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「大腸がん」が50歳未満で増加中、発症に関与する“3つの要因”が浮き彫りに 米研究

 公開日:2025/01/15

2025年1月、アメリカのジョージア州アトランタのがんサーベイランス研究上席主任研究員ヒュナ・ソン(Hyuna Sung)博士らの研究グループは、若年者と高齢者の大腸がん罹患傾向について、人口ベースのがん登録データの分析を公表し、高所得国を中心に若年成人(25~49歳)の大腸がん罹患率が上昇しているという結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

ヒュナ・ソン博士らが発表した研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究報告は、アメリカ・ジョージア州アトランタのがんサーベイランス研究 上席主任研究員ヒュナ・ソン博士らの研究グループによるもので、医学雑誌「The Lancet」に掲載されています。

近年、高所得国を中心に、若年成人(25~49歳)の大腸がん罹患率が増加している一方、高齢者(50~74歳)の罹患率は横ばい、または減少している国もあります。研究では、50の国と地域を対象に、若年成人と高齢者における大腸がん罹患率の動向を包括的に評価しました。

若年成人の大腸がん罹患率は27カ国で増加傾向を示し、特にニュージーランド、チリ、プエルトリコ、イギリスで高い年間平均増加率(AAPC)が確認されました。しかし一方で、高齢者の罹患率は14カ国で横ばい、または減少傾向を示しました。大腸がんの罹患率が増加した13カ国では、若年成人の増加率が高齢者を上回る傾向がみられ、若年層における罹患率の増加速度には性別による地域差があり、国によって男性が早い場合や女性が早い場合があると明らかになりました。また、調査した50カ国・地域のうち27カ国では、若年成人の罹患率増加が顕著であり、そのうち20カ国では特に若年層の増加に集中していました。

この結果は、若年成人の大腸がん罹患率増加の要因を特定し、早期発見を促進するための取り組みを強化する必要性が強調されています。がん登録データを用いて各国の罹患率動向を明らかにし、各国の状況に応じた予防策や政策の策定に役立てることを研究の目的としており、若年成人の罹患率増加が示唆する課題に対応するため、原因の解明と早期診断の推進が必要となります。

早発性大腸がんの増加は、かつて高所得の欧米諸国に限られていましたが、現在では世界中の様々な地域で報告されるようになり、国際的な問題となっています。この傾向に対応するためには、栄養状態、運動不足、肥満に関連するがんを予防・制御する革新的な手段が必要です。また、地域の文化に適した予防戦略を実施するためには国際的な協力が不可欠としています。

研究内容への受け止めは?

研究結果の受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

本研究は、早発性大腸がんの傾向を把握することで効果的な予防策を開発するための重要なデータとなる可能性があり、貴重な研究であると考えます。今後、このような研究を国際共同治験として展開し、各国のデータを共有し分析することで、よりグローバルな早発性大腸がんの対策を立てることができるかもしれません。

今後どのように活用できそうか?

今回取り上げた研究結果は、今後どのようなことに活用できるものでしょうか?

中路 幸之助 医師中路先生

本研究は、「食習慣の変化」「運動不足」「肥満」の3つが早期大腸がんの増加に関与している可能性を指摘しており、これらの要因にフォーカスした予防戦略を国際的に立てることが可能と考えます。具体的には、若年層の運動習慣の促進、食生活の改善などのプランを各国で実施することなどが挙げられます。加えて、若年層とプライマリケア提供者の間での認識を高めることで、早期診断を促し、死亡率を低下させることができるかもしれません。今回の研究結果を活かし、各国で大腸がんの若年層向けの啓発活動や検診プログラムの見直しをおこなうことができるでしょう。

まとめ

アメリカのジョージア州アトランタのがんサーベイランス研究上席主任研究員ヒュナ・ソン(Hyuna Sung)博士らの研究グループは、若年者と高齢者の大腸がん罹患傾向について、人口ベースのがん登録データの分析を公表し、高所得国を中心に若年成人(25~49歳)の大腸がん罹患率が上昇しているという結果を発表しました。若年成人の増加は国・地域によって性別にも違いがあり、原因の特定や大腸がんの早期発見を促進する必要性を強調しています。大腸がんは生活習慣が大きく関与しているとされており、食事や適度な運動で自身の健康管理に努めることが重要です。

この記事の監修医師