原因不明の心や体の不調、もしかしたら首の筋肉が神経を圧迫している「首こり病」かも?
一般的な診察・診断は、症状の出ている箇所に対しておこなわれることが多いようです。しかし、症状の原因が患部から離れた場所にあるとしたら、この進め方では解決しません。そこで注目されてきたのが、首に着目した治療方法です。詳しい話を、「世田谷総合鍼灸整骨院」の島崎先生に伺ってみました。
監修柔道整復師:
島崎 建(世田谷総合鍼灸整骨院)
重要な神経が首の筋肉の中を通っている
編集部
最近、「首の凝りが全身疾患を引き起こす」という話を聞くようになりました。
島崎先生
はい。東京脳神経センター理事長・脳神経外科医の松井孝嘉先生によって提唱された「頚性神経筋症候群」(けいせいしんけいきんしょうこうぐん)のことでしょう。別名「首こり病」ともいわれています。
編集部
首だけではなく、全身に影響しているところが不思議です。
島崎先生
じつは、脳から全身へ伸びている神経の一部が、首の筋肉の中を通っているのです。この神経が首の凝りなどによって圧迫されると、全身疾患はおろか、うつ病などの心の病も発症させうることがわかってきました。
編集部
そうした重要な神経は、背骨の中に収まっているのではないのですか?
島崎先生
背骨の首の部分を「頸椎」(けいつい)といいます。おっしゃるように、ほとんどの重要な神経は頸椎の中を通って全身に伸びています。しかし、「どうやら、そうではない神経もありそうだね」ということです。
編集部
となると、今まで「原因不明」といわれていた症状が、じつは「首こり病」の現れかもしれないということですか?
島崎先生
その可能性が捨てきれません。「首こり病」は最近になって広まってきた概念ですから、医療従事者の間でもまだ、あまり周知されていないようです。ですから、例えば「吐き気」であれば、消化器の失調を疑うのが一般的です。しかし、原因が「首こり病」なら、消化器の異常はみられません。そこで「原因不明」という診断結果になるのだと思われます。
頭蓋骨の後ろの部分に「重だるさ」はないか
編集部
「首こり病」の具体的な症状には、どのようなものがありますか?
島崎先生
「東京脳神経センターの専用サイト」に各種症状が明記されているものの、あくまで一例です。同サイトに載っていない症状だから「首こり病ではない」とは言いきれません。よって、具体的な症状の該当を探すというより、総論として「心身の状態と首が関係している」ことを知っておきましょう。
編集部
問題は、自分の症状を「首こり病」由来だと疑えるかですよね。
島崎先生
その判断は専門家がおこなうことです。患者さんにしていただきたいのは、専門家の判断を仰ぐことでしょう。心当たりがあったら、「首こり病」などで検索し、最寄りの該当施設などを探してみてはいかがでしょうか。
編集部
それにしても、気分の落ち込みや消化器の不調で「首」を疑うのは、一足飛びという気がしてしまいます。
島崎先生
それでは、しかるべき標ぼう化を受診しておいて、そこで「原因不明」といわれたときの“セカンドオピニオン”にしてみませんか。セカンドオピニオンは原則として、治療や施術と切り離された「単独の行為」ですから、安心して相談できると思います。
編集部
「首こり病」と鑑別する、正式な手順はあるのですか?
島崎先生
問診を重視しますが、加えて当院では、頭蓋骨の後ろの部分に「凝りのような硬さ」が出ていると、「首こり病」を疑います。また、器質的な症状と一緒に、自律神経失調症のような症状を伴っているかどうかも判断材料にしています。具体的には頭痛や息切れ、めまい、不眠などですね。
普段の姿勢が「首こり病」を誘発している
編集部
仮に「首こり病」だと判明したとして、どのような施術をおこなっていくのでしょう?
島崎先生
当院は西洋医学を扱う医療機関ではありません。国家資格である柔道整復師や鍼灸師の学問体系にのっとった施術をおこないます。そのうえで、頭蓋骨の後ろの部分に凝りがみられれば、鍼治療や手技を用います。積極的に用いているのは、除痛効果も望める鍼治療でしょうか。
編集部
一方で、首が凝ってしまう生活上の要因もありますよね?。
島崎先生
そうですね。とくに、デスクワークをしているときの「不良姿勢」が関係しているでしょう。「首こり病」とみなされる方で多いのは、頭部を前方へ突出させた「ヘッドフォワード」と呼ばれる姿勢です。この場合、タオルを首の後ろにかけて手で固定し、首の力で上に反らしていくストレッチ運動が効果的です。首が本来の位置に戻るような筋力をつけていきましょう。
編集部
逆に、「首こり病」で全てが片付くと思わないことも重要ですよね?
島崎先生
もちろんです。もしかしたら難病が隠れていて、かなり専門的な医療機関でないと診断を付けられないおそれもあります。とくに、頭を打ったときのような外傷性の症状は、「首こり病」と切り離して考えたいですね。必要に応じて、MRIを完備した脳神経外科の受診を促しています。
編集部
最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。
島崎先生
「首こり病」という名前が付されているものの、その症状は首に限らず多岐にわたります。頭痛や息切れ、めまい、不眠のような“つかみどころのない症状”に加え、首回りの違和感があるとしたら、「首こり病」を疑ってみてください。
編集部まとめ
「首こり病」とは現在のところ、東京脳神経センターの松井先生が唱えた一概念です。正式な医療プロトコルに載るかどうかは、今後の症例研究次第でしょう。もっとも、重要な神経の一部が首の筋肉の中を通っていることは確かなようなので、「原因不明とみなされた諸症状」のある方は、参考にしてみてください。
医院情報
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診療科目 | 整骨院 |