。さらに、炎症が進むと、プラーク中の細菌の毒素により、歯と接している部分が破壊されることで、歯周ポケット(歯と歯ぐきの溝の深さ)が深くなっていきます。歯周ポケットが深くなると、歯周ポケット内で、歯周病の原因になる細菌が増殖し、歯周組織の破壊が進んでいきます。これが、歯周病です。
プラークは付着している部位によって、歯ぐきより上の歯肉縁上プラークと歯ぐきより下(歯周ポケット内)にある歯肉縁下プラークに分かれます。歯肉縁下プラークの中の細菌は、歯周病を引き起こす危険な歯周病原菌が多いので、要注意です。歯肉縁下プラークは、歯ブラシの毛先は届きませんが、効果がないわけではありません。歯肉縁上プラークをしっかり除去していれば、歯肉縁下プラークは増えません。
もし歯を磨かなければ、一週間も経たないうちに歯肉炎の症状が見られるという報告もありますが、口の中の状況は、人それぞれです。適切に歯を磨けている人もいれば、あまりうまく磨けていない人もいますから、あくまでも、一週間歯を磨かなくても大丈夫ということでありませんから、適切なブラッシングにより、プラークを除去することを心がけましょう。
 

 プラークから歯石に

プラーク(歯垢)が唾液中のカルシウムやリンなどの成分と結びついて石のように固くなり、歯の表面に強固に沈着したものをいいます。
 
個人差もありますが、プラークは48時間程度で歯石に変わりはじめます。歯石になってしまうと、表面は凸凹し、小さい穴があいているので、細菌の住みかになり、虫歯や歯周病の原因になります。
 
歯石になる前にプラークを除去することが重要です。歯石になってしまった場合は、ブラッシングで除去するのは難しいですから、歯科を受診して早めに除去しましょう。
 

 プラークコントロールって?

プラークコントロールとは、プラークを除去し、再付着を防止することにより、口腔内を清潔に保つことをいいます。
 
一般的に歯ぐきより上のプラークを除去する歯肉縁上プラークコントロールのことをプラークコントロールといい、機械的プラークコントロールと化学的プラークコントロールに分類される。

機械的プラークコントロール

ブラッシング・フロスによるフロッシング・歯間ブラシ・補助清掃器具・スケーリングな
 

化学的プラークコントロール

歯磨剤によるもの
洗口剤によるもの
 
また、患者さん自身によって行えるブラッシングやフロッシングなどのセルフケアと歯科医院で行うスケーリングなどのプロフェッショナルケアに分類されます。
セルフケアでは、歯肉縁上プラークを除去することは可能ですが、歯肉縁下プラークや歯石は除去できません。炎症を起こすプラークが付着したままだと、歯周病は治りませんので、歯科医院で除去してもらいましょう。
 

 ブラッシングだけでは清掃するのが難しい場所

・歯と歯の間(歯間部)
・歯並びの悪いところ(歯列不正)
・歯と歯ぐきの境目
・一番奥に生えてる歯の奥側の面
・矯正器具がついている歯の周り
・補綴治療(ブリッジインプラント)をした歯の周り
特に歯周病などにより歯ぐきが下がり、歯と歯ぐきの境目の高さが違うところや、歯根が露出しているところなどは、磨きづらいので要注意です。
 

 まとめ

日本人が歯を喪失する原因の約7割は歯周病と虫歯です。その歯周病と虫歯の原因はプラークになります。一番の予防は、プラークコントロールです。セルフケアによるブラッシングや清掃補助器具の適切な使用は、一度しっかり覚えてしまえば、費用はかかりません。しかし、歯並びは人それぞれです。自分に合った歯ブラシ・ブラッシング方法・清掃補助器具を選択するためにも、歯周病専門医・認定医がいる歯科医院を受診して、アドバイスを受けてみましょう。

この記事の監修歯科医師