うつ病は「寝すぎ」でもリスクを高める? 理想の睡眠時間・見逃せない3つの前兆を医師が解説

「寝不足は体に悪い」というのは常識ですが、実は「寝すぎ」も心の健康に影を落とすことが最新の研究で示唆されました。四川農業大学の研究グループが米国成人4089人を調査したところ、睡眠不足と睡眠過剰の双方がうつ病リスクを高める「U字型」の関係が判明しました。平日・週末で異なる理想の睡眠時間や性別による差異など、私たちの日常に直結する驚きの分析結果について、伊藤先生に詳しく伺いました。
※2026年2月取材。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
「寝すぎ」もうつ病リスクに? 最新研究が示す衝撃の「U字型」相関とは
編集部
四川農業大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
伊藤先生
研究では、国民健康栄養調査(NHANES、2017年〜2020年3月)のデータから、20歳以上の成人4089人を対象に分析をおこないました。睡眠時間とうつ病指標との関連を詳しく調べ、さらに性別による違いも検討しました。
分析の結果、睡眠時間とうつ病の有病率、総スコア、煩わしさの間にU字型の関連が認められました。これは、睡眠不足だけでなく睡眠過剰もうつ病のリスクを高めることを意味します。より詳細な分析により、平日は7.5から7.8時間、週末は8.0から8.7時間の睡眠時間が最も望ましいことが特定されました。ただし、この最適な睡眠時間には性別による若干の差異も確認されています。
この研究は、睡眠とメンタルヘルスの複雑な関係を明らかにし、睡眠不足だけでなく睡眠過剰もうつ病のリスクを高めることが明らかになりました。これらの知見は、将来的により個別化されたメンタルヘルス促進戦略の開発に貢献する可能性があります。
ただの疲れではない「うつ病」の正体。見逃せない身体の不調とは?
編集部
今回の研究テーマに関連するうつ病について教えてください。
伊藤先生
うつ病の症状は、悲しく憂うつな気分が続く、好きだったことに興味がわかない、食欲や睡眠の変化、イライラ感、疲れやすさ、集中力の低下などがあります。また、体のだるさや頭痛、めまい、吐き気といった身体症状として現れることも多く、朝の調子が最も悪く午後から改善することが多いという特徴があります。
治療には抗うつ薬を中心とした薬物療法や、ストレスを和らげたり考え方を変化させたりするカウンセリングがおこなわれます。もし心当たりのある症状が続いているなら、早めに専門家に相談しましょう。
「長く寝ればいい」は誤解。専門医が教える睡眠時間との向き合い方
編集部
四川農業大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
伊藤先生
本研究では、睡眠時間とうつ病の有病率にU字型の関係が認められ、短すぎる睡眠だけでなく、長すぎる睡眠もうつ病リスクの上昇と関連していることが示されています。さらに、平日と週末で最適とされる睡眠時間に差がある点は、現代人の生活リズムを考えるうえで示唆に富む結果だと思います。
ただし、本研究は横断研究であるため、睡眠時間がうつ病の原因なのか、あるいはうつ病の症状として睡眠時間が変化しているのかについては慎重に解釈する必要があります。その点を踏まえたうえでも、日常診療や生活指導において「睡眠時間が極端に短い・長い状態が続いていないか」を確認する重要性を改めて示した研究だと受け止めています。
編集部まとめ
この研究により、睡眠時間とうつ病には深い関連があることが明らかになりました。睡眠不足だけでなく寝すぎもうつ病のリスクを高める可能性があるとされています。うつ病は日本人にとって身近な病気であり、適切な治療で改善が期待できます。日々の生活では、平日も週末も極端に短い睡眠や長すぎる睡眠を避け、7〜8時間程度の質の良い睡眠を心がけることが、メンタルヘルスの維持に役立つポイントといえるでしょう。




