赤肉・加工肉を食べるほど「認知症」リスク上昇 “脳の老化”が加速する恐れ 研究で判明

ハーバード大学の研究員らは、ベーコンやソーセージなどの食品が、認知症の発症や認知機能の老化にどのような影響を与えるのか調査しました。その結果、赤身肉、特に加工赤身肉の摂取量が多い人ほど、認知症の発症リスクや認知機能の低下リスクが高まることを研究で明らかにしました。この内容について本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
研究グループが発表した内容とは?
ハーバード大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
ハーバード大学の研究員らは、アメリカで実施された全国規模の前向きコホート研究を通じて、赤身肉、特に加工赤身肉の摂取が、認知機能の低下や認知症の発症リスクと関連していることを明らかにしました。研究では、看護師健康調査(NHS)と医療専門家追跡調査(HPFS)の参加者13万人以上を対象に、長期的な食習慣と認知機能の変化を追跡しました。 研究の結果、加工赤身肉を1日0.25サービング(SV)以上食べる人は、ほとんど食べない人と比べて認知症のリスクは13%、主観的認知機能低下のリスクは14%高くなることが判明しました。また、加工赤身肉の摂取が1日1サービング増えるごとに、認知能力や記憶能力が約1.6歳分早く老化する傾向もみられました。さらに、加工されていない赤身肉でも1日1サービング以上の摂取で、認知機能の自己評価において悪化の傾向がみられました。一方で、加工赤身肉をナッツや豆類に置き換えることで、認知症リスクが19%低下し、加齢による認知機能の低下も1. 4年分ほど遅らせる可能性があるとされています。 研究者らは、「赤身肉の摂取量を減らすことが認知機能の維持に役立つ可能性があり、今後の食事ガイドラインに反映されるべきである」と提言しています。
認知症リスクを高める食品とは?
今回の研究結果以外に認知症リスクを高める食品があれば教えてください。また、認知症予防に効果的な食品はありますか?
今回の研究結果に加えて、動物性脂肪を多く含むラードやヘット、さらにマーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸も、認知症リスクを高めるとされています。これらの脂質は動脈硬化を進行させ、脳梗塞などの発症につながり、結果として脳血管性認知症の危険性が高まります。 一方で、青魚に多く含まれるDHAやEPA、葉酸を含む緑黄色野菜や豆類、果実、さらにウコンに含まれるクルクミンや、コーヒーや赤ワインのポリフェノールなどは、抗酸化作用や血管保護作用により、認知症の予防に効果があるとされています。また、自分で調理をおこなうことも、脳と身体の両方を活性化させる点で有効です。 日々の食生活を見直し、脳にやさしい食品を意識して取り入れていきましょう。
研究内容への受け止めは?
ハーバード大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
内科専門医として、今回のハーバード大学による研究結果は非常に示唆に富むものと受け止めています。赤身肉、特に加工された赤身肉の過剰摂取が認知機能低下や認知症リスクの上昇と関連するという知見は、これまでの疫学研究を補強する重要なエビデンスです。日々の診療では、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病が脳血管性認知症のリスク因子となることは多く目にしますが、今回の研究は食習慣そのものが長期的な脳の健康にも影響を与えることを明確に示しています。患者さんにも赤身肉や加工食品の摂取が認知機能の低下につながることを伝えながら、魚・豆類・果実などの脳に優しい食品を多く取り入れるよう医師として指導していく必要があると感じています。
編集部まとめ
赤身肉、特にベーコンやソーセージなどの加工肉を日常的に摂取することで、認知症や脳の老化リスクが高まる可能性があるとハーバード大学の研究で示されました。一方で、青魚や緑黄色野菜、豆類、果物、スパイスやお茶に含まれる成分には、認知機能の維持に役立つものが多くあります。毎日の食事を少し意識することで、脳の健康を守る第一歩になります。食べすぎず、偏らず、脳にやさしい食生活を心がけましょう。




