「オミクロン株」対応ワクチン接種10月中にも開始へ、対象は2回目までの接種を終えた全ての人
厚生労働省は8月8日、厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)で、新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンを2回目までのワクチン接種を終えた全ての人を対象に、10月中旬以降に開始する方針を決めました。このニュースについて中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医師)
厚生労働省が決めた方針とは?
今回、厚生労働省が決めたワクチン接種の方針について教えてください。
中路先生
厚生労働省は8月8日に厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)を開いて、国内で流行しているオミクロン株に対応したワクチンの接種について審議しました。議論の結果、オミクロン株に対応したワクチンの接種を10月中旬以降に開始し、2回目までの接種を終えた全ての人を接種対象とする方針を決めました。これには、高齢者の重症化を防ぐとともに、若い世代も含めた社会全体の免疫力を高める狙いがあります。
新しいワクチンは、従来株に由来する成分とオミクロン株の1つであるBA.1の2種類を組み合わせた2価ワクチンとなり、現在国内で流行しているBA.5に対してもウイルスの働きを抑える中和抗体の値が上昇すると見込まれています。また、ファイザー社とモデルナ社が開発中のワクチンの使用が想定されていて、薬事承認されれば9月にも輸入して自治体への配送を開始する見通しになっています。そのほか、分科会では60歳以上の人などを対象に進められている4回目接種について対象を拡大するかどうかについても議論がおこなわれましたが、現段階では拡大せずに検討を続けることになりました。なお、5~11歳の子どもへのワクチン接種については、努力義務とする方針が決まりました。
オミクロン株対応ワクチンとは?
今回のオミクロン対応ワクチンについて教えてください。
中路先生
WHO(世界保健機関)によると、従来使用されてきたワクチンでもオミクロン株を含む全ての新型コロナウイルスに対して高い重症化予防効果があるとされています。ただ、従来のワクチンはオミクロン株への感染や発症予防の効果が低く、打ってから時間が経つと効果が弱まる懸念があり、オミクロン株対応のワクチンの開発が進められてきました。2022年6月には、ファイザー社がFDA(アメリカ食品医薬品局)に臨床試験の結果を提出しました。臨床試験では56歳以上を対象にBA.1対応型ワクチンを4回目の接種で使用した結果、「従来型ワクチンを4回目に接種した人と比べて、オミクロン株の派生型BA.1に対してウイルスの働きを抑える中和抗体の値が平均で1.56~1.97倍上昇した」ことが示されました。また、現在流行しているBA.5に対しては「BA.1には劣るものの中和抗体の値の上昇がみられた」と報告されました。またモデルナ社の臨床試験では、従来のワクチンと比較してBA.1に対して平均で1.75倍上昇を示したと報告されています。
オミクロン株対応ワクチン接種の意義は?
オミクロン株対応ワクチンを接種する意義について教えてください。
中路先生
8月8日の厚生労働省の分科会で、海外でのオミクロン株に対応したワクチンについて、10月中旬からの接種に向けて準備を進めていくことが承認されました。採用されるのは、オミクロン株の1種「BA.1」に対応している2価ワクチンで、現在主流の感染力が強い同株派生型「BA.5」にも一定の効果があるとされている点に意義があると考えられます。高齢者などの重症化リスクが高い人などが予定されていましたが、現在の感染状況等を考慮して、接種の対象者は1回目と2回目の接種を終えた全ての人とする方針となりました。ただし、オミクロン株に対する効果は著明に高いとは言えないため、10月中旬以降まで接種をずらす(控える)有用性はあまりないでしょう。そのため、新型コロナウイルスが猛威をふるう現在、接種を控えるべきではないと考えます。いずれにしても、ワクチン接種の選択肢が増えることは新型コロナウイルスの対策に対して歓迎されるべきことです。
まとめ
8月8日に開かれた、厚生労働省の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会)で、新型コロナウイルスのオミクロン株に対応したワクチンを2回目までのワクチン接種を終えたすべての人を対象に、10月中旬以降に開始する方針が決まったことが今回のニュースでわかりました。分科会ではオミクロン株対応ワクチンの接種開始を待つ、いわゆる接種控えを懸念する声もあがっており、こうした点への対策も注目されます。