【新型コロナワクチン】3回目接種後の抗体価、2回目接種後よりも減少速度緩やか
川崎医科大学の研究グループは、「ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについての調査の結果、3回目の接種後の抗体価の減少スピードは2回目後より緩やかである」と発表しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
川崎医科大学が発表した内容とは?
今回、川崎医科大学が発表した調査結果について教えてください。
甲斐沼先生
今回取り上げる調査結果は、川崎医科大学が2022年6月22日に発表した内容によるものです。川崎医科大学の研究グループは、病院関係者619人分を対象に抗体価の変化を5回に分けて調べました。具体的には、1回目接種の約1週間前、2回目接種の約1カ月後、2回目接種の約6カ月後、3回目接種の約1カ月後 、3回目接種の約6カ月後に測定しました。測定方法は、シスメックス社の「SARS-CoV-2抗体 S-IgG試薬」を用いて、血清中のスパイクタンパク質に対するIgG型抗体を測定しています。調査の結果、2回目接種の約6カ月後の平均抗体価を100とすると、3回目接種の約6カ月後は499と大幅に増加していたことが明らかになりました。抗体価の減少については、2回目接種後では5カ月間で84%減少したのに対して、3回目後は64%の減少にとどまっていました。平均抗体価を年代別でみると、3回目接種の約6カ月後は、20代が492、30代が455、40代が459、50代が587、60代以上が637という結果になりました。2回目接種の約6カ月後と比較すると、20代で3.5倍、30代は5.2倍、40代は6.4倍、50代は7.1倍、60代以上では12倍と大きく抗体価は増えていました。
発表内容についての受け止めは?
川崎医科大学による発表についての受け止めを教えてください。
甲斐沼先生
今回、川崎医科大学が調査した結果によると、ワクチンの3回接種を終えた場合には2回接種時に比べてウイルス免疫獲得の指標となる抗体価が著明に上昇し、「ワクチン3回接種による感染予防効果は十分に期待できる」と考えられます。3回目のワクチン接種に関しては、すでに海外の研究で新型コロナウイルス感染症の発症や重症化率を防ぐ効果が高まるとの報告がされていますが、今回の研究結果から我が国でも同様の効果が裏付けられた形となりました。また、ウイルスを攻撃する抗体の量を示す「抗体価」の減少について、2回目接種後では5か月間で84%減少したのに対して、3回目後は64%の減少にとどまっていたことから、3回ワクチン接種した方がよりワクチン効果が持続する可能性が示唆されました。
第7波を乗り切るために留意すべきことは?
新型コロナウイルスの第7波による患者が急増していますが、この状況を乗り切るために留意すべきことを教えてください。
甲斐沼先生
新型コロナウイルスの変異株は、現在主流となっているオミクロン株のBA.2系統から、感染力がより強いといわれるBA.5系統などへの置き換わりが全国レベルでも進んでおり、本格的に「第7波」に突入したと考えられます。
感染拡大の特徴としては、ワクチン接種率の低い若年層の感染が多いことなどが挙げられます。ワクチン接種後の時間経過に伴う抗体量の低下に加えて、これからの時期においては、夏期休暇やお盆など、普段会わない人とマスクを外して会う機会が増えることなどが懸念されており、これまで以上に一層の感染防止対策が必要となります。
そうした中で、新型コロナウイルスワクチンの追加接種による、発症予防効果と重症化予防効果が期待されています。今後は、3回目までのワクチン接種や4回目の接種を希望する方々が速やかに接種できるように、各自治体において個別接種や集団接種を実施できるように環境整備を進めていくことが重要であると考えます。
まとめ
川崎医科大学の研究グループが、ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて調査をした結果、3回目の接種後の抗体価減少スピードは2回目後より緩やかであると発表したことが今回のニュースでわかりました。第7波によって感染者が急増する中で、こうした研究結果は今後の参考になりそうです。