「低糖質・高タンパク質食」が脳に与える悪影響とは? 研究で判明した脳機能低下を防ぐ成分を医師が解説
公開日:2026/03/10

群馬大学共同教育学部の研究員らは、健康なマウスを用いた実験で、「習慣的な低糖質・高タンパク質食(LC-HP食)が作業記憶機能を低下させる」ことを確認しました。しかし、低糖質・高タンパク質食にオメガ3脂肪酸(EPAまたはDHA)を加えて摂取したグループでは、その記憶機能の低下が防がれることが明らかになりました。この内容について五藤医師に伺いました。
※2026年3月取材。

監修医師:
五藤 良将(医師)
プロフィールをもっと見る
防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。
目次 -INDEX-
糖質制限が記憶力低下の原因に? 研究で分かった「脳への影響」と「対策」とは
編集部
群馬大学共同教育学部の研究員らが発表した内容を教えてください。
五藤先生
群馬大学共同教育学部の島孟留准教授らの研究グループは、健康なマウスを用いた実験により、オメガ3脂肪酸(EPAおよびDHA)の摂取が、習慣的な低糖質・高タンパク質食の摂取によって引き起こされる作業記憶機能の低下を防ぐことを明らかにしました。
低糖質・高タンパク質食は健康的なイメージから市場拡大が続いていますが、その効果の多くは肥満者や糖尿病患者を対象とした研究に基づくものであり、健康な人への有効性については議論の余地があります。同グループはこれまでの研究で、健康なマウスが習慣的に低糖質・高タンパク質食を摂取すると作業記憶機能が低下することを報告しており、盲目的な摂取の危険性を指摘していました。
今回の研究では、健康なマウスを6つのグループに分け、4週間の食餌介入を実施しました。低糖質・高タンパク質食の摂取に加えてEPAまたはDHAを経口投与したグループでは、作業記憶機能の低下が防がれることが確認されました。さらに、特にDHAの摂取は、低糖質・高タンパク質食によって引き起こされる海馬内のLrp6およびDcx mRNAの発現低下を防ぐことも明らかになりました。また、海馬内のWnt5a mRNAの発現はオメガ3脂肪酸の摂取により高まる傾向が見られ、これらの遺伝子発現の間には有意な正の相関が認められました。
これらの結果から、DHAをはじめとするオメガ3脂肪酸は、LRP6が関わる非古典的なWntシグナルを海馬内で調節することで、低糖質・高タンパク質食に伴う作業記憶機能の低下を防ぐ可能性が示されました。本研究の成果は、体重管理を目的に低糖質・高タンパク質食を取り入れているビジネスパーソンの仕事効率向上や、競技アスリートの脳機能最大化に向けた食習慣・食品の発展に貢献することが期待されます。
低糖質・高タンパク質食は健康的なイメージから市場拡大が続いていますが、その効果の多くは肥満者や糖尿病患者を対象とした研究に基づくものであり、健康な人への有効性については議論の余地があります。同グループはこれまでの研究で、健康なマウスが習慣的に低糖質・高タンパク質食を摂取すると作業記憶機能が低下することを報告しており、盲目的な摂取の危険性を指摘していました。
今回の研究では、健康なマウスを6つのグループに分け、4週間の食餌介入を実施しました。低糖質・高タンパク質食の摂取に加えてEPAまたはDHAを経口投与したグループでは、作業記憶機能の低下が防がれることが確認されました。さらに、特にDHAの摂取は、低糖質・高タンパク質食によって引き起こされる海馬内のLrp6およびDcx mRNAの発現低下を防ぐことも明らかになりました。また、海馬内のWnt5a mRNAの発現はオメガ3脂肪酸の摂取により高まる傾向が見られ、これらの遺伝子発現の間には有意な正の相関が認められました。
これらの結果から、DHAをはじめとするオメガ3脂肪酸は、LRP6が関わる非古典的なWntシグナルを海馬内で調節することで、低糖質・高タンパク質食に伴う作業記憶機能の低下を防ぐ可能性が示されました。本研究の成果は、体重管理を目的に低糖質・高タンパク質食を取り入れているビジネスパーソンの仕事効率向上や、競技アスリートの脳機能最大化に向けた食習慣・食品の発展に貢献することが期待されます。
「糖質制限=健康」は万能ではない。専門医が指摘する注意点とは
編集部
群馬大学共同教育学部の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
五藤先生
今回の研究は、「低糖質・高タンパク質食=健康に良い」といった一律のイメージに注意を促す点が重要です。健康なマウスで、低糖質・高タンパク質食が作業記憶の低下と関連し、その一方でEPA/DHA(特にDHA)の付加がその低下を抑えた、というのは興味深い示唆です。
ただし、これはマウス・4週間・特定条件下の結果であり、現時点で「糖質制限をしている人はDHA/EPAで必ず守れる」と結論づけるのは早い段階です。今後は、ヒトにおける摂取量、期間、対象(健康人・肥満・糖尿病など)別の検証が必要でしょう。
ただし、これはマウス・4週間・特定条件下の結果であり、現時点で「糖質制限をしている人はDHA/EPAで必ず守れる」と結論づけるのは早い段階です。今後は、ヒトにおける摂取量、期間、対象(健康人・肥満・糖尿病など)別の検証が必要でしょう。
脂質の「質」を組み込んだ新たな栄養戦略とは
編集部
今回紹介していただいた研究結果はどのようなことに活用できるものでしょうか?
五藤先生
実用面では、低糖質・高タンパクな食生活を実践する際に、脂質の質(とくにオメガ3系)を同時に設計するという考え方に応用できます。具体的には、極端に糖質を削ってタンパク質中心にするのではなく、青魚、えごま油・亜麻仁油など、オメガ3系脂肪酸を含む食品を“食事設計の要素”として組み込むという方向性です。
一方で、ヒトでの最適条件は未確立なので、「サプリメントで解決」と短絡せず、目的(減量・血糖管理・競技パフォーマンス)と体質(糖代謝・脂質異常・服薬状況)に合わせて、主治医や専門職と相談しながら調整するのが現実的です。なお、同じ低糖質・高タンパク質食でも代謝状態(例:糖尿病モデル)で認知機能への影響が異なる可能性が示唆されており、個別化が鍵になります。
一方で、ヒトでの最適条件は未確立なので、「サプリメントで解決」と短絡せず、目的(減量・血糖管理・競技パフォーマンス)と体質(糖代謝・脂質異常・服薬状況)に合わせて、主治医や専門職と相談しながら調整するのが現実的です。なお、同じ低糖質・高タンパク質食でも代謝状態(例:糖尿病モデル)で認知機能への影響が異なる可能性が示唆されており、個別化が鍵になります。
編集部まとめ
糖質制限などの低糖質・高タンパク質食は、ダイエットや体型管理を目的に多くの方が取り入れている食事法ですが、今回の研究は「健康な人にとっては脳機能への影響にも目を向ける必要がある」ことを示唆しています。もし糖質制限を続けているなら、青魚を積極的に食卓に取り入れたり、DHAやEPAのサプリメントを活用したりすることが、記憶力や集中力を守るうえで有効な選択肢となりそうです。食事法を上手に組み合わせることで、体だけでなく脳のパフォーマンスも高めることが期待できます。
