【NEWS】 風疹の流行、昨年を上回る勢い(医師コメント6件)
国立感染研究所は7月30日、今年に入ってから7月21日までの風疹患者が、累計で2004人になったと発表した。都道府県別の患者数は、東京都736人▽神奈川県246人▽千葉県176人▽埼玉県173人と、首都圏に集中している。2018年トータルの同患者数は暫定値で2917人。昨年を上回る流行が予測される。
こうした患者のうち約8割は男性が占めている。1962年4月2日から1979年4月1日までに生まれた男性は、ワクチンの公的接種を受ける機会がなかった。このため厚生労働省は今年2月、予防接種法の政省令を改正。上記期間に該当する男性が、抗体検査や予防接種を原則無料で受けられるようにした。
他方、東京都感染症情報センターの報告を見ると、男性患者数のピークは40代で、次に30代、20代と続いている。ワクチン接種の“谷間世代”とは、必ずしも一致していない。
国立感染研究所の調べた患者全体の予防接種歴によると、「なし」と「不明」が約9割を占めている。このことから、特定の年代にかかわらず、「ワクチン接種率」そのものが低下していると思われる。東京五輪を前に、行政のあり方や感染症対策の周知が求められるだろう。
医師のコメント
- 武井 智昭(小児科・内科医)
現在の男性30-50歳が、ワクチン接種が行われていないために、流行が起こっています。国は本年より風疹予防対策の目的で抗体価検査とワクチンによる予防対策を初めていますが、感染予防の効果としては数年はかかると思われます
- 藤野 智哉(精神科医)
風疹にかかると自分自身が危険にさらされるだけでなく、妊婦に感染させるリスクがあるということを自覚する必要があります。妊婦が感染すると聴覚に障害を抱えた子が生まれる可能性があり一生の問題となります。感染させた人間にも非常に大きな責任が伴いますが多くの人がそこまで考えて行動をしていないように思えます。多くの人にそういったリスクが伝わるように我々医療者も、それ以外の方も訴え続けていく必要があります。
- 田嶋 美裕(内科医)
風疹は、妊娠中の女性がかかると胎児への悪影響が出る可能性があることから、しっかりと感染予防対策をしないといけません。予防接種で予防可能な病気は、風疹以外にもたくさんありますので、定期接種のワクチンは必ず受けいただきたいと思います。
- 松浦 恵(小児科医)
東京医科歯科大学
風疹は特に妊娠20週頃までの妊婦での感染により、眼や心臓、耳などに障害を残す先天性風疹症候群を起こすことで問題となります。それだけでなく脳炎や血小板減少性紫斑病などの合併症もある感染症ですし、小さい子供や妊婦などワクチンを接種できない人を感染症から守るという観点からも、全ての人において予防接種で免疫をつけておくことが大切です。
妊娠を希望する人やその家族では、抗体検査やワクチンの接種が徐々に普及してきていますが、そうではない場合、関心が薄いということも、近年の流行の一因であると考えられ、早急な対応が必要です。
- 山口 征大(総合診療内科医)
ワクチン接種歴があっても、年齢とともに風疹の抗体価が低下している可能性があります。医療機関で検査を行い抗体価が低かった場合はワクチンを接種することで予防することができます。風疹は妊婦が罹患すると先天性風疹症候群を引き起こすとも言われているので予防が重要になってきます。
- 加藤 智子(産婦人科医)
風疹は一部の年代において自由接種でありましたため、感染者が増加しています。我々産婦人科も妊娠を扱うため、日常的に質問や心配な相談者が少なくありません。特に妊娠中初期に初感染を受けると、児が先天異常、中でも聴力異常や心奇形を併発してしまう場合があります。これからオリンピックも控え、国際交流を持つ場は増えます。風疹だけではなく性感染症も増加傾向にあり、ひとりひとりが気をつけて過ごさなければなりません。