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“緑茶習慣”で脳の健康を守る! 1日2~3杯で「認知機能障害」リスク低下 慶應大の研究結果

 公開日:2025/09/08

慶應義塾大学の研究員らは、緑茶やコーヒーの摂取習慣と認知症リスクの関連を検討しました。コホート研究の結果、緑茶を1日2〜3杯飲む人は、飲まない人と比べて認知機能低下のリスクが有意に低いことが明らかになりました。特に男性において強い保護効果が認められたほか、コーヒーについても高齢者で効果が示されました。この内容について勝木医師に伺いました。

勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

研究グループが発表した緑茶やコーヒーの摂取習慣と認知症リスクに関する内容とは?

緑茶やコーヒーの摂取習慣と認知症リスクに関する内容を教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

今回紹介する研究報告は、緑茶とコーヒーの摂取が中年期における認知症予防に及ぼす影響を検討した縦断的コホート研究です。対象となったのは、1995年時点で44〜66歳の1155名であり、緑茶およびコーヒーの摂取量は1995年と2000年に質問票を用いて評価されました。その後、2005~2015年にかけて神経心理学的評価をおこない、多領域にわたる認知機能低下や重篤な状態をアウトカムとして解析しました。 ロジスティック回帰分析により潜在的交絡因子を調整した結果、緑茶を1日2~3杯摂取する人は、認知機能低下のリスクが有意に低下することが明らかになりました(オッズ比0.56、95%信頼区間0.35~0.91)。一方で、4杯以上の摂取では有意な効果は認められませんでした。特に、この効果は男性において顕著であり、オッズ比0.38(95%信頼区間0.19〜0.76)と報告されています。また、コーヒーについては、1日1杯以上の摂取で高齢群(1995年時点で53歳以上)において、認知機能低下のリスク低下が確認されましたが、全体集団では統計的に有意な効果は得られませんでした。 これらの結果から、中年期における適度な緑茶摂取は、特に男性において認知症予防に有益である可能性が示唆されました。さらに、コーヒー摂取は高齢者においてより効果的である可能性があり、飲用習慣の違いが将来的な認知機能維持に影響を与えることが示されています。

緑茶に含まれる成分は? どんな健康効果がある? 1日に何杯まで?

緑茶に含まれる成分について教えてください。一体、どのような健康効果がありますか? また、1日に何杯までなら飲んでも問題ないでしょうか?

勝木 将人先生勝木先生

緑茶には、様々な成分が含まれており、それぞれが健康に良い働きを持っています。渋みの正体である「カテキン類(タンニン)」は、ポリフェノールの一種で、抗酸化作用により動脈硬化や脳梗塞の予防に役立ちます。また、「カフェイン」は覚せい作用や利尿作用があり、疲労感や眠気対策にも有効です。日本茶特有の旨味成分である「テアニン」にはリラックス効果があり、集中力の向上にもつながります。さらに、「ビタミンC」を豊富に含むことが特徴で、皮膚や粘膜の健康維持や美肌効果も期待できます。加えて、「ギャバ」と呼ばれる成分は脳細胞を活性化し、精神を安定させる作用があります。 摂取量の目安としては、煎茶なら1日200mlのコップで10杯程度までであれば問題ないとされています。体質や体調によりカフェインの影響は異なるため、無理のない範囲で楽しむことが大切です。緑茶を上手に取り入れて、健康維持に役立てていきましょう。

緑茶とコーヒー、どっちが健康に良い?

緑茶とコーヒー、どっちの方が健康に良いのかについて教えてください。

勝木 将人先生勝木先生

緑茶とコーヒーはいずれも健康に良い働きを持っていますが、今回の研究ではその効果に違いがあることが示されました。緑茶については、1日2~3杯の適度な摂取で認知機能低下のリスクが有意に低下し、特に男性で強い保護効果が認められました。一方で4杯以上では効果が頭打ちになる可能性が示されており、たくさん飲めばいいというわけではありませんでした。コーヒーについては、1日1杯以上の摂取で高齢者において認知機能低下リスクが低下しましたが、全体では有意な効果は確認されませんでした。 この結果から、緑茶は中年期からの習慣として認知症予防に役立ちやすく、コーヒーは加齢とともに有効である可能性があると受け止めることができます。つまり、「どちらが良いか」というより、年代や性別によって適した飲み方が異なると考えるのが妥当です。また、カフェインの摂り過ぎによる頭痛や睡眠障害も起き得るため、いずれも適量を守って日常の中で無理なく取り入れることが大切です。緑茶もコーヒーもバランスよく楽しみながら、健康維持に役立てていきましょう。

編集部まとめ

今回の研究では、緑茶を1日2~3杯飲むことで認知機能低下のリスクが下がり、特に男性で効果が強いことが示されました。大切なのは飲みすぎず、日常に無理なく取り入れることです。自分の体調や生活習慣に合わせて緑茶やコーヒーを楽しみ、毎日の健康維持に役立てていきましょう。

この記事の監修医師