【鍼灸師に聞く】鍼治療は「痛い・怖い・つらい」イメージがある…実際どうなの?
鍼治療に興味はあっても、「なんだか痛そう」「怖い」というイメージがある人も多いのではないでしょうか。もちろん、痛みを感じる程度は人それぞれですが、本当に鍼治療は痛いのか気になるところです。今回は「とまり木鍼灸整骨院」の澤田先生に、鍼治療についての疑問を投げかけてみました。
監修鍼灸師:
澤田 金悟(とまり木鍼灸整骨院)
鍼治療は痛くない? 実際のところはどうなの?
編集部
鍼治療に興味があるのですが、痛そうなイメージがあります。実際どうなのですか?
澤田先生
個人差はありますが、実際には「ほとんど痛みを感じない」「思っていたより全然痛くない」と言う人が多いですね。鍼治療で用いる鍼は、普通の注射針に比べて1/3程度の細さで、髪の毛1本分くらいです。
編集部
全く痛みはないのでしょうか?
澤田先生
いいえ。症状にもよりますが、筋肉のコリや血流の悪い場所に鍼が当たると、奥が押されたようなズンとする感覚を覚えることがあります。ただ、このような刺激を「気持ちいい」と感じる人もいれば、「怖い」と感じる人もいますよね。痛みの感覚には色々ありますし、痛みの感じ方も人それぞれということです。
編集部
たしかに、痛みの感じ方は人それぞれですね。
澤田先生
そうですね。味覚と同じで辛い食べ物が好きな人もいれば、苦手な人もいます。鍼治療もこれと一緒です。鍼を打つことによって生じるなんらかの感覚は、身体にとって決して悪いものではなく、むしろ鍼がしっかり効いている証拠でもあります。あまり怖がったり心配したりせず、リラックスして受けてほしいと思います。
編集部
鍼治療の跡が残ることはないのですか?
澤田先生
鍼治療に用いる鍼は非常に細いため、跡が残ることはほとんどありません。鍼治療をした後、稀に内出血を起こすこともありますが、だいたい数日間~数週間で消えるので心配はいりません。
編集部
そもそも鍼は、身体のどの部位に打つのですか?
澤田先生
誤解されがちですが、鍼はツボ(経穴)だけに打っているわけではありません。問診により、痛みを引き起こしている筋肉や神経の影響を考えながら、筋肉や神経と良好な自律神経反応を起こすツボに鍼を打って刺激し、ネガティブな身体症状の緩和と健康増進を目指します。
なぜ、鍼を打つと効果があるの?
編集部
なぜ、鍼を打つと症状が改善するのですか?
澤田先生
現時点で鍼治療のメカニズムは、完全に解明されていません。しかし、「鍼で刺激した部分に血液が集まることによって、老廃物の排出がスムーズになる」「外部刺激に反応して、免疫細胞である白血球の働きが活発になる」など、様々な機能が複合的に働いていると考えられています。
編集部
色々な効果が得られるのですね。
澤田先生
はい。それから、腰痛や肩こりなど痛みに対して鍼治療をおこなう人も多いと思いますが、鍼治療が痛みの緩和に効果があるのは、人が痛みを感じる「閾値」を変化させるからと考えられています。人はある刺激や感覚が閾値を超えると痛みを感じるようにできているのですが、鍼治療にはその閾値を変化させる働きがあります。そのため、痛みを感じにくくなったり、痛みが消失したりするのです。
編集部
経穴にも鍼を打つということですが、医学的に証明されているのですか?
澤田先生
まだ研究が進んでいる段階ですが、鍼やお灸でツボを刺激することの健康効果はWHO(世界保健機関)も認めています。WHOは鍼灸療法により効果が認められるものとして「運動器系(関節炎、リウマチなど)」「神経系(頭痛、めまいなど)」「循環器系(動悸、息切れなど)」など、様々な疾患を挙げています。
編集部
鍼治療は保険が適用されますか?
澤田先生
鍼治療が保険適用になる対象は、神経痛、頸腕症候群、リウマチ、腰痛症など限られています。また、医師による適当な治療手段がなく、医師が鍼の施術を受けることを認める場合には保険が適用となります。
鍼治療は誰でも受けられる? リスクはある? 施術を受けるうえで知っておきたい注意点
編集部
鍼治療を受けられない人はいますか? 子どもでも大丈夫ですか?
澤田先生
基本的に、どなたでも受けることができます。お子さんでも大丈夫です。ただし、高齢者やお子さんなどは、刺激に対して過剰に反応してしまうことがあります。その場合、例えばローラー鍼という刺さない鍼による施術で刺激を抑えます。
編集部
基本的には誰でも安全に受けられるのはいいですね。
澤田先生
ただし、金属アレルギーの人は注意が必要です。ステンレス製の鍼にアレルギー反応を示すことがあるので、もし金属アレルギーを持っていたら事前に施術者へご相談ください。
編集部
鍼治療のリスクがあれば教えてください。
澤田先生
眠気やだるさ、筋肉痛などの症状が表れることもあります。ただし、これらは好転反応と呼ばれるもので、多くが一時的なものです。とくに普段あまり身体のメンテナンスをしていないと、反応も起こりやすくなります。しばらくすると消えていきますが、もし症状が長引くようなら施術者にお知らせください。
編集部
医療機関の治療との併用はできますか?
澤田先生
問題ありません。鍼治療と西洋医学による治療は症状に対してのアプローチが異なり、お互いに補完することもできます。とくに鍼治療をすると免疫力がアップして、自己治癒能力が高まりやすくなるので、自然と症状が改善されて身体の機能も高まっていくこともあるでしょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
澤田先生
鍼治療というと、どうしても注射を打つようなイメージを持ってしまうかもしれません。私は鍼治療に対して「痛そう」「怖い」という印象を持っている人に、「鍼はとても細い指で、身体の奥のコリがある部分を刺激していくようなもの。つまり、とても細い指で指圧をするようなものなんですよ」ということをお伝えしています。鍼を打ったり刺したりといったイメージがあると、「怖そう」という印象を持たれるかもしれませんが、指圧というとあまり怖さを感じませんよね。このようにマイナスなイメージをプラスに変えて、安心して心地よく鍼治療を受けていただければと思います。
編集部まとめ
鍼治療を一度も受けたことがない人にとっては、「身体に鍼を打つなんて怖そう」というイメージがあるかもしれません。しかし、鍼治療は非常に汎用性が高く、多くの疾患や症状に効果を発揮する施術です。疾患や症状を治すだけでなく、日々の健康管理にも取り入れてみてはいかがでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 鍼灸院、整骨院 |