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「ペットボトルに含まれるマイクロプラスチック」は健康に影響するのか 研究の見解を医師が解説

 公開日:2025/12/23

コンコルディア大学の研究員らは、ペットボトルなどの使い捨てプラスチック製飲料ボトルに含まれるナノ・マイクロプラスチックの健康影響を検討したレビュー論文を発表しました。研究では、人々が年間に数万個のマイクロプラスチックを摂取しており、ペットボトル飲料水を日常的に飲む人では、その数が最大約9万個多くなる可能性が示されています。今回は、この研究内容について浅川先生にお話を伺いました。

浅川 貴介

監修医師
浅川 貴介(医師)

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【経歴】
2004年 私立海城高等学校卒業
2010年 私立東邦大学医学部卒業 医師免許取得
2012年 公益財団法人日産厚生会玉川病院
2016年 東邦大学医療センター大橋病院 腎臓内科
2018年 医療社団法人七福会ホリィマームクリニック
2022年 浅川クリニック
【免許・資格】
・医学博士
・日本内科学会総合内科専門医
・日本腎臓学会腎臓専門医
・日本透析医学会透析専門医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・東京都福祉局認定難病指定医

研究グループが発表した内容とは?

編集部

コンコルディア大学の研究員らが発表した内容を教えてください。

浅川 貴介先生浅川先生

今回紹介する論文は、有害物質および環境科学分野で国際的に評価の高い学術誌「Journal of Hazardous Materials」に掲載されたレビュー論文です。本論文では、ペットボトルなどの使い捨てプラスチック製飲料ボトルに含まれるナノプラスチックおよびマイクロプラスチックが、人の健康や生態系に与える慢性的な影響について包括的に検証しています。著者らは、141件を超える既存の科学論文を精査し、ボトル入り飲料水を通じたNMP曝露の実態とリスクを整理しました。

ナノプラスチックやマイクロプラスチックは体内に取り込まれる可能性が指摘されていますが、多くは消化管を通過し体外に排出されると考えられており、体内にどの程度残留するのかは明確ではありません。ボトル入り飲料水を日常的に飲む人は、水道水を主に飲む人と比べて、最大で約9万個ほどの粒子を摂取している可能性があると報告されています。ただし、これらは粒子数の推計であり、体内への吸収率や健康影響との直接的な関係については不明な点が多いとされています。一方で、文献間ではナノプラスチックおよびマイクロプラスチックの粒子数やサイズに大きなばらつきがあり、粒子の物理的特性に関する情報も十分とは言えない現状が明らかになっています。

この論文によると、ナノプラスチックやマイクロプラスチックは体内に取り込まれる可能性があり、一部の研究では、動物実験や細胞実験の結果から、呼吸器系や生殖機能、神経系への影響、さらには発がんリスクとの関連が指摘されることもありますが、これらが人で同様に起こるかどうかは現時点では明らかではありません。測定手法や評価基準が統一されていないため、健康影響を正確に評価することが難しいという課題も指摘されています。

ペットボトル以外の摂取源はあるのか?

編集部

ペットボトル以外にも、ナノプラスチックやマイクロプラスチックが含まれている可能性のあるものには、どのようなものがあるのでしょうか?

浅川 貴介先生浅川先生

ナノプラスチックやマイクロプラスチックは、ペットボトルに限らず、私たちの身の回りのさまざまなものを通じて食品に含まれる可能性があります。プラスチックは包装材だけでなく、繊維製品や家庭用品、建材など幅広く使われており、環境中に蓄積されたプラスチックが時間とともに細かく分解されることで、土壌や水、大気を汚染します。こうした環境汚染の影響により、食品が栽培・飼育される過程で、食塩や海産物、飲料水、乳製品などに微細なプラスチック粒子が含まれることが報告されています。

一方で、現時点の科学的証拠では、食品中で検出されるレベルが健康リスクをもたらすとは示されていません。過度に不安を抱くのではなく、正確な情報を知り、日常生活では環境への配慮を意識した行動を心がけていきましょう。

研究内容への受け止めは?

編集部

コンコルディア大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

浅川 貴介先生浅川先生

今回のレビュー論文は、ナノプラスチックおよびマイクロプラスチックへの曝露の実態を整理し、現時点で分かっていることと、今後明らかにしていくべき課題を示した点で、意義のある研究だと受け止めています。特に、私たちが日常的に口にしている飲料水や食品を通じて、無意識のうちにこうした物質に接触している可能性があるという視点は、環境問題と健康を考える上で重要だと思います。

一方で、医師の立場から見ると、現時点では、食品や飲料から摂取されるナノ・マイクロプラスチックが、ヒトに明確な健康被害を引き起こすと示した臨床的なエビデンスは十分ではありません。多くの報告は動物実験や細胞実験、あるいは環境中での検出データが中心であり、実際にヒトの健康にどの程度影響するのかについては、今後の長期的な研究の蓄積が必要だと考えます。そのため、この研究結果だけをもとに過度に心配する必要はありませんが、プラスチックとの付き合い方や、環境への配慮を改めて考えるきっかけとして受け止めることは大切でしょう。日常生活では、現実的にできる範囲で環境負荷を減らす選択を心がけつつ、今後の研究動向を冷静に見守っていく姿勢が重要だと感じています。

編集部まとめ

今回紹介したレビュー論文では、使い捨てプラスチック製飲料ボトルを含む日常生活の中で、私たちがナノプラスチックやマイクロプラスチックにさらされている可能性があることが示されました。一方で、現時点では食品や飲料中に検出されるレベルが、直ちに健康リスクをもたらすと断定できる科学的根拠は十分ではありません。過度に不安になるのではなく、正しい情報を理解したうえで、環境への配慮や日常の選択を見直すことが大切と言えるでしょう。

この記事の監修医師