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「糖尿病治療薬が依存症を防ぐ」可能性が研究で判明 60万人超の最新データを医師が解説

 公開日:2026/03/25
糖尿病の治療薬依存症を防ぐ可能性が?

糖尿病治療薬として普及している「GLP-1受容体作動薬」に、アルコールや薬物などの依存症を予防・改善する可能性が浮上しました。米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムの大規模な調査により、本剤の使用者が物質使用障害(SUD)の発症リスクを有意に低下させることが示されたのです。身体疾患と精神疾患の意外な関連性について、公受先生に伺いました。

※2026年3月取材。

公受 裕樹

監修医師
公受 裕樹(医師)

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【経歴】
金沢大学医学部卒業
精神科単科病院を経て、現在都内クリニック勤務
精神保健指定医、産業医
【免許・資格】
精神保健指定医、産業医

60万人超の調査で判明! GLP-1薬がアルコールや薬物の依存リスクを抑制か

編集部

米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムの研究員らが発表した内容を教えてください。

公受 裕樹先生公受先生

今回の研究では、2型糖尿病を持つ米国退役軍人60万6434人を対象に、GLP-1受容体作動薬とSGLT-2阻害薬の新規投与開始者を比較する形で、最長3年間の追跡調査がおこなわれました。物質使用障害(SUD)の既往がない方を対象としたプロトコル1では、GLP-1受容体作動薬の使用開始がアルコール、大麻、コカイン、ニコチン、オピオイドを含む多様な物質に関連する障害の新規発症リスクをいずれも有意に低下させることが確認されました。全ての新規SUDを合わせた複合アウトカムでは、ハザード比0.86、1000人あたりの純リスク差は−6.61と、統計的に明確な差が認められています。

また、既存のSUDを持つ方を対象としたプロトコル2においても、GLP-1受容体作動薬の使用開始は、SUD関連の救急外来受診や入院、SUD関連の死亡、薬物過剰摂取、さらには自殺念慮または自殺未遂といった深刻な有害転帰のリスクを幅広く低下させることが示されました。これらの結果は治療遵守の分析においても一貫して同様の方向性を示しており、知見の安定性が確認されています。

以上の観察研究の結果は、GLP-1受容体作動薬が複数の薬物種にまたがる広範な予防効果と、既存SUD患者さんにおける治療的な有用性を持つ可能性を示唆しており、今後のさらなる検証が求められます。

脳の病「物質使用障害」の正体とメカニズムとは

編集部

今回の研究テーマに関連する物質使用障害について教えてください。

公受 裕樹先生公受先生

物質使用障害とは、アルコールや薬物などの物質が脳に影響を及ぼすことで生じる精神障害です。使用のコントロールが困難になるなど、日常生活や社会生活に支障をきたす状態を指し、急性の中毒症状だけでなく、物質使用の継続や再発を繰り返す依存的なパターンが特徴です。
依存症の背景には、脳の報酬系における変化という生物学的要因に加え、心理的・社会的要因も深く関わっています。心理的苦痛を和らげるために物質を使い始め、やがてその苦痛がさらに増してしまうという悪循環に陥るケースも多く見られます。

治療においては、依存性物質を使用しないことが原則となりますが、ほかにも薬物療法や認知行動療法、自助グループへの参加など、複数の手法を組み合わせた継続的な取り組みが重要です。また、本人だけでなく家族が専門機関に相談することが、治療の第一歩につながることもあります。

回復には時間がかかる可能性がありますが、一人で抱え込まず、専門家や支援機関に勇気を持って相談しましょう。

糖尿病治療薬が示唆する精神疾患への新たなアプローチ

編集部

米国退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

公受 裕樹先生公受先生

GLP-1受容体作動薬は、あくまで糖尿病に対する治療薬であり、現時点では物質使用障害に対して使用するものではありません。したがって、今回の研究結果は別の見方をすると、「身体疾患は精神疾患を関連がある」とも捉えることができます。身体疾患と精神疾患の関連性は多くの研究で明らかになっており、今回もその側面を一部見ているのかもしれません。今後のさらなる研究に期待したいと思います。

編集部まとめ

今回の研究は、糖尿病の治療薬として広く使われているGLP-1受容体作動薬が、アルコールや薬物への依存リスクを下げる可能性を大規模なデータで示した点で、非常に注目に値します。依存症は本人の意志の問題と捉えられがちですが、脳の働きや心理・社会的背景が複雑に絡み合う疾患です。既存の治療薬が思わぬ形で予防や改善に役立つかもしれないというこの知見は、今後の依存症治療の選択肢を広げる可能性があります。「もしかして依存かも」と感じたら、一人で悩まず早めに医療機関へ相談することが、自分らしい生活を守る第一歩につながります。

この記事の監修医師