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“身近な食品”が寿命を縮める 「超加工食品」の食べ過ぎで死亡リスク上昇【8カ国調査】

 更新日:2025/06/10

ブラジルのサンパウロ大学公衆衛生学部健康・栄養疫学研究センターの研究員らは、8カ国における超加工食品の摂取と早期死亡との関連を調査しました。その結果、「超加工食品の摂取割合が10%増加するごとに、全死亡率のリスクは有意に上昇する」という関連性が確認されました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

サンパウロ大学公衆衛生学部健康・栄養疫学研究センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

ブラジルのサンパウロ大学公衆衛生学部健康・栄養疫学研究センターの研究員らによる研究では、2023年11月~2024年7月にかけて、8カ国を対象に超加工食品の摂取と早期死亡との関連を検討する研究が実施されました。研究では、観察コホート研究をもとに用量反応メタアナリシスがおこなわれました。 その結果、超加工食品の摂取割合が10%増加するごとに、全死亡率(RR)の相対リスクは1.03(95%信頼区間:1.02〜1.04)とわずかではあるものの有意に上昇することが明らかになりました。さらに、コロンビアやブラジルなどの摂取量が少ない国から、オーストラリア、カナダ、イギリス、アメリカといった摂取量が多い国まで、8カ国において超加工食品の摂取に起因する早期死亡率の人口寄与割合が推定され、最も低いコロンビアでは4%、最も高いイギリスとアメリカでは14%に達すると報告されています。 この研究は、超加工食品が国民の健康に与える影響の大きさを示しており「超加工食品の摂取量の削減は、各国の食事ガイドラインや公衆衛生政策で取り上げられるべきである」と結論づけています。

超加工食品とは?

超加工食品とはどんな食品ですか? 食べると体にどのような悪影響がありますか?

中路 幸之助 医師中路先生

超加工食品とは、自然の食品をほとんど含まず、食品由来物質や添加物を多く使用して工業的に作られた食品のことです。清涼飲料水、スナック菓子、加工肉、冷凍食品、甘いシリアルなどが代表例です。これらの食品は高カロリーで、砂糖・塩分・脂肪が多い一方、ビタミンやミネラル、食物繊維が不足しているという傾向があります。また、複数の添加物の組み合わせや、高温調理によって生じる有害物質が、健康に悪影響を与える可能性も指摘されています。さらに、手軽さと美味しさから過食を招きやすく、食欲を調整するホルモンの働きにも影響を及ぼすことがあります。 超加工食品を完全に避けることは難しいものですが、栄養バランスを考えながら、日々の食事で「頼りすぎない」工夫を心がけましょう。

研究内容への受け止めは?

サンパウロ大学公衆衛生学部健康・栄養疫学研究センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

日本での超加工食品の健康リスク認識は、欧米と比較すると比較的低い傾向にあります。その理由として、日本では伝統的な和食文化が守られており、欧米ほど超加工食品の摂取割合が高くないことが挙げられます。しかし、若年層や単身世帯などでは超加工食品の摂取が増加しており、これらの層での健康リスクへの関心が高まってきています。メディアなどで超加工食品の摂取が健康リスクを上昇させる研究結果が紹介され、注意喚起がおこなわれています。その一方で「超加工食品を避けることは現代生活では困難」との見解もあり、利便性と健康とのバランスをとることが一般的かもしれません。

編集部まとめ

今回の研究は、日常的に口にしている超加工食品が、少しずつ私たちの健康を蝕んでいる可能性を示しています。美味しくて便利な食品は、つい手が伸びてしまいますが、健康への影響を考えると、摂取頻度や量には注意が必要です。まずは、未加工や手作りの食品を一品でも増やすことから始めてみましょう。

この記事の監修医師