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【新型コロナ】ワクチンに続いて中和抗体薬も“大量廃棄” 約162万人分を処理へ 厚労省

 更新日:2024/08/06

厚生労働省は、約162万人分の新型コロナウイルス治療用「中和抗体薬」の廃棄案を専門家委員会に示し、了承されました。このニュースについて、郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

専門家委員会が了承した案とは?

専門家委員会が了承した厚生労働省の案を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

厚生労働省は2024年7月24日に開かれた専門家委員会で、中和抗体薬の「ロナプリーブ」約124万人分、「ゼビュディ」約27万人分、「エバシェルド」約11万人分の廃棄案を示しました。そして、専門家委員会はこの案を了承しました。今後、別の専門家部会に意見を聞いた上で最終決定することとなり、合わせて約162万人分の中和抗体薬が廃棄されることになります。

中和抗体薬は2021年7月以降に承認され、厚生労働省が必要な量を確保してきました。ただ、新型コロナウイルスの変異によって治療効果が下がり、異なるタイプの抗ウイルス薬が優先的に使われるようになっています。また、中和抗体薬は一般流通されず、国が希望する医療機関に配分する方式を取ってきましたが、新型コロナウイルスをめぐる医療体制が通常の医療体制に移行したことによって、5月末で配分が終了していました。

中和抗体薬が廃棄されることの受け止めは?

中和抗体薬の廃棄が専門家委員会に了承されたことについて受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

新型コロナウイルスが感染症法上の5類に分類されるようになってから、医療機関での取り扱いも若干変わっている印象があります。これまでは、「どんな人でも重症化する可能性は高い」と考え、効果が高いと思われる薬を軽症例にも使用していた場合が多くなっていました。しかし現在では、患者背景や状態を鑑みて治療を適切に選択していることが多くなっています。その中で、中和抗体薬は軽症に投与するにはややオーバーですし、重症例に対しては投与しにくいという背景があり、使用が敬遠されるようになりました。これも新型コロナウイルスに対する治療の変遷によるものと考えていいでしょう。

新型コロナ感染予防で大事なことは?

新型コロナをめぐっては変異株の「KP.3」などの影響で感染が拡大しています。改めて感染予防で大事なことについて教えてください。

郷 正憲医師郷先生

あまり報道されていませんが、現在の感染状況は過去と比べてより強く広範囲に拡大しています。KP.3の感染力が非常に強いことに加え、室外が暑いことから締め切ってエアコンを効かせた室内に閉じこもって感染が拡大するという面もあります。デルタ株と比べて重症化率は下がっていますが、それでもこれだけ感染者数が増加すると、医療機関で対応困難な数の重症者が発生するでしょう。沖縄では医療崩壊手前状態にもなっているので、ほかの都道府県も含めてより一層の感染対策をおこなう必要があるでしょう。手洗いうがい、マスクを含めた咳エチケット、こまめな換気など基本的な感染対策が重要です。

まとめ

厚生労働省は、新型コロナウイルス治療用の中和抗体薬約162万人分を廃棄する案を専門家委員会に示し、了承されました。一方、抗ウイルス薬については、厚生労働省で約435万人分の保管を続けるそうですが、使用期限を迎えたものは順次廃棄する方針となっています。

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