「糖尿病には運動が大事」を科学が証明。237万人超の解析で明らかになった合併症リスクを医師が解説

リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究チームは、糖尿病患者の身体活動不足が脳卒中や網膜症などの合併症に与える影響を世界規模で推定しました。237万人超のデータを解析した結果、運動不足が合併症発症の大きな要因となっている実態が判明。特に高所得地域や教育水準によるリスクの差も示されています。この衝撃的な研究内容と、日々の診療における運動の重要性について、五藤先生に伺いました。
※2026年3月取材。

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
糖尿病患者の「身体活動不足」が招く代償。合併症のリスクを高める数値とは
編集部
リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
五藤先生
研究では、糖尿病のある成人を対象に、身体活動不足の有病率と、心血管疾患、脳卒中、冠動脈疾患、心不全、網膜症との関連を調べた集団ベースのコホート研究および横断調査を統合解析しました。
解析対象は成人237万人超にのぼり、複数の地域のデータが含まれています。その結果、身体活動不足が関与する割合は、脳卒中で10.2%、網膜症で9.7%、心不全で7.3%と高く、これらの合併症に与える影響の大きさが示されました。
特に、高所得のアジア太平洋地域やラテンアメリカ・カリブ海地域などで人口寄与割合が高い傾向がみられ、国の所得水準が高いほどその割合も高くなっていました。
また、教育水準の低い成人では、全ての合併症でより高い傾向がみられました。研究チームは、糖尿病患者の身体活動不足を減らすための介入を個別に調整することで、合併症による健康被害の軽減につながる可能性があるとしています。
「自覚症状がない」からこそ恐ろしい。糖尿病が招く失明や人工透析などの重篤な合併症
編集部
今回の研究テーマに関連する糖尿病について教えてください。
五藤先生
また、著しく血糖値が高くなると、昏睡などの急性合併症を起こすこともあります。糖尿病は初期には自覚症状が乏しく、気づかないまま進行することも少なくありません。症状が出る場合には、喉の渇きや水分摂取の増加、尿の回数の増加、体重減少、疲れやすさなどがみられます。さらに重症化すると意識障害に至ることもあります。
症状がなくても健診で見つかる場合があるため、早めに状態を知り、適切な治療や生活管理につなげていきましょう。
「運動しましょう」の説得力が変わる。大規模データの診察への活用法
編集部
リオグランデ・ド・スル連邦大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
五藤先生
日々の診療でも運動指導は欠かさずおこなっていますが、「なぜ運動が必要か」を患者さん自身が納得して理解することが、行動変容への第一歩だと思っています。この研究の数値は、そうした場面での説明にも活用できる、説得力ある根拠になると感じました。糖尿病診療でもこの研究結果を用いて患者さんに説明したいと思います。
また、高所得地域や教育水準の低い方でリスクが高い傾向がみられた点も興味深く、個々の背景に合わせたアプローチの大切さを改めて考えさせられました。
編集部まとめ
今回の研究では、糖尿病患者の運動不足が、脳卒中や網膜症、心不全などの合併症に関与する可能性が示されました。糖尿病は自覚症状が乏しいまま進行することもあるため、早めに状態を知り、治療に加えて日々の身体活動を見直すことが大切です。無理のない範囲でこまめに体を動かす習慣を意識し、毎日の生活に生かしていきましょう。




