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「梅毒」に感染した妊婦 2023年は383人と過去最多、都心部の20代前半に顕著

 公開日:2024/05/07

2023年に性感染症の梅毒と診断された妊婦が383人(速報値)と、統計を開始した2019年以降で最も多くなったことが国立感染症研究所によって明かされました。このニュースについて佐藤医師に伺いました。

佐藤 綾華

監修医師
佐藤 綾華(医師)

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北海道大学医学部医学科卒業。宮城県の急性期病院で初期研修修了後、産婦人科を専攻し、宮城県の複数の総合病院で勤務したのち産婦人科専門医を取得。生殖医療分野と女性医学分野に興味を持ち、日本女性心身医学会認定更年期指導士の資格も取得。

国立感染症研究所が発表した内容とは?

国立感染症研究所が発表した内容について教えてください。

佐藤 綾華医師佐藤先生

国立感染症研究所が実施した梅毒に関する調査によると、2023年に梅毒と診断された妊婦は速報値で383人となっており、現在の調査方法を開始した1999年以降で最多の患者数となりました。国立感染症研究所は「患者数の増加に伴って、妊婦が梅毒に感染する件数も増加している」と指摘しています。

梅毒に感染した妊婦の統計は2019年から取られており、2019年は208人、2020年は185人、2021年は187人と、概ね200人前後で推移していました。しかし、2022年は267人、2023年は383人と増加傾向にあり、それぞれ前年の1.4倍に増えていました。また、2021年以降に女性の梅毒患者数が大幅に増加していた中、2023年は妊婦の梅毒患者数だけでなく、女性患者内での割合も増加していました。

都道府県別に状況を分析すると、2023年は東京都、大阪府、愛知県の順で妊婦の梅毒感染者が多くなりました。2022年は東京都、大阪府、福岡県の順番だったため、2年間を通じて東京都、大阪府が1位、2位となりました。

梅毒に感染した妊婦の5歳毎の年齢群別では、2022年、2023年ともに20~24歳の年齢群が最も多くを占め、非妊娠例でも概ね同様でした。

梅毒とは?

今回取り上げる梅毒について教えてください。

佐藤 綾華医師佐藤先生

梅毒は、他人の粘膜や皮膚と直接接触するなどの性的な接触などによって感染する病気です。梅毒トレポネーマ」という病原菌が原因で、症状として出てくる赤い発疹が楊梅(ヤマモモ)に似ていることに病名が由来しています。

梅毒に感染したかどうかは、医師による診察血液検査(抗体検査)で判断します。感染が明らかになったときの一般的な治療方法としては、外来で処方される抗菌薬の内服です。内服期間などはステージによって異なるので、医師が判断することになります。症状によっては、注射薬による治療や入院し点滴で抗菌薬の治療をおこなうこともあります。

梅毒は検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こし、死亡に至ることもあります。

国立感染症研究所が発表した内容に対する受け止めは?

国立感染症研究所が実施した妊婦の梅毒感染に関する発表について、受け止めを教えてください。

佐藤 綾華医師佐藤先生

梅毒感染が女性の間で急上昇しており、それにより妊婦の感染者も増加傾向にあることが発表されました。胎盤を通じて胎児に感染してしまうと、流産・早産や子宮内胎児死亡、胎児発育不全の原因となります。また、生まれてきた場合にも先天梅毒により、骨や脳神経、目、耳などの臓器に障害を残す可能性があります。

妊婦健診では、妊娠初期に梅毒感染のスクリーニング検査をしているので、定期的に健診を受けて早期発見・治療することが重要となります。また、どこの医療機関に受診しないまま出産を迎える「未受診妊婦」が、梅毒感染などで胎児に影響を及ぼす可能性が高くなります。未受診妊婦を減らす取り組みも、より一層強化される必要がありそうです。

まとめ

国立感染症研究所によると、2023年に性感染症の梅毒と診断された妊婦は速報値で383人となり、統計を開始した2019年以降で最も多くなったことが明らかになりました。妊婦健診では梅毒検査もできるので、母子感染のリスクを減らすためにもこうした検査をしっかり受けることが重要になりそうです。

この記事の監修医師