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「痛み止めとして大麻を利用」アメリカで利用者増加中、日本での導入は?

 公開日:2023/03/07
アメリカの慢性痛患者の25.9%が過去12ヶ月以内に医療用大麻使用

アメリカのミシガン大学らの研究グループは、慢性痛患者が鎮痛剤として医療用大麻を使用している実態について調査した結果、過去12カ月に使用したことがある人が25.9%だったと発表しました。このニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

ミシガン大学らが発表した内容とは?

ミシガン大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回取り上げる研究は、アメリカのミシガン大学らの研究グループがアメリカの医師会雑誌「JAMA」で発表した内容です。調査は2022年3~4月に実施され、その時点で医療用大麻が利用可能だったアメリカの36州と首都ワシントンに住む18歳以上の1724人を対象におこなわれました。慢性痛の定義は「がんと関連がなく、過去6カ月間にわたり毎日あるいは大半の日に生じる痛み」とされています。

調査によって、慢性痛患者の31.0%が痛みを管理するために大麻を使ったことがあるという結果が判明しました。また、過去12カ月で大麻を使用したことがある人は25.9%、過去30日間で使用したことがある人は23.2%でした。慢性痛を管理するために大麻を使ったと答えた人のほとんどは、ほかの薬物療法なども受けていたとのことです。慢性痛の管理に大麻を使用している成人の半数以上が、大麻の使用により処方オピオイド、処方非オピオイド、市販の痛み止めの使用が減少したと回答し、大麻の使用によりこれらの薬の使用が増加したと回答したのは1%未満でした。大麻の使用により理学療法の利用が減った人は38.7%、増えた人は5.9%でした。大麻の使用により瞑想をすることが減った人は19.1%、逆に増えたと答えたのは23.7%、認知行動療法の利用が減ったと答えたのは26.0%、逆に増えたと答えたのは17.1%でした。

発表への受け止めは?

ミシガン大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

日本ではあまり想像できませんが、アメリカでは医療用大麻が一般的な痛み止めの上位に存在し、利用されています。日本で使用されている痛み止めとしては、一般的な痛み止めのほかに麻薬が使用可能ですが、副作用も多いため量の加減が非常に難しいものです。一方で、医療用大麻は量の加減がややアバウトでも使用可能で、副作用も少なめです。ただし、乱用するとやはり副作用が非常に強く出てきますから、使用には注意が必要となります。

今回の研究結果は、「麻薬の使用量を減らすことができた」ということが麻酔科医としては注目すべき点です。副作用の多い麻薬を減らせることがはっきりしたので、今後医療用大麻の使用範囲は広がるでしょう。日本での導入は未知数ですが、使用可能になれば新しい選択肢が増えることになり、痛みに困っている患者さんにとっては朗報になると思われます。

医療用大麻をめぐる日本の動きは?

医療用大麻をめぐる日本での動きについて教えてください。

郷 正憲医師郷先生

日本での医療用大麻の取り扱いをめぐっては、厚生労働省の大麻規制検討小委員会では2022年から4回にわたって議論がおこなわれました。会合では、大麻取締法などの施行状況と課題、大麻関連障害患者の特徴と国内における治療・支援体制、大麻の適正な利用の促進、適切な栽培や管理の徹底などについての協議されました。

4回目の会合で実施された取りまとめでは、国内で禁止されている大麻を原料とした医薬品について、有効性や安全性が確認されていて薬機法に基づいて承認されたものに関しては、輸入・製造・使用を可能とするように大麻取締法を改正する方向性が示されました。さらに、麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)に基づく免許制度など、流通管理の仕組みを導入するよう求める内容も盛り込まれました。

まとめ

アメリカのミシガン大学らの研究グループが、慢性痛患者が鎮痛剤として医療用大麻を使用している実態について調査した結果、過去12カ月に使用したことがある人が25.9%だったと発表しました。日本でも医療用大麻の解禁については議論がおこなわれており、今回の研究結果にも注目が集まりそうです。

この記事の監修医師