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【NEWS】 ヒトの平均体温 ここ200年で0.6度低下 -スタンフォード大の研究- (医師コメント3件)

 更新日:2023/03/27

アメリカのスタンフォード大学医学部に所属するジュリー・パーソネット教授の研究チームは、過去約200年にわたるアメリカ人、約68万人の平均体温を調査した。その結果、2000年代に生まれた男性の平均体温は、1800年代初期に生まれた男性の平均体温と比べ、約「0.59度」低いことが判明したという。女性も同様で、2000年代に生まれた女性の平均体温は、1890年代に生まれた女性の平均体温よりも、約「0.32度」低かった。このことにより、平熱の再定義が必要となりそうだ。

体温低下の理由について同教授は、衛生環境や医学の発達により、体温を上昇させる免疫機能の出番が減ったのではないかと推測している。また、空調の整った住環境も、平均体温を低下させた要因として考えられるとのこと。かつてほど、自分で体温を調節する必要がなくなったというわけだ。

これと関連して、イギリスの医学専門誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に掲載された、興味深い論文がある。それは、「体温が0.149℃高くなるにつれ、1年後に亡くなる可能性は8.4%増加する」というもの。こちらも、アメリカ人約3万5000人から得られたデータだ。基礎体温の低いグループがより長生きするという、別の研究もある。たしかに200年前と比べ、ヒトの平均寿命は延び続けている。

平均体温の低下は、生活様式が変わったことによる進化なのか。同教授はそう語るが、「冷え性」や「低体温症」を是認するような、誤った情報の受け取り方に注意したい。

医師のコメント

  • 波多野 恵(小児科医)
    東京医科歯科大学

日常臨床でも体温の低い人が年々増えている印象があります。どちらかというと健康にはよくない印象もありますが、長寿との関連も考えられるという意見には驚きました。体温と免疫機能や不定愁訴などとの関連に関しても興味深いところであり、関連する研究データが増えていくことを期待しています。

 

  • 武井 智昭(内科医・小児科医)

全館空調に関しての是非が問われているが、体温の低下であれば代謝量の低下もあり、こどもを含めてメタボリックシンドロームへの可能性が高くなってきているように思われます。運動量の増加が健康増進に必要であることを再認識しました。

 

  • 山口 征大(内科医)

平熱を規定する要素の中で、エアコンの有無や、体温の測定方法(接触型、非接触型)など、環境因子によって影響を受ける要素もありますが、平熱体温がこのように変化していくのであれば、今後、正常値の定義も変わってくる可能性はあります。