目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. 「エイズ」は予防できる時代に? “年2回の注射”で原因のHIV感染を99.9%防ぐ新薬が登場

「エイズ」は予防できる時代に? “年2回の注射”で原因のHIV感染を99.9%防ぐ新薬が登場

 更新日:2025/07/16

FDA(アメリカ食品医薬品局)は、製薬企業ギリアド・サイエンシズ社が開発したHIV-1カプシド阻害剤「レナカパビル」をHIV感染の曝露前予防内服(PrEP)として新たに承認しました。HIVの感染を年2回の注射で99.9%予防する効果が示されたことから、注目を集めています。この内容について水戸医師に伺いました。

水戸 陽貴

監修医師
水戸 陽貴(中通総合病院)

プロフィールをもっと見る
旭川医科大学卒業 。現在は中通総合病院内科科長。専門は感染症科、総合内科。

HIVに関するニュース内容

今回のニュース内容を教えてください。

水戸 陽貴 医師水戸先生

製薬企業ギリアド・サイエンシズ社は、新たなHIV予防薬「レナカパビル」をFDAが承認したと発表しました。レナカパビルは注射剤で、体重35kg以上の成人および青年を対象に、性行為によるHIV感染リスクを低減する曝露前予防として使用されます。レナカパビルは、年2回の投与で済むという特徴があります。第3相試験PURPOSE1および2では、投与を受けた参加者の99.9%以上がHIV陰性を維持するという高い有効性が示されました。 ギリアド・サイエンシズ社・CEOのダニエル・オデイ氏は、「レナカパビルがHIV流行の終息に向けた重要な一歩であり、予防の分野に革命をもたらす可能性がある」と述べています。

エイズとは?

HIVの感染で発症するエイズについて教えてください。

水戸 陽貴 医師水戸先生

HIVに感染すると、数週間後にインフルエンザのような発熱や筋肉痛、頭痛などの症状が表れます。その後は自覚症状のない時期が数年から十数年続きますが、免疫力は徐々に低下していきます。免疫機能が著しく低下すると、本来であれば防げるような肺炎などの日和見感染症を発症し、「指標疾患」と呼ばれる特定の病気が確認されるとエイズと診断されます。 HIVの感染経路は主に「性的接触」「血液を介した接触」「母子感染」の3つに限られ、日常生活で感染することはありません。エイズが恐ろしいとされる理由は、無症状でも感染が進行し、最終的に免疫機能が極端に低下し命に関わる感染症やがんを引き起こす可能性があるからです。また、感染者に対する偏見や差別といった社会的なスティグマも深刻な問題とされています。正しい知識と理解が、予防と差別の解消につながります。

HIVを予防する重要性

HIV予防の重要性について教えてください。

水戸 陽貴 医師水戸先生

HIVを予防するためには、血液や精子、膣分泌液などの体液が粘膜や傷のある皮膚に触れないようにすることが大切です。特に性行為は最も多い感染経路であり、コンドームの使用が非常に重要です。オーラルセックスでも感染の可能性があるため、専用のシートなどを使うことも推奨されています。ただし、コンドームは正しく使用して初めて高い予防効果を発揮するため、性行為の開始から終了まで装着し続けることに加え、破損にも注意が必要です。 こうした中で、ギリアド・サイエンシズ社が開発したHIV予防薬レナカパビルのような新たな選択肢が登場したことは、感染予防の可能性をさらに広げる意義ある進展と言えるでしょう。

編集部まとめ

HIVは、適切な予防策を講じることで防ぐことが可能な病気です。HIVやエイズについての正しい知識を持ち、偏見や差別をなくす意識を広げながら、科学の進歩を活かした予防行動を社会全体で促進していくことが重要です。

この記事の監修医師