腸内細菌が“がんの引き金”に?「大腸がん」増加の新たな原因が明らかに、若年層にも影響か

スペイン国立がん研究センターの研究員らは、大腸がんの変異過程における地理的および年齢的な違いについての研究成果を発表しました。研究の結果、細菌由来の毒素「コリバクチン」によるDNA変異が、若年発症の大腸がんに大きく関与していることが明らかになりました。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
研究グループが発表した大腸がんに関する研究内容とは?
スペイン国立がん研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。
スペイン国立がん研究センターの研究員らは、11カ国981例の大腸がんゲノムを調査し、腸内細菌が作り出す「コリバクチン」という毒素によって引き起こされる特有の変異(SBS88およびID18)が、特に日本を含む高発症国で多く確認されたとしています。これらの変異は40歳未満の患者で特に多く、がんのごく初期にすでに組み込まれていたことが示唆されています。さらに、がんの原因となるAPC遺伝子の変異の一部もコリバクチンに関連していることがわかりました。こうした知見は、幼少期からの腸内環境や細菌との関わりが、大腸がんのリスクに大きく影響することを意味しています。
研究テーマになった大腸がんとは?
日本における大腸がんの年代・男女での罹患状況を教えてください。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)
大腸がんの発生には、喫煙や過度の飲酒、運動不足、肥満、食物繊維の不足などの生活習慣が関与しています。予防のためには、禁煙、節度ある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動、適正な体重の維持が推奨されています。日々の生活習慣を見直し、定期的な検診を受けることで、大腸がんの予防と早期発見に努めましょう。大腸がんに関する研究内容への受け止めは?
スペイン国立がん研究センターの研究員らが発表した大腸がんに関する研究内容への受け止めを教えてください。
今回の研究は、腸内細菌が作り出すコリバクチンという毒素が、若年発症の大腸がんに関与している可能性を示唆した非常に意義深い報告です。特にSBS88やID18といった特異的なDNA変異が、発症初期から組み込まれている点は注目すべきであり、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の質ががんの発症と直結する可能性を強く示しています。 この知見は、将来的に大腸がんの新たな予防戦略やスクリーニングマーカーの開発につながる可能性を秘めています。特に若年層では、従来の生活習慣リスクに加え、腸内細菌叢の構成や抗菌薬使用歴、母子間での腸内細菌の垂直伝播なども含めた複合的な評価が必要となるでしょう。腸内環境を整える食生活やプロバイオティクスの役割も、今後さらに検討されていくべき課題です。
編集部まとめ
今回の国際研究により、腸内細菌がつくる毒素のコリバクチンが若年層の大腸がんに関与している可能性が明らかになりました。特に40歳未満の患者では、特有の遺伝子変異が高頻度にみられました。日本でも大腸がんは男性を中心に高齢者で増えていますが、若年層にも注意が必要です。生活習慣を整え、腸内環境を良好に保ちつつ、定期的な検診で早期発見を心がけましょう。





